怒涛の丸投げ

持続化給付金の事務作業委託に関する問題。さきほど(29日午前11時34分)になって入札に関して経済産業省中小企業庁長官官房総務課より入札にあたって公表されていた資料が送られてきた。

 

その内容について,現時点で指摘すべきことを指摘しておく。

 

1. 内容がまさに1から10まで丸投げ。詳細は後記仕様書を参照されたい。2兆3176億円にも上る国家的事業のすべてを丸投げ,というのはいかがなものか。同様のケースとしては,やはり内閣の目玉事業であった「企業主導型保育事業」でも行われ,当時東京新聞が指摘したらしい(「ずさんな企業主導型保育~」)。こんな丸投げをしなければならないほど,日本の官公庁は足腰が弱くなっているのか。

 

2.丸投げしただけで注文がほとんどなされていない。民間であれば納期や提供される事務構築の内容など精査するのが当然だろうが,中身に関する注文らしい注文といえばコールセンターの規模(仕様書3.(3)1日最大5000件程度の相談を受けられる体制を構築すること)だけ。最も肝心な申請を受け付けてからから給付に至るまでの期間の目安,あるいは1日あたりの処理件数能力については何の注文もない。これでは,「3週間経っても振り込まれない」との声が巷に溢れるはずである。なお,梶山経産大臣は初日(5月1日)に受け付けた申請のうち,87%は既に給付した」(産経)とこの件の記者会見で胸を張ったらしいが,13%はほぼ1ヶ月経っても振り込まれていないのである。3日で給付されたドイツとはえらい差がある。

 

3.入札にあたっては,提案書を提出することになっており,落札者の決定方法としては評価手順書(総合評価点=技術点(200点)+価格点(100点))で評価されている。しかし,本件でもっとも肝要な前記2記載の申請受付から給付までの期間の目安(処理件数能力)がそもそも提案されたか,また重視されたかは不明である。

 

4.提案書に対するプレゼンテーションすら実施しないと予め定められている(入札公告1.(5))ので,発注者には,委託作業の「中身」に対する思い入れはほとんどなかったようである。事業規模2兆3176億円,委託予定額776億円の巨大事業の入札にあたって,である。いかに人のお金であるとはいえ,あまりに無関心過ぎないか?それとも受注予定者は誰か最初から決まっていて,内容を聞くまでもなかったのか?

 

5.そもそも入札に参加した業者は2者のみであったとのことで(関係者からのヒアリング),事業規模,報酬金額に見合った公正な入札状況であったかが不明である。

 

 以上のとおりで,以前の記事にも記載したが,本件委託金額が適正であったかどうかは不明である(現在調査中であるが,本件委託事務にかかるであろうコストから推定してた場合に過大であった可能性はに残る)。しかし,何より大事であるのは,入札にあたって業者に提示された仕様書に,過去に例のない緊急対策としてやはり過去に例のない規模で行う事業であることから要請される「Speed感」に対する強い発注者の「思い」が全く感じられない,ということである。

 

