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【国会報告】麻生大臣、黒田総裁がMMT導入を明確に否定

昨日の財務金融委員会で、私は最近の懸念の幾つかを麻生大臣に率直にぶつけてみた。そうしたところ、麻生財務大臣が日本におけるMMT導入を、強く明確に否定された。午前中、他の委員の方の質問に答えた日銀黒田総裁が明確にこれを否定した(ロイター参照)のと合わせ、政府における財政策のトップと中央銀行のトップの両者がMMT否定について明確なコメントを発したたことになる。

この意義は大きいのでご紹介する。なお、この機会にステーブルコイン(リブラ)、そして中央銀行バブルについても質問したので、補足として記載しておく。興味のある方は続けてご覧いただきたい。

 

【質問】

私、最近すごく心配しているのは、MMTと言われる理論、これに注目されることが、与野党の政治家を問わず、あるいは市民の方にも膨らんできている。ただし、日本においては、御承知のとおり、ここ七、八年、歳入面で六割から三割、国債に依存している状況にある。一方で、社会保障費は年々膨らむしかないような状況になっております。

こういった国が仮にMMT的な声が高まって国債依存度を高めれば、急にやめることは不可能なわけですから、大変な事態が起きる。ですから、私は、日本においては、MMT的な、余り国債に頼るような政策、それでもって景気を回復させていくという政策はとりにくいんだと思っておるんですけれども、これについて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

 

【麻生国務大臣】

MMTの言っていることは、自国の通貨で全て賄っている国、例えば、日本とアメリカとデンマークとスイスぐらいかな、今四カ国ぐらいだったと思いますけれども、自国通貨だけで通貨をやっておりますので、これはデフォルト関係ないんだから延々と出せるんだと、極端なことを言えばそういう話をしておられる。

アメリカで、一部の国会議員が強硬に主張されている。政府債務残高はどれだけあっても問題ないんだという話ですが、これを実行した国は一つもありませんので、その意味では、私どもとして、この実験を日本でやって、日本の金融マーケットを修羅場にするつもりは全くありません

それから、財政がとめどなくなるという話ですけれども、きちんとマーケットというものが世の中には存在しますので、そのマーケットの反応というものが極めて大きな要素であって、その中において、この出しておる国債は必ず返済されるものだという信用があって初めてマーケットが成り立ちますので、そういった意味では、市場の信認を確保するということで、我々としては、二〇二五年(PB均衡目標)とかいろいろな形でそういった対応を続けていきますということを申し上げさせていただいておりますので、今の状況というものは、私どもは、MMTというような、余りよく、私どもから見ると極めて問題点の多い、そういった理論によって我々は財政運営をするつもりはございません

 

 

 

(補足)

私のそのほかの質問要旨は以下のとおり。

 

1 リブラ

ご存知のとおり、リブラとはFacebookなどの巨大企業が連合して発行を企画している暗合資産。通貨バスケット(ドル、ユーロ、ポンド、円、シンガポールドル)とのペッグが予定されているのでステーブル・コイン(法定通貨を裏付けとしたデジタル通貨)の一種とされている。

この構想に対して、G7、G20では強い警戒感が示され、合意によるコメントまで発表されている。コメントでは、表向きは個人情報やマネーロンダリングへの懸念が表明されているが、各国の 財政・金融当局の本音はどうだろうか。

私には、通貨当局の懸念は、最近の行き過ぎとも思える通貨増発政策により世界中で通貨への信頼が失われつつあることに 対応してリブラが登場し、だからこそあそこまで各国が強調してこれを阻止しようとしているように見える。

今まではドルが「世界通貨」の覇権を握り,発展途上国などで自国通貨への信頼が揺らいだ場合,ドルがまるでその国の通貨のような役割を担い,ドルでなければ受け取ってもらえない,品物と交換してもらえないという事態も生じてきた。ペッグの中に入っていない国々では,こういった事態がより容易に生じることとなる。自国通貨よりもリブラが嗜好される,すなわち通貨発行権益が失われる恐れがあるのだ。

だが,リブラによって通貨発行権益が失われる恐れがあるのは通貨バスケットに入っている通貨を発行している国々にも一定程度共通する。バスケット内の通貨を発行する国家においても、為替レートの変動により自国通貨とリブラの交換比率に影響が出るため、通貨に対する信用(安定性)に対する不安があれば、自国通貨よりもリブラが流通の主役となることも考えられる。貨幣の主役がリブラなどの民間貨幣に移る可能性があるのだ。そして,それは現在は世界通貨となっている米ドルについても同じだ。だからこそ,ビットコインなどには鷹揚であった米議会やFRBが,公聴会を開いてザッカーバーグなどを激しく追及し,なんとかこれを阻止しようとしているのであろう。

