【国会報告】水道法改正案採決

12月6日衆議院本会議での審議を報告します。この日のメインは水道法改正案の採決。先の通常国会では衆院では可決されたものの参議院で継続審議となり、この日参議院での可決を受けて直ちに衆議院本会議での採決となったものです。今回はいつもと趣向を変えて簡素化して要点をお伝えします。

この改正案の目玉は、水道事業を民営化しやすくするところにあります。水道の設備自体は地方自治体に残し、事業の運営のみ、民間に売却する「コンセッション方式」を導入するというものです。政府与党は、①人口減少により水需要が減少する②水道管などの設備が老朽化しており更新に多額の費用がかかる③担い手の職員が減少している④民営化により効率化が図れる、というものです。

 私の立場は、反対です。まず、このような大改革を日本ではいきなり全面的に導入する、ということが多いのですが、今回のような場合は、まずは試験的にどこかで導入し、その結果を踏まえて行う方が混乱も少ないですし、中止もできます。次に、導入理由の①〜③は自治体がやろうが民間企業がやろうが同じこと。また、④の民営化によって効率化が図れる、というのも、民間企業の効率化は、勝ち抜くべき競争があってのこと。独占事業体となってしまう水道事業では、利益の最大化が図られるだけだからです。

 さて、維新を除く立憲民主党、国民民主党、無所属の会、共産党は反対であり、反対討論を行いました。そこでほぼ共通して述べられたのは、①参院本会議で可決され、その日のうちに衆院で委員会審議を事実上行わないまま衆院本会議での採決を行うというのでは、審議不足であり、強引過ぎること②内閣府にフランスの水メジャー(水道事業を行う多国籍企業)ヴェオリア社の職員が出向していたり、臨時国会中に退任した大臣補佐官が現職中視察の際にフランス水企業大手の幹部と会食をしたり、自動車を回してもらったりしていて、利益相反や癒着が疑われること③海外で民営化が失敗して再公営化が行われている事例があるが、そのうち3例しか調査されていないこと、などでした。立民の初鹿議員は、法律上は再公営化できるといっても、そのときにはノウハウを持った職員が枯渇しており事実上困難、民営化は片道切符だ、と訴えておられましたが、まさにその通りです。

 本日の議論は、野党の側に具体性があり、説得力がありました。立民の初鹿議員、国民民主の稲富議員、無所属の会の本村議員、共産の高橋議員、そして賛成の立場の維新の串田議員、いずれも簡潔に法案に絞った議論がなされ、演説に議員の実力が反映する様がよくわかりました。今後もこういった中身があって間延びしない討論が行われることが必要でしょう。

【国会報告】入管法改正案採決

 昨日(11月27日)の夜間に行われた入管法改正案採決のご報告です。総じていえば,明らかに野党の反対意見に説得力がありました。採決の結果は賛成317票,反対136票で可決でした。参院での審議がまだ控えていますが,このままいけば,そう遠くない未来に,外国人の低賃金労働が日本人の賃金や就職率に影響を与えること,また,十分な共生への配慮が決められていない現状では,文化的コンフリクトが起きそうなこと,それらが政治にも大きな影響を及ぼしそうなこと,はほぼ確実に見えます。このような大きな問題は,やはり事前に国民に呈示し,十分な議論を尽くした上で法制化する,それが民主主義というものでしょう。

 

 

 反対討論にまず立たれたのは立憲民主党の山尾議員。満を持してという感じで最初からヒートアップ。「国民の覚悟が問われる法案」との問い掛けから始まりましたが、仰る通りです。受け入れ見込数・受け入れ上限規制・永住資格・受け入れる対象となる労働の範囲、の4つの主要項目について法案で決まっていない,との指摘。さらに,法案成立が遅れ,施行が4月を過ぎてしまうと技能実習生が帰ってしまうと企業・使用主側が心配しているのがこの拙速な法案提出と審議の理由ではと。締めの言葉は,このままでは立法府が壊れる,傍観者ではなく共犯者,立法府が行政府の下請になっている,等々追及の舌鋒は鋭いのですが,再三指摘してきたとおり,では自党は移民を積極的に受け入れる施策についてどう考えているのかは最後まで明らかにされませんでした。これではただの反対政党になってしまいます。立憲民主党の支持率低下の真の原因はそういったところにあるのでは,と心配しているところです。

 

 自民党の平沢議員は法務委員会の筆頭理事。しかし,委員会・理事懇でも失言が相次いだこともあって,議場はヤジで騒然,発言が聞こえないほどでした。賛成理由は,アベノミクスと少子高齢化で中小企業で人手不足が進んでいる,このため真に人手不足の分野に限り外国人労働者を受け入れる必要がある,というものでした。

