日本の死者は半分に減らせた。戦犯はこのままでは厚労省だがここから巻き返せば大功労者

2日の厚労委員会で、「高齢者施設」が、重症者・死亡者発生の最大の発生源であることを明らかにした。

その後、後追いのような報道で、朝日日経が続いた。

朝日によれば「高齢者施設で2人以上が感染した集団感染は1176件、医療機関で992件。昨年10月末までの累計と比べて、高齢者施設で5倍、医療機関で3倍になった。一方、飲食店は1064件で2倍にとどまった。」とのこと。

そして、東京では、高齢者施設・医療施設で発生した患者の死者が今年1月からの死者全体の6割を占めているという驚くべき状況だ。

 

であるならば、高齢者施設での蔓延防止対策こそ急務。厚労省は、高齢者施設で定期検査こそ呼びかけてはいるが、文書を一本出しただけ。そして、今日の厚労委員会の質疑のために問い合わせたところ、各自治体での定期検査がどの程度行われているのか、厚労省はデータを持ちながら集計すらしていないことが明らかになった。

 

今日の厚労委員会の質疑で、このところ飲食店への厳しい言及が続く尾身さんに対し(以下発言については概要)、

「そのような状況であるのであれば、まずそこから手をつけるべき。高齢者施設への防疫対策(頻回検査)が最初にやるべきことでは?」

と質問したところ、尾身さんは

「ずっとそれも一緒に言っている。マスコミがそこは取り上げてくれない」

とのこと。いかにも派手なところ、自分が報じたいことしか報じないのが常のマスコミのやりそうなところ。

この点について、田村厚労大臣にも尋ねたが、

 

「ずっと通知出してるが、協力が得られない。検査して従業員が陽性になれば、濃厚接触者も自宅待機しなければならない」

 

とか出来ない言い訳ばかり。実態調査すらしていないのに、やる気がないだけでは?

厚労省や厚労大臣が、もう少し的確な分析をして有効な政策を取ってくれれば、高齢者・病院施設での施設が6割占めていたとの報道によれば、このコロナ禍被害も半分くらいに出来たのでは?

と思わざるを得ない実態が、今回及び前回の質疑であぶり出されてきていて、逆にとても残念です。厚労省、今からでもきちんとやってください。このままではあなた方が戦犯。しかし、ここからきちんと巻き返せば、大功労者です。

「本気度ゼロ」

昨日の厚労委員会。私がまず田村大臣に尋ねたのは現状認識。

田村大臣は、「国家的でなくて世界的危機」と答えられた。だが、本当にそう思っているのか?私は大臣、与野党、そしてマスコミも「本気度ゼロ」だと思っている。

なぜか。日本ではマスコミも野党も与党も第3波と大騒ぎの状況。しかし、他国と比べれば波がある感染状況の最も良好な場合以下。グラフにするとよくわかるが日本は下に張り付いている。

感染者数、重症者数も確かに増えてはいるが、欧米と比べると実数ベースで感染者数、重症者数、死亡者数のいずれもEUの10~20分の1、アメリカの300分の1程度。

ではなぜ、日本はこれだけ少ない数字で医療崩壊の懸念を日本医師会会長や東京都医師会会長が述べられ、現場の医師の方が危機感を持つのか。

それは、医療体制がシステムの問題としてドイツなどに比較して脆弱であるから。

大臣が言う通り、「国家的危機を超えた世界的危機」というのであれば、もっと本腰を入れた施策をとるべき。

このパンデミックがいつ収束するかわからないし、収束というよりは感染者数は世界的に増減を繰り返しながら拡大している。ワクチンも、感染予防効果ではなく発症予防効果。日本では元々発症率は欧米より格段に低いのだから、これで収まるというものでもなさそうだ。

したがって、ハーバード大などの予測どおり3年越しの対策が必要であるし、別の感染症に備えた10年越しの対策も練る必要がある。

ここで参考になるのはドイツ。ドイツでは、今から8年前の2012年12月21日に、日本の国立感染症研究所にあたるロベルト・コッホ研究所などが作成したまさに今回を予言するかのような中国発のパンデミックに関するリスクシナリオに基づき、着々と準備を進められていた。その結果、今年2月の時点で、人口10万人あたりICUが29.2床(ちなみに日本は5床)、3月初めの時点で2万5千床、さらに4月には4万床にまで増やすという見事な対応をし、イタリア・フランスの患者まで受け入れている。このような見事な対応がなされたのは、まさにナショナル・セキュリティの問題として正面からとらえてきたからだろう。

ところが、日本では大臣が口では国家的危機、世界的危機と言い、野党もGoToについては執拗に入れ替わり立ち替わり攻撃するが、この本質的問題には誰も手をつけるどころか口に出すことすらしない。

本質的問題とは、そう、脆弱な医療体制の強靱化である。

そのための第一の手段は、最前線に立つ急性期病院勤務医の増員。さらにそのためには医師数の増大は不可欠であり、そこには日本最大の既得権益団体、日本医師会が立ちはだかる。

医師一般というよりは、急性期病院の勤務医数が足りないのは、新型コロナパンデミック以前からの問題であり、それがこの「国家的危機」により顕在化しただけだというのに、そこにはマスコミも含めて誰も声を上げようとしないのだ。

厚労省は、医学部定員を一人も増やさない、という政策をH19まで長年続けてきた。急性期病院の医師不足などの声を受け、平成20年から3年だけ2~9%増やしたが、現在は、1%未満の小規模な定員増が続いているだけ。