【開示された資料内容の抜粋】

仕様書
1.件名
令和2年度補正持続化給付金事務事業
2.目的
新型コロナウイルス感染症の拡大により、休業を余儀なくされるなど、中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業者、フリーランスの方々の業況に大きな影響が出ているところ。
こうした事業者は、我が国経済の基盤を支える存在であり、事業の継続は極めて重要。
このため、感染症拡大により、特に大きな影響を受けている事業者の事業継続を支援するため、事業全般に幅広く使える給付金を支給するもの。
3.事業内容
上記の目的に照らし、次に掲げる事業を実施する。
(1)新型コロナウイルスの影響を受けた中堅・中小法人、個人事業主への給付金の支給
① 給付対象
詳細は経済産業省から指示するが、中堅・中小法人、個人事業主等最大200万者程度が対象となることも予想されるため、十分な体制を構築すること。
② 給付額
中堅・中小法人が200万円、個人事業主(フリーランスを含む。)が100万円を上限とする。計算式等の詳細は経済産業省の指示に従うこと。
③ 事務局の設置
(1)①からの申請を受け付けるため、
ⅰ)電子受付
ⅱ)電子申請に支障がある申請者のための受付を確実に実施できる体制
を構築すること。なお、ⅱ)の体制は窓口など提案によることとする。
なお、従業員等(窓口等で申請者と接する場合は申請者に対するものも含む。)への新型コロナウイルス感染症対策を徹底し、万が一新型コロナウイルス感染症に罹患した者が生じた場合も事業継続可能な体制とすること。
また、本事業に従事する者との間で秘密保持などの遵守事項を定め取り交わすこと。また、不特定多数の者が氏名・住所・口座番号・振込金額などの情報に同時に触れることのできない対策を講じること。
④ 申請書類
以下の書類を念頭においているが、必要な書類や様式等は経済産業省と協議の上決定する。
 前年度の確定申告書
 売上台帳
 虚偽の申請でないことの宣誓書
 実在確認書類
 中堅・中小法人:原則として法人番号
 個人事業主(フリーランスを含む):本人確認書類(パスポート、
運転免許証等)
⑤ 二重取り等不正防止のための必要な措置
二重取り等不正な手段による支給を防止するため、最低限以下の措置を講
じることとするが、詳細は経済産業省と協議の上決定する。
 事後的に申請内容に虚偽が明らかとなった場合には返納を求めるこ
とを明示。また、その場合には返納を求めること。
 虚偽内容が特に重大又は悪質な場合には事業者名等を公表すること。
更に特に悪質なものについては刑事告発等を行う可能性があること
を示した上で申請させること。
 確定申告書により、代表者氏名、事業所所在地等を確認。その情報を
事務局においてデータベース化して名寄せを行い、二重取りを防止す
ること。その他、二重取りを防止するために必要な措置を講じること。
⑥ 給付金の支給
上記(1)①への給付金の給付(贈与)については、別途経済産業省が交
付する資金(2兆円程度)を原資に行うものとする。なお、受給者への給付
金の給付は、以下により行うものとする。
ⅰ)受給者は事務局に給付申請書等を提出。
ⅱ)事務局は給付申請の内容について適格性等の確認を実施。また、給付
金の受領に係る委任について委任状の提出を受け、受給者と合意をする
こと。
ⅲ)事務局は給付に必要な額を都度経済産業省に請求(受給者の代理で受
給する旨も併せて申請)。
ⅳ)経済産業省は事務局に対して給付金の支給のために必要な金額を支払。
なお、給付金の支払に要しなかった金額は経済産業省に返還すること。
ⅴ)事務局は受給者に給付金を速やかに給付(銀行口座のみ。)。
ⅵ)交付通知書の送付。
上記の他、受給者への給付金の給付に関する事務の詳細については契約結
後、経済産業省と協議の上決定することとする。
⑦ 反社会的勢力の排除
上記⑥ⅴ)以外に反社会的勢力などからの申請及び振込を防止するために
必要な措置を講じること。
(2)HP等による広報
上記(1)①を広く周知するため、以下を実施すること。
① HPの設置
制度の概要、FAQ、申請の動画解説などを掲載すること。詳細は提案による。
② 広報
新聞、Web等の手段より広報を行う。詳細は提案によることとするが、掲載先等については経済産業省と相談の上決定することとする。
(3)コールセンターの設置
上記(1)及び(2)に対応するため、電話による問合せ窓口を以下により設置すること。
 複数拠点(国内に2カ所程度)に設置
 開設期間:契約締結日~2020年12月28日まで
 窓口時間:8:30~17:00(5~6月については上記時間帯は常に開設すること。7月以降は土祝除く日~金。)
 1日に最大5,000件程度の相談を受けられる体制を構築すること。(契約締結後直ちに体制を整える必要はないが、問合せ件数に応じて適時体制を構築すること。)
 不正受給等の内部通報にも対応していることを明示すること。
4.事業を実施する上での補足事項・注意点
本仕様書に記述していない事項であっても、仕様書の目的を達成するために提案があれば行う。
上記3(1)~(3)を、別紙1「情報セキュリティに関する事項」を踏まえて実施すること。
5.事業期間
委託契約締結日から令和3年2月28日まで
6.成果物
3.(2)②に用いた資料 1式
7.納入場所
中小企業庁長官官房総務課
8.情報管理体制
(1)受託者は本事業で知り得た情報を適切に管理するため、次の履行体制を確保し、委託者に対し「情報セキュリティを確保するための体制を定めた書面(情報管理体制図)」及び「情報取扱者名簿」(氏名、住所、生年月日、所属部署、役職等が記載されたもの)別紙2を契約時に提出し、担当課室の同意を得ること。なお、情報取扱者名簿は、委託業務の遂行のため最低限必要な範囲で情報取扱者を掲載すること。
(2)確保すべき履行体制
 契約を履行する一環として契約相手方が収集、整理、作成等した一切の情報が、経済産業省が保護を要さないと確認するまでは、情報取扱者名簿に記載のある者以外に伝達又は漏えいされないことを保証する履行体制を有していること
 経済産業省が個別に承認した場合を除き、契約相手方に係る親会社、地域統括会社、ブランド・ライセンサー、フランチャイザー、コンサルタントその他の契約相手方に対して指導、監督、業務支援、助言、監査等を行う者を含む一切の契約相手方以外の者に対して伝達又は漏えいされないことを保証する履行体制を有していること
(3)本事業で知り得た一切の情報について、情報取扱者以外の者に開示又は漏えいしてはならないものとする。ただし、担当課室の承認を得た場合は、この限りではない。
(4)(1)の情報セキュリティを確保するための体制を定めた書面又は情報 取扱者名簿に変更がある場合は、予め担当課室へ届出を行い、同意を得なければならない。
9.業務従事者の経歴
業務従事者の経歴(氏名、所属、役職、職歴・業務経験がわかる資料)を提出すること。
※経歴提出のない業務従事者の人件費は計上不可。