 しかし,今の時代,人手不足ではない分野など逆に極めて限られたもの(弁護士と歯科医くらいしか思いつきません)です。結局,ほとんどの分野に外国人労働者が参入することになるでしょう。

 また,現在の技能実習制度における問題は一部のものであり,ほとんどうまくいっている,と胸を張られたのですが,まさに開いた口がふさがらないといったところです。日本人の雇用に影響を与える点については,「丁寧な説明」をしたとのこと。いくら丁寧に説明されたとしても,低賃金の固定化などの問題は理路必然的に起こるもの。総じてなんの説得力もない意見でした。

 

 国民民主党は,論客の階議員。特定技能の水準や受入数の上限が法文上明らかでなく省令に白地委任されているのは憲法41条違反である,とのいつものもっともな意見を披露されました。また,省令に丸投げは与党と業界の癒着を招くので,産業別・地域別に枠を決定すべきとも。さらに,特定技能1号の供給源はほぼ技能実習生であるから,現行制度の問題点の実態を把握して見直すべき,このままでは壊れた土台の上に家を建てるようなもの,との指摘は鋭いものでした。

 

 公明党の賛成討論は,人手不足が深刻であること,今まで外国人に就労資格が与えられなかった建設や宿泊に認めたもの,上限など根幹部分についても答弁で既に明らか,等々当然ながら法案や周辺問題を賛美するものでしたが,少し主題から離れて。根幹部分は明らか,との意見に「エーーッ」とのヤジが野党から上がりました。与党でもこの「エーッ」を言う方がいて流行りなのかもしれませんが,率直に言って少々子どもっぽい。国権の最高機関たる国会に相応しくないように思えてならないので自粛されては,と思っています。

 

 無所属の会の黒岩議員は,法務委員会の強引な審議について触れられました。官邸の下請と化したかのように,委員会審議4日間のうち,3日は定例日外で,これは歴史上初めてであること,理事会・理事懇と同時間しか委員会審議時間がなかったことも異例であることなど,切り口を変えた具体的な意見を述べられました。また,14業種中3業種しか有効求人倍率を使った積算をしていないこと,なども具体的で面白い意見でした。

 

 維新は串田議員。この法改正によって,日本人労働者の労働環境悪化が懸念される一方,人手不足が地方で拡大し,97%の中小企業で人手不足が深刻化している。そこで,賛成・反対ではなく修正協議に応じることにした,と短く率直な意見。賛否については私と意見を異にしますが,その率直な言論には好感を受けました。

 

 共産党は藤野議員。この改正案は,外国人労働者を雇用の調整弁とするもの。また,安価な労働力としての技能実習生を今後も使い続けようとするものであるし,技能実習生の処遇改善の法文がないことも問題として指摘されました。さらに,技能実習制度を歪めているブローカー(実習生が本国で100万円以上の支払を強いられ,それに見合う収入を実習で上げられないことも失踪の大きな要因となっているようです)規制が設けられなかったこと,受け入れ予定の14業種中13業種ではその8~10割が技能実習生が人材の供給源となる見込であること,来年4月の施行を急いだ理由は,半年で数万人の技能実習生が帰国してしまうから,と法務大臣が答弁していること,失踪者へのアンケート調査で86%が最低賃金割れの実態があること,などの共産党らしい細かい論点を列挙されましたが,どれも頷ける指摘でした。

【国会報告】法務大臣不信任決議案

 本日、日本の将来を大きく変えてしまう可能性のある、入管法改正案の衆議院審議が行われています。まずは、午後いっぱい行われた法務大臣不信任決議案の審議について報告します。
 最初にこの法案に対する私の立場をご説明いたします。私は、正面からの十分な議論と受け入れに伴う制度整備を前提とした上で一定数の移民は受け入れるべき、技能実習制度は早急に廃止という立場です。しかし、現在の入管法改正案は議論不足、準備不足の極みでそれに呼応するように法案の中身が空っぽなので反対です。また、ボリュームの大きな移民の受け入れは、若年者層やブルーワーカー層の低賃金の固定化に繋がることは間違いなく、それが今の欧米に見られるような極右勢力の台頭にも繋がっていく可能性もまたあるでしょう。したがって、法制化には事実の検証を踏まえたきちんとした議論が必要です。