そして驚くのは、この状況で、「医療従事者の需給に関する検討会」では、今年8月の分科会で、「医学部臨時定員増に係る方針について」という大項目で「将来的な医学部定員の減員に向け、医師養成数の方針について検討する。」としているのだ。11月も同じ。新型コロナによる医療崩壊、病院勤務医の過重負担が言われている今、ウイズコロナの時代と真逆の方針ではないか。

普通に考えればが今後を見据えた中長期的対策は、医師数の大幅増員。良い例として1999年から始まった司法試験改革があった。弁護士偏在、弁護士不足を補うために合格者数を700名程度から一気に3倍の2000人以上に増やし、15年経った今、現に弁護士の供給は十分となり、弁護士アクセスが大幅に改善した。当初は合格者大幅増により質の低下が懸念されたが、むしろ制限的過ぎる枠による参入制限に安堵していた不勉強な弁護士が駆逐される結果となった。

また、増やしても都会の弁護士が増えるだけ、といわれ当初はその傾向も見られたが、やがて食べるために競争相手のいない地方都市や過疎地に自ら若い弁護士が赴くようになり、偏在も解消した。先ほどの、医療従事者の需給に関する検討会の資料をみると、医師需給のみを重視し、医学部定員の減員が議論されているだけ。中期的課題として、ウイズコロナの時代に対応するためには、不足しているものを補うしかないし、医師数が増えたからと言って医療費の予算が大幅に増えるというものではないはずだ。

第二の手段は、新型コロナ受け入れ病院の拡大。日本では外来減少にも関わらず、コロナ受け入れが可能でありそうな病院でも、半数以上~1/4が受け入れていない、との分析が日経にのった(「コロナ対策データ基盤に」)。

一方、ドイツやスウェーデンでは公立病院の割合が高いので、コロナシフトが即座に行われている。ドイツでは対応するICUがわずか一ヶ月で1万床も増えたし、スウェーデンでは受け入れ病院と指定されると耳鼻科だろうがなんだろうが従来の診察を一時中断し、患者を受け入れ、その病院の患者は他病院に移送された。

日本でも実は国にやる気さえあればそれができる。全国に140箇所ある国立病院、国立大学病院45箇所など国が開設した病院だけで320箇所ほどある。これらを感染症対応の拠点病院化とし、病床数及び人員を増やすと共に、ドイツ、スウェーデンのような病院内での科の枠組みを超えた対応と、病院間での移送をフレキシブルに行えば良いのだ。

また、各自治体が運営する公立病院でも拠点病院を設け、自治体の枠組みを超えた助け合いはもっと簡単。ただ実行すれば良いだけだからだ。県によって重症用病棟などの繁忙具合が明らかに違うのに、各県ごとで大騒ぎとなっている。EUなどみると、ドイツがフランスやスペインの重症者を受け入れるなど、州どころか国を超えての助け合いが行われている。大阪が、北海道が、東京が、と騒ぐのではなく、47都道府県が垣根を越えて移送し合い、融通したらどうか。

最初に言った「本気度ゼロ」とは、こういった根本的な問題に手をつけることなく、与野党共に目前のテーマ(GoTo、緊急事態宣言、医療崩壊への懸念)に固執し、ただ営業時間制限や国民への自粛呼びかけをするだけだからだ。

それで国が持つならば良いが、おそらくは持たない。なぜなら3つの懸念があるから。

①欧米並みの感染率、重症化率となった場合、即座に医療崩壊する。

②日本のようなむしろ良好にコントロールされている国がそれでも医療崩壊の危機ということで経済を抑制しなければならない、というのであれば、今や日本の主要産業であるサービス業を中心に倒産、廃業、自殺者増大の副作用が大きすぎる。

③世界的にみれば新規陽性者数は増え続けており、収束は見通せないことも忘れてはならないし、ワクチンに効果があるといっても元々低い日本の感染率、重症化率からすれば、日本の現状を変えるか、ゲームチェンジャーとなるかは不明。

くだらない政争的議論は止めて、政治は真正面からこの問題に取り組むべきだ。

【国会報告】麻生大臣、黒田総裁がMMT導入を明確に否定

昨日の財務金融委員会で、私は最近の懸念の幾つかを麻生大臣に率直にぶつけてみた。そうしたところ、麻生財務大臣が日本におけるMMT導入を、強く明確に否定された。午前中、他の委員の方の質問に答えた日銀黒田総裁が明確にこれを否定した(ロイター参照)のと合わせ、政府における財政策のトップと中央銀行のトップの両者がMMT否定について明確なコメントを発したたことになる。

この意義は大きいのでご紹介する。なお、この機会にステーブルコイン(リブラ)、そして中央銀行バブルについても質問したので、補足として記載しておく。興味のある方は続けてご覧いただきたい。

 

【質問】

私、最近すごく心配しているのは、MMTと言われる理論、これに注目されることが、与野党の政治家を問わず、あるいは市民の方にも膨らんできている。ただし、日本においては、御承知のとおり、ここ七、八年、歳入面で六割から三割、国債に依存している状況にある。一方で、社会保障費は年々膨らむしかないような状況になっております。

こういった国が仮にMMT的な声が高まって国債依存度を高めれば、急にやめることは不可能なわけですから、大変な事態が起きる。ですから、私は、日本においては、MMT的な、余り国債に頼るような政策、それでもって景気を回復させていくという政策はとりにくいんだと思っておるんですけれども、これについて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