そして,そのような懸念をアメリカを始めとした各国財政・金融当局が抱かざるを得ないのも,自ら巻いたタネではないのか。アメリカ,ECB,日本などがこぞって行っている中央銀行の今の行き過ぎた通貨増発政策と,これによって支えられている各国政府の拡張的財政政策について、各国金融当局自身が不安を抱いていることが背景にあるのではないかと考えている。

 

麻生大臣からの答弁は概略以下のとおり(以下私が要約している部分あり)。

「たらればの話でありますけれども、このグローバルステーブルコインとか、セントラルガバメントの出しますデジタルコインとか、そういったものについて、今、各国の金融政策に対してどのような影響を与えるであろうかという仮定の質問なんですけれども、これは懸念があるのは事実だと思うんですね。それに加えて、それが出されたときにマネロン対策どうするのとか、また、金融市場のスタビリティーは、安定性はどうなるのとか、使った使用者、利用者の保護とか使われたデータの保護とかいった政策上とか規制上のいろいろリスクを生じさせるんじゃないのって、これはいずれも全部懸念を申し上げているんですけれども。こういった問題意識に立って、ことしの十月の、いわゆるワシントンDCにおいてのG20の会合においては、この種の、グローバルコインとか類似の商品というものの取組が生じさせるであろうリスクについては、このプロジェクトのサービスというものが仮に開始されるとするなら、その前までにきちんと吟味され、適切にそれを対応する方法というものをきちんとつくっておく必要があるということで、これはG20、中国、アメリカ、皆含めてこれを合意ということで、この意識は皆合意していますので、自分たちでそれをやった場

合、自分たちにも影響が返ってきますから、ということで合意しておりますので。」

 

(答弁を受けての私の意見)

広い意味での通貨発行権益、つまり、国債などを発行して、例えば日銀なりFRBがこれを引き受けていくことができる、それが最後の支えというか担保になっているかと思うんですけれども、そこが侵されていく可能性がある。

なので、やはり、グローバルコイン、ステーブルコイン、こういったものに対しては警戒が必要であるとともに、そういったものが国の発行する通貨よりも信頼されるような事態というのが生じるのを避けるというのは非常に重要なことだと思われる。

 

2 中央銀行バブル

今、ニューヨークの株式市場、どんどん史上最高値を地道に更新し続けている状況にある。それから、不動産市場も同じような状況だ。こういった、資産インフレともいうべき現物の上昇があり、金も値上がりを続けている。この原因は、通貨の異常な発行(増発)が続き、同時に異常な低金利が続いていることに関して、投資家が嫌気を差してほかに行くところがないから現物に流れ込んでいるんだ、こういう見方がある。

つまり、これは見方を変えれば中央銀行バブルであるし、各国の財政赤字を基調とした財政政策というのは、こういった中央銀行バブルに支えられている反面がある。

こういった懸念に関して、麻生大臣にお尋ねした。

 

麻生大臣からの答弁(要約あり)は概略以下のとおり。

「世界中で超低金利というような形の緩和的な金融環境によって、グローバルな世界においての現物資産というものが、バブルが生じているのではないかということだと思いますが資産価格というのは、企業や経済のファンダメンタルズというものの見通しで投資家がさまざまな形でつくっていきます。

また、アメリカとか欧州の場合は、経済状況や金融スタンスはそれぞれ、スタンスがさまざまでありますので、資産価格全般については一概に申し上げることは困難です。

その上で、日本について申し上げさせていただければ、少なくともこの七年間で、大胆な金融政策を含めて私どものやった結果、企業収益が向上したし、雇用も所得環境も改善もしたということによって、経済のファンダメンタルズというものの回復の中で、株価や土地というものも上昇傾向にあった。少なくとも、八千円ぐらいだったものが二万三千円まで上がってきているとか、いろんな形で、はっきりした形で数字でも出てきておりますので、そういった状況がこの七年間続いてきた。

正直、税収も、おかげでバブル前までほぼ戻ってくるところまで来て、四十五兆ぐらいまで落ちたものが六十兆近くまで上がってきておりますので、結構なことだとは思いますけれども、しかし、まだ三万八千九百円には行っていないじゃないかと言われればまだ行っておらぬわけですから、そういった意味では、緩和的な金融環境というのが続いていく中ではありますけれども、資産の価格というものの動向を含めまして、金融面での脆弱性というものが、蓄積については、これは、金利を見ましても何を見ましても、国内外ともに、引き続きよく見ておかないかぬという大事なところなんだと思っておりますので、私どもは、この種のところは日本以外の国の動向を含めましてきちんと見ておかないと、最近はすぐ影響が出ますので、そこらのところもよく注視しつつ、対応をしてまいらねばならぬと思っております。」

 

(答弁を受けての私の意見)

バブルは終わってみなければわからないというような格言めいたものもございますが、バブルが急にはじけると大変な迷惑をやはり国民もこうむることになりますので、ぜひ、その辺、注視をお願いしたい。