嫌な感じ

自民党の田村政調会長代理が第2次補正予算案の10兆円の予備費の使途について「新たな現金給付を想定している」ことを明らかにしたという(時事通信)

首相というか与党のフリーハンドで国民に配れるお金。そうすれば野党に手柄を取られることもない。お金を貰えば人は勿論喜ぶ。

自民党本部が河合杏里氏の陣営に1億5千万円を渡して「地盤培養行為」とやらをやらせたのと同じ発想な気がする。昔、島嶼部の選挙区で実弾選が繰り広げられて選挙の度に選挙違反が出たが、その先祖返りというか、より大規模に合法的になったというか、とにかく無茶苦茶。

10万円給付に絡んだ「サービスデザイン推進協議会」への769億円発注もそうだったが、コロナウイルス・パンデミックに対し、国民のためという意識に専念して取り組むのではなく、それを利用して別の利益を得ようとする感があるのがなんとも言えず嫌な感じだ。

日本劣化

昨日書いた持続化給付金を巡るミステリアスな企業の関与。アベノマスクに続いて、国難ともいるこの時期に、困窮を極める国民への給付事業において、企業と政府・政権の癒着が疑われる不透明な構造が浮かび上がった。

 

私がこの問題に偶然にも辿り着いたのは、ドイツが、公的銀行の内部的努力により、おそらくはほとんどコストもかけずにわずか5日間で成し遂げた国民への給付が、日本ではいつまで経っても(39日間以上)満足に実現しないことからだった。このスピード感の欠如について、5月19日の財務金融委員会でまず質問し、昨日(27日)でも引き続き質問したが、麻生大臣は露骨なはぐらかしを行った。