 

【麻生国務大臣】

MMTの言っていることは、自国の通貨で全て賄っている国、例えば、日本とアメリカとデンマークとスイスぐらいかな、今四カ国ぐらいだったと思いますけれども、自国通貨だけで通貨をやっておりますので、これはデフォルト関係ないんだから延々と出せるんだと、極端なことを言えばそういう話をしておられる。

アメリカで、一部の国会議員が強硬に主張されている。政府債務残高はどれだけあっても問題ないんだという話ですが、これを実行した国は一つもありませんので、その意味では、私どもとして、この実験を日本でやって、日本の金融マーケットを修羅場にするつもりは全くありません

それから、財政がとめどなくなるという話ですけれども、きちんとマーケットというものが世の中には存在しますので、そのマーケットの反応というものが極めて大きな要素であって、その中において、この出しておる国債は必ず返済されるものだという信用があって初めてマーケットが成り立ちますので、そういった意味では、市場の信認を確保するということで、我々としては、二〇二五年(PB均衡目標)とかいろいろな形でそういった対応を続けていきますということを申し上げさせていただいておりますので、今の状況というものは、私どもは、MMTというような、余りよく、私どもから見ると極めて問題点の多い、そういった理論によって我々は財政運営をするつもりはございません

 

 

 

(補足)

私のそのほかの質問要旨は以下のとおり。

 

1 リブラ

ご存知のとおり、リブラとはFacebookなどの巨大企業が連合して発行を企画している暗合資産。通貨バスケット(ドル、ユーロ、ポンド、円、シンガポールドル)とのペッグが予定されているのでステーブル・コイン(法定通貨を裏付けとしたデジタル通貨)の一種とされている。

この構想に対して、G7、G20では強い警戒感が示され、合意によるコメントまで発表されている。コメントでは、表向きは個人情報やマネーロンダリングへの懸念が表明されているが、各国の 財政・金融当局の本音はどうだろうか。

私には、通貨当局の懸念は、最近の行き過ぎとも思える通貨増発政策により世界中で通貨への信頼が失われつつあることに 対応してリブラが登場し、だからこそあそこまで各国が強調してこれを阻止しようとしているように見える。

今まではドルが「世界通貨」の覇権を握り,発展途上国などで自国通貨への信頼が揺らいだ場合,ドルがまるでその国の通貨のような役割を担い,ドルでなければ受け取ってもらえない,品物と交換してもらえないという事態も生じてきた。ペッグの中に入っていない国々では,こういった事態がより容易に生じることとなる。自国通貨よりもリブラが嗜好される,すなわち通貨発行権益が失われる恐れがあるのだ。

だが,リブラによって通貨発行権益が失われる恐れがあるのは通貨バスケットに入っている通貨を発行している国々にも一定程度共通する。バスケット内の通貨を発行する国家においても、為替レートの変動により自国通貨とリブラの交換比率に影響が出るため、通貨に対する信用(安定性)に対する不安があれば、自国通貨よりもリブラが流通の主役となることも考えられる。貨幣の主役がリブラなどの民間貨幣に移る可能性があるのだ。そして,それは現在は世界通貨となっている米ドルについても同じだ。だからこそ,ビットコインなどには鷹揚であった米議会やFRBが,公聴会を開いてザッカーバーグなどを激しく追及し,なんとかこれを阻止しようとしているのであろう。

そして,そのような懸念をアメリカを始めとした各国財政・金融当局が抱かざるを得ないのも,自ら巻いたタネではないのか。アメリカ,ECB,日本などがこぞって行っている中央銀行の今の行き過ぎた通貨増発政策と,これによって支えられている各国政府の拡張的財政政策について、各国金融当局自身が不安を抱いていることが背景にあるのではないかと考えている。

 

麻生大臣からの答弁は概略以下のとおり(以下私が要約している部分あり)。

「たらればの話でありますけれども、このグローバルステーブルコインとか、セントラルガバメントの出しますデジタルコインとか、そういったものについて、今、各国の金融政策に対してどのような影響を与えるであろうかという仮定の質問なんですけれども、これは懸念があるのは事実だと思うんですね。それに加えて、それが出されたときにマネロン対策どうするのとか、また、金融市場のスタビリティーは、安定性はどうなるのとか、使った使用者、利用者の保護とか使われたデータの保護とかいった政策上とか規制上のいろいろリスクを生じさせるんじゃないのって、これはいずれも全部懸念を申し上げているんですけれども。こういった問題意識に立って、ことしの十月の、いわゆるワシントンDCにおいてのG20の会合においては、この種の、グローバルコインとか類似の商品というものの取組が生じさせるであろうリスクについては、このプロジェクトのサービスというものが仮に開始されるとするなら、その前までにきちんと吟味され、適切にそれを対応する方法というものをきちんとつくっておく必要があるということで、これはG20、中国、アメリカ、皆含めてこれを合意ということで、この意識は皆合意していますので、自分たちでそれをやった場

合、自分たちにも影響が返ってきますから、ということで合意しておりますので。」

 

(答弁を受けての私の意見)

広い意味での通貨発行権益、つまり、国債などを発行して、例えば日銀なりFRBがこれを引き受けていくことができる、それが最後の支えというか担保になっているかと思うんですけれども、そこが侵されていく可能性がある。