 

SNSでこの問題について投稿したところ「パンドラの箱を開けたかもしれませんね」とのコメントを頂戴した。確かに、ということで「パンドラの箱を開けた者」の責任として、昨日、今日と経産省に質問を投げかけているが、経産省に何度督促してもなしの礫。

経産省に尋ねていることは、極めて単純な事実のみ。審査業務を担当しているのは誰か、その費用はどこから出ているのかと、入札にあたって入札希望者に交付あるいは開示した、入札の対象となる委託業務の内容などを交付してほしい、ということだけ。

 

この隠してもどうにもならないであろう質問に対する回答を、経産省が事実上拒否しているということは、やはり相当後ろめたいものが裏に隠されているからだろう。もちろん、今後も調査は進めていく。

 

この件に関する道義的な問題は、この非常時に困っている方がたくさんいるのに、それを利用して政権や官公庁のファミリー企業の様なところが莫大な利益を上げているだろうというところにある。

しかし、さらに奥深い問題は、ドイツで、委託するまでもなく公的金融機関が内部的な準備のみで5日間でできたものが、日本では民間機関にわざわざ巨額の費用を支払ったにも関わらず、ほぼ一ヶ月経っても円滑に業務が遂行されていないというところだ。

つまり、莫大な利益に見合う仕事の質さえも整えられない「日本劣化」が問題なのだ。

 

これは、未だにかなりの国民の手元に届くことすらないアベノマスクに共通するところ。

昔聞いた、独裁政権下の発展途上国並みの惨状に、日本はいつの間にか陥っているのだ。

第二次補正予算の2つの大問題。ギリギリの対処との認識はあるか?

今度の第二次補正予算案には二つの大きな問題がある。

一つは異常な額の予備費。

確かに緊急事態への対処は機動性が必要だが、現在日本の感染状況は明らかに収束している。営業自粛は解除されていく一方で今度の第二次補正には事業者へのかなり手厚い家賃補助が盛り込まれ、より厳しい外出・営業制限がなされた欧米を上回るような支援対策となっている。この状況で10兆円のフリーハンドはどう見ても過大。自らが打ち出の小槌を握って支持率回復に繋げたい、という政権の思惑が透けて見える。

もう一つは、国債依存度があまりに高まってしまったこと。本予算、第一次補正と併せた国債発行額は90兆円。160兆円の国家予算の56%、つまり半分以上が借金。

2011年の東日本大震災の時でも51%だったのだから、いかに突出した数字か。しかも、その時と大きく異なるのは、今回はそのほぼ全額を中央銀行が紙幣を増刷して引き受ける(正確には増刷することすらなく、コンピューターの残高をいじるだけ)こと。まさに異常中の異常。

 

国家主導の外出自粛と休業要請によって中小事業者が大きく傷んでしまった今の現状を見れば、異常事態に異常な財政出動で対処するのは万やむを得ないところ。世界的な異常事態であるからこそギリギリ容認される異常な財政である。

ところが、これを「異常」ととらえない向きも多く、SNSでは「国債をいくら発行しても大丈夫ということがこれで証明された」などという声が上がっている。

しかし、この様な見方は大きな間違いだ。

いうまでもないが閾値とは超えて初めてわかるもの。

超えるまでは、まだ大丈夫、まだ大丈夫と思っていても、超えた途端にとんでもないことになる。今回のコロナウイルス・パンデミックのWHOの見解を追っていけば、容易に理解できるところだろう。「まだ大丈夫」は実は「もう危ない」なのだ。

そして「今は緊急事態」となったときには、通貨への信用が既に失われてしまっている。国民生活に突然大きな制約が課されることになるだろう。

 

心配なのは、少し前に自民党の若手議員ら80名あまりが真水100兆円規模の補正を、との要望書を自民党に提出したなどという動き。安倍政権に終わりが見え始めた今、次の総選挙は与党も必死になってくるだろう。ここでバラマキ主張合戦となれば、先進国の中の先進国である日本の今の幸せも終わりを迎えることになる。