なので、やはり、グローバルコイン、ステーブルコイン、こういったものに対しては警戒が必要であるとともに、そういったものが国の発行する通貨よりも信頼されるような事態というのが生じるのを避けるというのは非常に重要なことだと思われる。

 

2 中央銀行バブル

今、ニューヨークの株式市場、どんどん史上最高値を地道に更新し続けている状況にある。それから、不動産市場も同じような状況だ。こういった、資産インフレともいうべき現物の上昇があり、金も値上がりを続けている。この原因は、通貨の異常な発行(増発)が続き、同時に異常な低金利が続いていることに関して、投資家が嫌気を差してほかに行くところがないから現物に流れ込んでいるんだ、こういう見方がある。

つまり、これは見方を変えれば中央銀行バブルであるし、各国の財政赤字を基調とした財政政策というのは、こういった中央銀行バブルに支えられている反面がある。

こういった懸念に関して、麻生大臣にお尋ねした。

 

麻生大臣からの答弁(要約あり)は概略以下のとおり。

「世界中で超低金利というような形の緩和的な金融環境によって、グローバルな世界においての現物資産というものが、バブルが生じているのではないかということだと思いますが資産価格というのは、企業や経済のファンダメンタルズというものの見通しで投資家がさまざまな形でつくっていきます。

また、アメリカとか欧州の場合は、経済状況や金融スタンスはそれぞれ、スタンスがさまざまでありますので、資産価格全般については一概に申し上げることは困難です。

その上で、日本について申し上げさせていただければ、少なくともこの七年間で、大胆な金融政策を含めて私どものやった結果、企業収益が向上したし、雇用も所得環境も改善もしたということによって、経済のファンダメンタルズというものの回復の中で、株価や土地というものも上昇傾向にあった。少なくとも、八千円ぐらいだったものが二万三千円まで上がってきているとか、いろんな形で、はっきりした形で数字でも出てきておりますので、そういった状況がこの七年間続いてきた。

正直、税収も、おかげでバブル前までほぼ戻ってくるところまで来て、四十五兆ぐらいまで落ちたものが六十兆近くまで上がってきておりますので、結構なことだとは思いますけれども、しかし、まだ三万八千九百円には行っていないじゃないかと言われればまだ行っておらぬわけですから、そういった意味では、緩和的な金融環境というのが続いていく中ではありますけれども、資産の価格というものの動向を含めまして、金融面での脆弱性というものが、蓄積については、これは、金利を見ましても何を見ましても、国内外ともに、引き続きよく見ておかないかぬという大事なところなんだと思っておりますので、私どもは、この種のところは日本以外の国の動向を含めましてきちんと見ておかないと、最近はすぐ影響が出ますので、そこらのところもよく注視しつつ、対応をしてまいらねばならぬと思っております。」

 

(答弁を受けての私の意見)

バブルは終わってみなければわからないというような格言めいたものもございますが、バブルが急にはじけると大変な迷惑をやはり国民もこうむることになりますので、ぜひ、その辺、注視をお願いしたい。

【国会報告】年金2000万円問題とはそもそも何だったのか?議論されるべきはどこか。

 今日の衆議院財務金融委員会で「年金2000万円問題」の集中審議が行われた。審議を通して、この問題についてだいぶ整理がついてきたと感じた。

 元々、この問題についてはマスコミと与野党のミスリードで火がついていることはこれまでも連続して述べてきた。

 報告書に書かれているのは、

「年金給付額」-「現に生活に必要な金銭の額」=△5万円

という事実ではない。

「年金給付額」−「実際に使っている額」=△5万円

という事実だ。似たようなものと感じられるかもしれないが両者はだいぶ違う。

 高齢者無職世帯であれば、余裕のある暮らしや子や孫への援助をしようと思えば、貯金を取り崩すことになる。年金で足りているかいないかは別の話。 そして、△5万円というのは平均額なので、例えば上場会社の大株主のように、無職ではあるが巨額の収入や資産を有する富裕層が多額の援助を子や孫にすれば平均額は上昇する。

 厚労省の家計調査における高齢夫婦無職世帯の家計状況を転記したものに過ぎない今回の報告書の記載をもって「年金が崩壊している」とか、「国民に謝まれ」だと批判するのは煽りの類。報告書を認めようとしない与党の姿もピントがずれているとし言いようがない。

 このことを別の角度で捉えて質問されたのが串田誠一委員(維新)。そもそも、今回の報告書は年金制度の給付水準や維持可能性についてのものではない。「金融審議会・市場ワーキンググループ」の議論の結果だ。

 金融審議会・市場ワーキンググループへの諮問事項は、「市場・取引所を巡る諸問題に関する検討」。具体的には「情報技術の進展その他の市場・取引所を取り巻く環境の変化 を踏まえ、経済の持続的な成長及ひ家計の安定的な資産形成を 支えるべく、日本の市場・取引所を巡る諸問題について、幅広く検討を行うこと。」

 年金が足りているかいないかではなく、「家計の資産形成を支えるべく、日本の市場・取引所を巡る諸問題」について検討するグループだ。そのメンバーも課題に則し、ファンドや投信の関係者が名を連ねている。そもそもが、投資を促進するためのWGなのだ。その報告書もその方向での議論に誘導されるのはある意味当り前。

 そして、今回の報告書も、「もっと投資をしましょう」という方向への議論がなされており、厚労省の家計調査もそのための布石というか前提として紹介されているものに過ぎない。