来る時は急だ。

 

時は来ている。

先日の財務金融委員会でのこと。ドイツでは、中小企業等への給付金が極めてスピーディに支払われたことを表(下表)を作って示しながら、麻生大臣に

「副総理でもあるからお聞きするが、日本も折角良い経済対策(持続化給付金)を作ったのだからもっとスピーディにやれば良かったのに、この辺り改善したら国民にも喜ばれるし、政府にもプラスになるのでは」

と質問した。

 そうしたところ、普段は質問に割と正面から自分の言葉で答えられる麻生大臣が完全に質問をはぐらかし、「日本の死者数が少ないのが不思議だ、万全の準備をしたドイツよりも、CDCがあるアメリカよりも全然少ないのだから」と不思議な答弁をされた。

 

 何なのだろう?と思っていた。

そしてその日の質疑ではもう一つ不思議なことがあった。持続化給付金の準備について経産省に質問したところ、「給付金支援のためのシステム作りは入札で行なったが、落札者が正式契約前から準備をしてくれたので、補正予算が成立した翌日である5月1日にはスタートできた」との政府答弁があったのだ。

その時には、日本の政府も企業もやるときはやるな、正式契約前・予算成立前に動くなんて、と善意で解釈していた。

 ところが、だんだんこの話が「いい話」どころか「怪しい話」になってきた。

 

 立憲民主党の川内議員が、5月22日の衆議院決算行政監視委員会で幾つかの事実を独自調査で明らかにされた。

持続化給付金の事務を委託されたのは平成28年に出来たばかりの「サービスデザイン推進協議会」という会社。これは電通、パソナ、トランスコスモス(アウトソーシングの会社らしい)の三社が作ったものだという。

この「協議会」という変わったネーミングの会社は平成28年に設立されるとすぐに経産省から事務委託を受け始めるが、その請負業務をほとんど全てを再委託する単なるトンネル会社(川内議員が住所地を訪ねたところ小さなビルの2階で誰もおらず、「リモートワーク」の貼り紙がなされているだけで無人だったという。まるでサスペンス映画だ)。

今回も、電通に再委託し、電通が「コールセンターや申請受付業務の管理」や「広報の実施」をしており、サービスデザイン推進協議会は「全体の統括業務」と「給付金の振り込み業務」を行っているとのこと。

そして、契約金額は何と769億円(以上は全て川内議員の質疑による)。

 

 持続化給付金の補正予算の計上額は2兆3176億円なので、1件平均100万円の給付をするとなると給付件数は231万7600件。手数料として考えると、1件あたり3万3千円が「サービスデザイン推進協議会」(実質的には電通か)に転がり込むことになる。政府答弁によれば、もっとも手間と費用がかかりそうな「審査業務」は受託範囲外のようなので(念のため現在確認中。確認取れ次第追記します)、「協議会」はボロ儲けをしていそうだ。

 

 百歩譲って、ここまでの儲けを挙げたとしてもそれに見合った仕事の質が伴えば、緊急事態においてはそれも止むを得ないとも言えるかも知れない。しかし、巷にはいつになったら給付金が入ってくるのか、という声が溢れている。

制度開始から1〜3日で給付が実現し、在ドイツの日本人から「信じられない」という声が上がったドイツは、ベルリン州開発助成銀行という公的銀行が内部で準備を整えたとのこと。

日本では769億円かけて、3週間経ってもまだ120万件の申請に対し5980億円しか支給されていない(財務金融委員会での本日の答弁による。予算の4分の1の消化率)。

 

 このような事情があってのことか、先日に続いて今日も財務金融委員会で麻生大臣に、

「どんなにいい政策でもスピードに欠ければ意味がない。質の問題もある。フランスでは、4月28日に首相がマスク着用義務付けを発表したら5月11日には配布された。しかもお洒落で付けたくなるようなものが。日本ではアベノマスクも本来はいい政策だったがいつまで立っても届けられない上にデザインも悪いので今日も委員で着けてる方は誰もいない。給付金も電通、パソナが作っている協会が700億円もの巨額で請負われた。であるならばドイツ、フランス並の仕事の質を確保して欲しい。折角の政策を活かすようトップダウンで指示して欲しい」

と先日と同じような質問をしたところ、麻生大臣は先の数字や第二次補正予算の概要を紹介された後、またも

「日本の死者数が少ない。結果を出している。アメリカはベトナム戦争の死者数を超えて10万人になる。日本は800人。終わった後検証が必要。」

と全く関係ないところに話を振ってごまかした。この時に、この件は完全に「怪しい」と感じた。

 

 アベノマスクの時も契約先のうち1社がよくわからない企業で、そこを含めてどう考えても高い値段で品質が悪いマスクが契約され、しかも遅配された。経済的合理性もへったくれもないお粗末さで、国民の怒りを買った。

 

そして、またもや、である。

 

 国民が苦しんでいるこの時期に、巨額の利益を政商のような存在の企業が挙げたことが推認され、そして、肝心の国民への提供が遅れてしまっていることが2度繰り返されている。

検察庁法改正という、三権分立を揺るがしかねない暴挙が謀られ、それが不祥事で潰えたばかりでもある。

いくら寛容で我慢強い日本国民であっても、流石に我慢の限界だろう。

 

既得権益と関わりが薄く、かつ実務能力に長けた行動力のある人物に舵取りを任せるべき時が来ている。

 

命運が尽きた安倍政権

安倍首相が、トランプ大統領の要請を受け、アメリカで作り過ぎた人工呼吸器の購入を約束していたことが報じられた(朝日)。副作用が懸念されるレムデシビルも。

 

 今までもF35であるとかイージス・アショアであるとか日本がアメリカの在庫処分先のような扱いを受けてきたが、このコロナ禍でもそれが繰り返されるとのこと。

時期に遅れたアベノマスクといい、率直にいって安倍政権の医療関係対応はお粗末に過ぎる。

 

 人工呼吸器を買っても、肝心の感染者用医療体制が整備されていないので、たらい回しやら介護老人保健施設での見殺しの様な状況(読売)やら、コロナウイルス感染拡大へのヒステリックな世論の反応(いわゆる自粛警察系)の陰に隠れて許されない様な事象が頻発している。

 

 余剰生産された人工呼吸器を買うのであれば、十分な医療体制が整わない最大の原因の一つである医療従事者の感染防止器具(N95やら防御服やら)の調達に全力を挙げるべきなのに。

国民にはそっぽを向いてアメリカのご機嫌取りをしているようでは、安倍政権の命運も既に尽きたと言うしかない。

今ならまだ間に合う。

プロ野球が6月に開幕することが決まった。

であるならば,夏の高校野球選手権も,中止を考え直したらどうだろうか。

日本における新型コロナウイルス感染症の実態では,20代以上と20歳未満では,明らかに前者の方がリスクが大きい。

その年代中心のプロ野球が開幕するのに,同じスポーツである高校野球を中止にする合理的な理由はまったくない。

 

なお,一部にある「インターハイも中止なんだから野球だけ特別扱いはできない」という不合理な意見など聞く必要もない。別に野球だけが特別扱いされるのではなく,野球に限らず今はもう中止する必要がなくなったから,中止を中止すべきなのだ。

逆にインターハイも簡素化しての開催を考慮したらどうだろうか?