 串田議員は、以上を確認された上で、さらに紹介された高齢夫婦無職世帯の家計収支に着目した。

 支出項目の内訳をみれば、教養娯楽費25,077円、その他の消費支出(交際費、小遣い、仕送り、理美容等)54,028円、計79,105円となり、節約しようと思えば節約できる項目での支出が不足分とされる5万円を上回るのだ(ちなみに今日の報道ステーションは支出の解説の中でこの部分の説明を意図的に省いていた)。

 以上によれば、今回の報告書を、現在の年金が破綻している、あるいは必要最低限度の生活費を賄う水準を下回ってしまっていることを発表したものと捉えることには無理がある。そして、それを前提とした非難はやはり的外れなのだ。

 また、今回の2000万円問題には、もう一つの問題があることが松原仁委員(社会保障を立て直す国民会議)の質問で明かされた。

 松原委員は、委員会の冒頭で陳謝した金融庁の三井企画市場局長に「陳謝する必要はない」と訴えられたのだ。私も強く同感である。金融庁は、WGの意見を基に、その立場から纏めるべき報告を纏めただけ。何も謝罪するようなことはしていない。

 問題とされるべきは、WGの活動の成果を政治的思惑から受け取り拒否した麻生財務大臣なのである。その拒否の理由こそ問題であった。松原委員の質問で明らかとなったのだが、受け取り拒否は史上初とのこと。

 しかも「政府の姿勢と異なるから」というのがその理由であったのだから、これは異例中の異例。これが前例となれば、今後は審議会は政府に「忖度せざるを得ない」ということを松原委員は問題視された。正論中の正論である。

 本来、議論されるべきは今回の報告書ではない。年金の財政検証である。将来に渡って本当に所得代替率5割を維持できるのか?マクロスライド方式が取られている以上、将来も現在の低成長が続き賃金や物価が上昇しない経済状況が続いた場合、そのままマクロスライドで年金を低減すれば、将来的に所得代替率は4割を割り込む(平成26年財政検証結果Hケース)。

 5割を割り込むことになった時点において、それでもマクロスライドを実行するか否かはその時に検討することになっているが、仮に5割を維持しようとすれば多額の国費、つまり財源が必要となる。これから人口オーナスが続き、日本企業が次々と負け組となっていくことを考えれば、この将来的見通しこそ与野党が一致して取り組むべき大問題なのだ。

 繰り返し述べる。煽りや感情的議論ではなく、国民の将来の生活安定のため、与野党は建設的な意見交換をするべきであるし、マスコミも正確な報道をしていくべきなのだ。

【国会報告】金融危機の過去から学べ。令和にバブル崩壊を起こしてはならない。

皆さんは金融機関の破たんが相次いだ20年前の「金融危機」をご記憶だろうか?
タイ、インドネシア、韓国などアジア諸国を自国通貨安が襲ったアジア通貨危機。ロシアにも及んでルーブル暴落と国債のデフォルトを呼び、それがさらに飛び火してロシア国債に多大な投資をしていたLCTMというアメリカのヘッジファンド(ノーベル経済学賞らが運用していたことで有名だった)の破たんも生じた。
一方、日本では、バブル崩壊後の地価下落や無謀な投資案件などに伴い、多額の不良債権を抱えた銀行や証券会社が次々と破たんして行った。この時破たんした金融機関のたちが悪かったのは、子会社などに「飛ばし」と呼ばれる手法で不良債権を隠していたため、それが明るみに出たときには、巨額の負債となっていて、直ちに破たんするしかない状況になっていたのだった。債権者にとっても、社員にとっても、株主にとっても世間にとってもまさに不意打ちであった。
現在、金融機能早期健全化法に余剰資金が生じ、それを国の一般会計に組み入れるための法改正が図られており、それに関連して財務金融委員会で質疑が行われ、私も質問の場に立った。
この当時、金融システムの安定のために次々と法案が成立し、法改正がなされ、それによって多くの国民負担が生じた。まずは質疑を参考にこの時起きたことを簡単にご紹介する。
1994年、高度経済成長、バブルを経て、盤石と思われていた日本の金融機関が破綻し始めた。この走りとなったのが、東京協和信用組合、安全信用組合の二信組事件。95年には、兵庫銀行が戦後初の銀行破綻、96年になると、バブル崩壊による地価下落で不良債権の巣窟と化した住専(住宅専門貸付会社)、この処理のための住専処理法が成立している。このときに投入された国費が6850億円、これが非常に多いと国会でも問題になり世論が盛り上がったが、その後の金融機関破綻処理で使われた国費からするとこの6850億円がかわいく見えてくる。97年に入ると、三洋証券が破たんし、地銀の雄と言われた北海道拓殖銀行が、洞爺湖リゾート関連の不良債権と損失隠しのための飛ばしで破綻し、98年には本丸の長銀、日債銀破たんが起きる(リーマンショックの10年ほど前に、日本でも巨大金融機関の破たんが起き、巨大な国民的損失が起きたのだ)。
この一連の破たんの過程で大変問題のある法改正と国費投入が行われていた。最初に行われたのは預金保険法の改正。2信組事件のときは、後の整理回収機構(RCC)となる受け皿金融機関が作られ400億円の金銭贈与が預金保険機構より行われただけであったが、96年の預金法改正では、預金の全額保護を行うことができるとされた。それまでは、1000万円が預金保護(ペイオフ)の限度額であったが、このとき、ペイオフの限度が特例措置として外されたのであった。これによって預金者は救われたのだが、反面、税の投入により、非常に多額の国民負担が生じた。財金での政府答弁によれば、その額は10兆4326億円という巨額なもの。問題は、このルール外の負担が本当に必要であったのか?ということだ。平成14年の一世帯あたりの預金平均値は、1680万円。ただし、最も多い中央値(中位数)は1022万円であった。つまり、一般市民救済という観点からすれば予定されていた1000万円でもほぼ足りていたのだ。あえて特例措置を行ったことによって、救われたのは富裕層であったという側面は否定できないものだろう。
より問題であるのは、長銀と日債銀の国有化であった。この両銀行の処理を主眼として、金融再生法が成立し、破綻銀行の特別公的管理、一時国有化が行われ、両銀行の預金者だけでなく両銀行に対する債権者も全額救済された。このときに投入された国費はなんと約17兆2000億円。そのうち約8.3兆円の国民負担が確定している。しかもこれだけの国費投入して一時国有化して救済した両銀行を、国は民間投資グループに売却しているのだが、いったい幾らで売却したのか?
その答えは各々10億円。
それでは10億円で叩き売った両銀行が一体今幾らの価値になっていると思われるだろうか? 
その答えは新生銀行(旧長銀)8306億円、あおぞら銀行(旧日債銀)4290億円。
もちろん、買収後の民間経営が努力したというのもあろうが、巨額の国費が投入されたことを思えば、不公平だと感じざるをえない。
そして、総額で19兆円もの国民負担が民間金融機関の破綻処理のため生じたのであった。
 
さて、話を現在に。このような金融危機も元はといえばバブル崩壊が原因であった。今もバブルが心配されている。何のバブルかといえば、日銀、FRB(アメリカ)、ECB(EU)などの中央銀行主導の大規模な金融緩和政策によって生じている金融バブル、中央銀行バブルだ。中国も実はかなりの量的緩和政策を行っているとも報じられている。この副作用で世界中にマネーがあふれて、金融バブルが起きているのではないかと危惧されるのだ。
麻生財務大臣も、野田元総理の質問にアメリカでは一部不動産の地価上昇に心配がある旨答弁されていた。私の質問に対しても、(G20各国などでも)気をつけていがなければならないということは「みんな一致しております」と答えられていた。そして、日銀の雨宮副総裁は、別の委員の質問に、平成バブルの原因として当時の日銀の金融緩和政策を挙げられていた。
ご承知の通り日銀の異次元緩和は既に5年経過している。FRBはもっと長い。この中央銀行バブルというか金融バブルが心配されるのは、株や不動産だけではない。マイナス金利の国債が取引されているのだから、人為的な国債バブルも生じているのだろう。 
バブルというのは崩壊してみなければわからぬところがあるというのは、麻生大臣の答弁であったが、金融バブルの崩壊で株式市場が崩れれば、日銀、GPIFなに多大な損失をもたらす。また、それに伴って金融危機が再び起きれば、またも巨額の国民負担と、不公平な解決が伴うのだろう。
平成バブルの崩壊が昭和の歪みの蓄積による必然だったように、中央銀行バブルの崩壊は、平成の歪みの蓄積による「令和バブルの崩壊」として語り継がれるのではないか。そんな危惧を抱かざるを得ない。

【国会報告】本会議:民事執行法一部改正

 今日は午後から本会議。民事執行法の一部改正案の質疑が行われました。この改正案は、①財産開示命令(裁判で負けたのにお金を払わずいる人の財産を明らかにするよう、債務者の出頭を求める制度)②不動産競売に暴力団員が参加できなくするための手続整備③ハーグ条約に関連し、子の引き渡しに直接的な強制執行を認めてそのやり方について手続を新設するもの、の3つを定めたものです。
 ①②は、実務に生じていた問題点を改善するもので賛成ですが、③には抵抗があります。ハーグ条約に沿った子の引き渡しがなされていないことについて国際的批判があったことは事実ですが、法整備が進むことにより、様々な事情により海外から国内に子どもと共に逃げ帰って平穏に暮らしている親子を無理やり引き離すという事例に繋がることも当然予想し得るところです。国際的批判がいつも正しいとは限りませんし、今まで法務省が意識的にこれをサボタージュしていたのは、そういった点を考慮しての日本的なやり方での抵抗だったのでしょう。
 今日は野党第一党、第二党が代表質問されたのですが、私が法律の実務家である故に余計辛口な評価になってしまうのでしょうが、①②の実効性について十分な理解がなされているのか疑問の残る質問でした。そして、③について、その背景に潜む上記の問題点について意識をあまりされているようには思われませんでした。
 やはり、野党はシンクタンク的な機関を自前で持つ必要がありますし、それでも不足する分について、日弁連などの各委員会委員にリサーチする必要があるのではないでしょうか。野党の政権担当能力は、こういった細かいところに現れてくるのだと思います。率直にいって、現状では不足があります。
 もう一つ、気になったのは法案外のことに関する過度の言及。私が普段リサーチしているところによれば、普通の国民はこういうやりとりをあまり好ましく思っていません。
 野党は常に国会における質の向上を意識し、中身で勝負、という姿勢で堂々と論戦を行っていただきたいと強く願っています。
なお、野党が政権を担当するためという視点からの批判ですので誤解なきよう。批判ないところに改善も向上もないのですから。