人格攻撃

 リアリティ番組に出演されていた女子プロレスラーの方が,番組内の言動を巡ってSNSで激しい人格攻撃を受け,亡くなられた。前途ある若者が,人が持つ悪意(正義と勘違いした悪意と,悪意の自覚ある悪意)によって死に追い込まれたことは残念でならない。心よりご冥福をお祈りする。

 

 芸能人なら何を言ってもいい,的な安易な考えで集団で袋叩きにする。この手の行為はSNS(特にTwitter)でよく見られるところ。

 以前にも「有名人のSNSはゴミ箱ちゃうで」というダルビッシュ投手の正論があったが,今回の事件を受けて芸能人側からかなりの数の正当なコメントがなされている。

 

 ところが今度は,きゃりーぱみゅぱみゅに対して,「検察庁法案改正に対して抗議したことを非難するリプライが殺到している。」とのこと(女性自身)。

 この批判はお門違いもいいところ。報道によればきゃりーのツイートは「#検察庁法改正案に抗議します」とのハッシュタグを付けつつ、同法案の論点が整理されているとする相関図をツイート。」したというもの(JCAST)。「政策・法案」を批判しただけで人格攻撃をしたのではない。

 言うまでもないことであるが,「政策・法案」への批判を含めた意見表明が自由に行えることは民主主義国家の基本中の基本。

 きゃりーを非難しているという連中は,卑しむべき人格攻撃と正当な民主主義的意見表明の区別もつかないほど判断力を持ち合わせていないのか?

 

 一方で、公平を期して言うならば,意識が高い系の方々が、よくSNS(TwitterだけでなくFacebookでも)で,政権や政党幹部などへの人格攻撃を繰り返している。それも,直接的な表現で。

 こういった方達は,実は自分たちが木村さんを追い込んだ人達と同じなのだということに気付いていない。だが同じこと。

 芸能人に対しても政治家に対しても,こういうことはもうやめよう。誰に対しても,人格攻撃は不毛だし,見苦しい。

高校野球を中止する必要があるか?

今日、夏の高校野球の開催可否について決定されるという。
報道によれば中止の方向ともされているが、その必要は現時点ではない。
感染が収束方向に向かっているのは客観的に明らかだからだ。無論、万一違う状況が今後生じればその時中止とすれば良い。
開催の可否について問題となる点を考えてみると

・無観客でやればそもそもクラスターとなる危険性はない。
・学校が再開されるのだから、選手個人のことを考えてもチームが集まることのみ危険視するのは不合理。
・そもそもsocial distanceがこんなにあるスポーツも珍しい。
・移動が、というなら基本は貸し切りのバス移動にすれば良い。一部飛行機や新幹線を利用せざるを得ないところからのチームは移動中のマスク着用を厳守する。

 だいたい、日本の10倍感染者がいるドイツのブンデスリーガでさえ今日から再開して無観客で試合をしている。控え選手がベンチではなく観客席にいてマスクを付けたりしてるなど工夫したレギレーションを特別に作って対応してるのだ。

 横並び大好きな日本ではあるが、インターハイが中止したからといって、決定時期やスポーツの内容が高校野球を横並びにする必要はないだろう。

 なお、私は高校野球ファンではなく(ご多分に漏れず出身高校の影響大で高校サッカーにしか強い興味はありません)自分が見たくて言っている訳ではありません。

「調べなけりゃ何も始まらない」は本当か。

若き力士が新型コロナウイルス感染症で死亡した件について、ある芸能人が「(PCR検査で)もっと早く調べられたら」とコメントしたことについて、そうではなく「もっと早く診療できたら」が正しい批判という投稿をSNSにしたところ、「調べなけりゃ何も始まらないので正しいと思いますよ」とのコメントをいただいた。

ある意味で重要な指摘だと思う。この極めて一般的な誤解が、PCR検査偏重の世論の基本にあるからだ。

 

 そもそも診療というのは「始めに確定診断ありき」ではない。当然ながら「始めに○○検査ありき」でもない。

 