【国会報告】防衛調達特措法一部改正法案

    3月7日の本会議では、防衛調達特措法一部改正法案の審議が行われました。
 国が何かを買ったときには単年度、つまりその年のうちに支払うのが原則です。その例外が国庫債務負担行為と呼ばれる分割払いです。現行憲法が制定された頃に作られた財政法では、3年払いまでを原則としていました(その後5年に改正)。ローンが多くなれば後の財政の手足を縛ることになるので当然の考え方でしょう。これを難しい言い方をすれば財政が硬直化する、と言います。
 ところが、2015年に安保法制の審議がなされる前にこれを10年払いにまで拡張する特例法(平成31年3月までの時限立法)が定められてしまいましたが、今回はこの特例法を5年間(平成36年3月まで)さらに延長するというものです。
 現在既にこの後年度負担は5兆3000億円にも登っていますが、この後、FMSと呼ばるアメリカの対外有償援助( Foreign Military Sales)でご承知のとおり、あまり性能的に評判の良くないF35であるとか、イージスアショアなどを爆買いすることが決まってしまっているため、防衛予算はますます硬直化していくのです。
 こういった問題点について、国民民主党の下条議員、社会保障を立て直す国民会議の重徳議員、共産党の宮本議員がコンパクトに要領を得た質問をされていました。こういう問題のある法案審議では特に、あまり余所事に時間を割くことなく、問題点をズバッと指摘するのが望ましいと改めて感じた次第です。

【国会報告】国会における論戦にこそ注目を!そこに政権担当能力が示されている

昨日の財務金融委員会では,麻生財務大臣の所信演説についての質疑が行われました。最初に指摘しなければならないのは,国の財政が危機的状況にある中,その財政に関する最も重要な政府の所感が表されているのが財務大臣の所信演説です。これに対する質疑ですから,当然各党委員(党によっては複数議員が質問されます)の質疑もこれを中心にした真剣な議論が行われるべきところです。期待どおりの正面からの論戦があった一方で,本題から遠く外れた質問,揚げ足取りのみを狙ったかのような質問など,そのような気概が感じられない質問が見受けられたことは極めて残念でした。政府与党の政治にこれだけ問題がある中,政権交代の機運が盛り上がらないことの一因というか主因は,野党の政権担当能力を国民が疑問視しているからでしょう。その意味で,国会における質疑では,自党の政権担当能力を示すような正面からの論戦を挑む姿こそ期待されるところです。そういった観点から,ここではいつものように,みるべき質問が行われた部分について紹介させていただきます。

国民民主党の緑川議員は,まずプライマリーバランス(PB)黒字化達成の目標が先送りされたことを指摘し,その上で国債と借入金の合計の国の借金が1100兆5千億円に達している,これは次の世代への先送りであり,第2次安倍政権発足以来175兆円も増えていることについて歳出改革の姿勢について問いただされました。麻生大臣は,「国の借金ではなく政府の借金」「国民は国債を買っておられるので債権者であって債務者じゃありません」とカウンターを浴びせました。しかし,結局政府の借金は将来の国民の税金で返すのですから実質的には国民の負担,つまり国の借金です。次に,2025年度PB黒字化計画について,新経済再生計画では実質で1.5から2%,名目で3%の経済成長が前提とされており,民間予測の2倍近くで,近年の実績にもないものであってハードルが高いと質問されました。これは,私が最近のブログ(Bプランなき財政再建計画https://ameblo.jp/masayuki-aoyama/entry-12439569005.html)で指摘したことと同旨であり,あまり注目されていないところを的確に指摘された良質な質問でした。これに対する麻生大臣の答弁は,「現政権の基本政策は,経済再生なくして財政再建はできない」とだけ。つまりは景気頼み,ただそれだけなのです。

やはり国民民主党の前原議員は,日銀の量的緩和政策の変化について,わかりやすいグラフを配布された上で,黒田総裁を参考人として呼ばれて質問されました。まず,アメリカのFRBの方針転換(利上げ基調から利下げへ)に関する大臣の見解を尋ね,その上でアメリカが利下げして日本との金利差が縮まれば円高になる可能性がある,その場合追加緩和できるのか,ETFも買い過ぎだし,金利低下で金融機関がかなり毀損し始めている,そういった中で追加緩和できるのか,という本質的なところを黒田総裁に質問しました。黒田総裁は,為替相場にリンクした金融政策は行っていない,その時々の状況に応じて最適な方法を検討していく,という具体性に乏しい答弁でした。アメリカ議会でのFRB議長証言であればとても持たない内容でしょう。続けて,日銀の積み上がったETF(株)資産は,株価の変動で大きな含み損となること(日銀のバランスシート上日経平均が1万7700円で赤字となり,1万1700円で日銀を債務超過に転落),金利低下でどんどん金融機関の経営を悪くする,ということを指摘した上で,この先もETF買い続け,6兆円も積み増すのか,と質されましたが,黒田総裁は影響を十分考慮した上でETF買いを続ける,と答えたのみでした。
こういう質問こそ,十分に時間をかけ,論戦となることが期待されるのですが,前川議員の質問時間は30分で時間切れ。残念です。