①ある「困った」を抱えて医療施設を訪れた患者の「困った(愁訴)」の特徴や患者の背景因子(年齢・性別・病歴etc.)を併せ考慮して「疑われる疾患名」を複数想起し、

           ↓

②それを確定していくための「検査(触診、視診、血圧・脈拍、血液検査、CT検査、内視鏡検査etc.)」を積み重ねて複数ある診断名候補を徐々に絞り込む(これを「除外診断」という)

           ↓

③それと同時に「もっとも疑われる診断」や「想定される最悪の診断」を考慮しながら治療は進める(「確定診断なければ治療なし」ではない)

           ↓

④推理と証明(検査はヒントを得るための手段であると同時に証明のための手段でもある)の結果、動かない診断に至ったことを「確定診断」という。確定診断に至る道筋は一つではなく、明確な診断基準に合致して判定される場合もあれば、病原体そのものズバリが検査によって判明し(がんなどの病理検査、細菌培養検査、ウイルスのPCR検査)確定診断に至る場合あるし、あるいは除外診断の積み重ねで残ったもの勝ち的な確定診断に至ることもある。

(なお、④に至らず「疑い診断」のままで治療を進めていくこともよくあること。それで「困った」が改善されれば、「確定診断」は必要ないからだ。)

 

 つまり、すべての診療とは、「始めに答えがある」ことによって始められるのではない。愁訴や所見というevidenceを基に積み重ねられる推理によって答えを求めつつ、現実に対処していくという一連の作業なのだ。そして、その答えの求め方は一つではない。

 

 新型コロナウイルスによる一連の病態の場合(あまりに症状が幅広いので「新型肺炎」ではなく「新型コロナウイルス感染症候群」の方が適切では?)、臨床診断基準が日本では確立されていないので、確定診断に至るにはPCR検査が必要となるが、別に「確定診断」されなければ医療として「何も始まらない」かといえば決してそのようなことはない。

・最近の欧米からの知見では、新型コロナウイルス感染ともっとも相関性がある症状は「味覚・嗅覚障害」。

・中国からの報告では入院時の血液検査のDダイマーの値が重症化を予測するマーカーになるという。血栓症を合併し、脳梗塞や肺血管の塞栓の原因となるとの報告もあるが、Dダイマーは血栓症の発症を示すものであり、当然因果関係はあろう。

・日本の臨床現場では血液検査でわかるリンパ球の減少が一つの目安とされているという。

・CT検査では肺炎症状が明確に出る前から特徴的な所見がみられるというし、肺の換気機能の低下はパルスオキシメーターを常時装着していればすぐにわかる。

 一方、治療という面においても、アビガン等のウイルスに直接作用する未承認薬だけでなく、抗血栓薬(例えばフサン)は重大な結果をもたらす血栓症の治療に効果的なことは明らかだ。韓国の報告ではフサンに優れた効果が認められたとのこと。

 そして、以上の「検査・治療・観察」については、患者に現れた症状に対して、「経過観察中の検査」や「対症療法」として行うべきもの。

 

 結局、「PCR検査をしなければ何も始まらない」というコメントに代表される世間の誤解が、今の厚労省のサボタージュを側面から支援してしまっているのだ。

 

 ただ、その誤解も臨床医療に触れることのない方々にとってはやむを得ないところ。このような診療の基本についても、20年以上医療訴訟に専門的に取り組み、幾多の臨床医や日本を代表するような専門家にお会いして症例の検討をさせていただくことを通して体感し、医学文献からの知識も併せてたどり着いたところ(この関連で特にお勧めの本は「臨床力ベーシック」)。

ただし、専門家というのは、私も私の専門分野(法律)についてはそうだが、往々にして一般の方が「何がわかっていないかがわからない」ということが多い。そういったところを「翻訳する」のが実は弁護士の仕事でもあり、それができるところが、弁護士がトップマネジメントに向いているところでもある。アメリカでは、各企業トップに始まって大統領やFRB議長まで弁護士が就いている所以でもあろう。

 ということで誠に僭越ながら少し解説をさせていただいた。