社会保障を立てなおす国民会議の野田議員(元総理)は,所信演説に関する質疑ということで,まさに前回配られた麻生大臣の所信表明のペーパーに線を入れられての質問でした。その姿勢はさすがです。まず,日本経済の景気回復について,「企業部門の改善が家計部門に広がり,好循環が進展する」と書かれているが,報道機関各社の世論調査結果で示された国民の実感とは乖離があり,認識不足ではないか,との趣旨の質問をされました。締めの質問では,「新規国債発行額を安倍内閣発足以来7年連続で縮減」とあるが,自分が財務大臣,総理大臣だった2011年2012年もそうだし,平成30年度は,補正予算で新規国債発行をしているので新規国債発行額は増えている,という事実に基づく指摘をされました。麻生大臣もこれらは率直に認められ,実は補正も含めれば新規国債発行額が増えた年度は計2回あったと言及されました。

立憲民主党の福田議員は,平成元年度から平成29年度の消費税累計額が349兆円,これに対して法人3税の減収額累計が280兆円であり,8割が法人3税の減収で消えていることを質問されました。この問題は私も以前から指摘しているところです。この質問に対する麻生大臣の回答は「企業の活力と国際競争力の維持する,強化するというため」というもので,あまり説得力はありませんでした。

各党の質疑を評価すれば,党として真面目に日本の経済財政運営に関する議論に取り組もうとされているところとそうでないところの差が一層開いてきているようです。しかし,国民にこの姿は明らかとはなっていません。これは,マスコミの報道が,刺激的・刹那的な問題に偏り地道な政治の姿を報じようとしない,というところにも問題があるでしょう。日本の政治の質を上げるためにも,これからも出来る限りのリポートを続けていきます。

 

【国会報告】地方税法改正、特別法人事業税、森林環境税に関する質疑

 今日の衆議院本会議は、地方税法の改正(自動車税関連・ふるさと納税関連)、地方税だった法人事業税の一部を国税にする特別法人事業税、森林環境税についての質疑が行なわれました。最近、政治の世界では場外乱闘というかこどもの口喧嘩みたいなやり取りが目立っていますが、本会議ではこれぞ国権の最高機関と唸らせるような議論をして欲しいところです。
 今日はどうだったかというと、法案が比較的地味であったが故に逆に法案質疑に対する姿勢や調査力が滲みでた感がありました。
 法案について正面から質問されたのは、社会保障を立て直す国民会議(野田さんのグループ)の重徳議員。地方への配分割合を決めるのに私有林人工森面積50%、林業従事者20%、人口30%なので、私有林人工森1万2千haの岡崎市より人口90万人の世田谷区の方が配分が多くなるとのこと。具体的にわかりやすく不備を突かれました。
 法案とは離れましたが共産党の本村さんは児童虐待事件を踏まえ非難ではなく解決策を具体的に提言され(その中に弁護士活用も)、好感が持てましたし、安倍総理もそれに沿った施策を進めると答弁していました。また、児相職員削減圧力に関連して地方自治体の職員削減率を交付税算定の評価基準とするのを止めるべき、とのもっともな質問も。総理答弁によれば平成32年度以降見直すとのこと。
 国民民主・無所属クラブの日吉議員は、森林と深く関わる林業について人工林ばかりになったことが林業を逆に阻害したとの視点での質問。
 立憲民主の高井議員は、被災時、当該市町村は被災者なので近隣自治体が助けに入るイタリアの例を引き、防災省の創設を訴えました。ちなみにアメリカにもFEMAという政府機関があり、災害ものの映画などにも出てきます。
 言わずもがなな質問をされて残念であったのが維新の足立議員でした。国家統計局など筋の良い指摘もあっただけに勿体無いというしかありません。

【国会報告】所得税法の一部を改正する法律案

 本日は、衆議院本会議で「所得税法等の一部を改正する法律案」の質疑が行われました。住宅ローン控除や自動車重量税、個人事業の承継税制についての改正案です。各党の質問のうち、優れていたものを紹介させていただきます(批判が主体の国会討議から脱却することが急務と最近強く思っているため、まずは隗より始めよということで)。
 国民民主党の緑川議員は要点をついた質問で、安倍総理の力みを引き出しました。皆さんご承知のとおり、安倍首相は都合が悪いと思うと力む癖があります。どこで力んだかというと、「総雇用者所得がプラス」という成果を安倍首相が誇っている点。65歳以上の非正規労働者数が2013年度204万人が2018年度は358万人に急増しているので、総雇用所得の伸びは高齢者が無理に働きに出ざるを得ない社会になっていることを示しているのでは、という鋭い指摘のところでした。総雇用者数×賃金=総雇用所得という関係にあるので、賃金が伸びなくても人数さえ伸びれば総雇用所得は伸びるのです。
 維新の党の杉本議員もいつもながら深い造詣をお持ちの財政についてわかりやすく、かつ単刀直入な質問をされました。国家財政を家計に例えれば、600万円の年収の方が、400万円の借金で1000万円の生活。借金の残高は1億1000万円になったと。借金は身内からしているのだし、バランスシートではプラスの資産があるから実質借金は6000万円、大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせているのが今の日本の姿だと。ワニが口を大きく開けているような財政運営をいつまで続けているのかと。
共産党の宮本議員は、30年間に消費税収は372兆円増えたが法人3税は290兆円減ったと指摘。
 今回の質疑は、各党間で大きく質が分かれていたと思います。皆さんも是非ネットでやっている国会中継ご覧になって、各党の通信簿をつけてください。政党の本当の姿が見えてくるかもしれません。面白いですよ。