 さて、趣旨弁明に立たれたのは、国民民主党の山井和則議員。まずは現在の技能実習生の悲惨な実例を紹介されました。建設業の実習のはずが福島で除染作業に従事させられたり、残業代が300円だったベトナムの方。ダンボール製造業で指を3本切断し、雇用主からはいたわりではなく「仕事ができないならば帰国しろ」と非人間的な言葉を寄せられたというカンボジアの方。自転車に乗ることや大勢で集まることを禁止され、赤い帽子を日常的にかぶることを強制されたという例など。いずれも、憧れであった日本のイメージを著しく失墜させるものであったと紹介されました。こういったことを放置しての新たな制度の導入は認められない、との論説でした。このあたり、本当に胸を打つ訴えかけでしばし聞き入り、また拍手をいたしました。しかし、法案成立を足止めするためにやむを得ない手段だったとはいえ、時間を使おうとされるあまり徐々に話が散漫になった印象は否めず、折角マスコミを始め広く国民に本法案の問題点を浮き彫りにさせるチャンスであったと思うと残念ではありました。その後、日本人の賃金が上がりにくくなるという、当然制度導入によって起きうる事態について正当な指摘をされ、ご自身が留学経験されたスウェーデンで、国民との軋轢が生じていることを紹介されました。移民受け入れに反対はしないが、自国民の賃金・労働時間・労働条件の向上とセットにしないと、移民排斥の極右政党が台頭する、近時のスウェーデン、ドイツを見よ、あのメルケルでさえ(2021年限りの)引退に追い込まれた、とまさに時宜を得た指摘をされました。
 総じて、熱が入り、また正しい指摘であったと思いますが、先に述べたとおり止むを得ないこととはいえ、内容的には1時間が限度のもの、約2時間であったことは演説としてもったいなかったと感じました。

 各党の賛成反対討論は、印象を中心として。
 自民党は、野党が問題視する技能実習制度の問題点と本法案は牽連性がないとの指摘。それはそうですが、前段階の技能実習制度の問題点を踏まえてその改善策を盛り込んだ本格的制度の法制化であるべきなのでは。
 立憲民主党は法務大臣のホームページにあるという大臣の持ち味「突破力」と座右の銘である「人生は生きるに値する」という言葉に絡めての批判。そこに絡める必要はなかったと感じましたし、そもそも移民制度に賛成なのか反対なのかがよくわからないため、説得力がもう一つ、という感じでした。
維新は、不信任決議や解任決議は、議論の機会を奪うし、政党間の信頼関係を奪う最終兵器なので乱発すべきではない、との意見。それはそうです。
 国民民主党は、静岡県の源馬議員。いつも上手な討論をされるのですが、この日も真っ向からの正論。外国人労働者が必要だから改正するというが、ではその見込人数の積算根拠は?であるとか、日本人賃金に影響ないという根拠は?都会に偏在しないか?と畳み掛けた上で、少子化で先細りする日本には、短期労働力ではなく移民が必要という、堂々たる論陣を張られました。頷くことばかりでした。
 無所属の会と共産党は、特筆するところがなかったため、恐縮ですが省略させていただきます。
 不信任案は賛成131、反対309票で否決されました。私は賛成票を投じております。

 さて、入管法改正案は、特に若者にとって、労働市場において外国人労働者という強力なライバルをボリューム感を持って導入しようという法律です。使用者側・企業側の労働力不足という声だけでなく、未来を見据えた制度設計が必要であることを再度訴えかけさせていただきます。

【国会報告】財務金融委員会(後編)

11月20日の財務金融委員会のレポート後半です。今回も順番を入れ替えて、財金にふさわしい骨太の質問からのご紹介です。

 

 最後に質問された維新の杉本議員。経済通の杉本議員は今まで積極財政派との印象でしたが、今回は違いました。最初から、日本の信用力、日銀の信頼性の問題を取り上げられました。国の借金の総額が1100兆円(国債以外の借入含む)にも達する。国民の金融資産1800兆円が国の信用力になっている。今、国際分散投資が必要ではないか。本年6月末の速報値で国債残高は999兆円でている。そのうち、日銀が445兆円・44.6%、海外投資家が61兆円・6.1%保有している。国債を海外投資家が売り浴びせても日銀が買い支えることは出来るだろうが、外国為替はどうか。政府への信認、日銀への信認、そしてそうし高齢化で国民の富が将来的に減っていくことにより日本の信用力が失われれば、国債の売却や(円の売り)が起きうる。国債は日銀が買い支えられて為替は介入で歯止めがきくのか。2025年問題を超えて、2030年、2035年、2040年になってこの国が持つのか。だから国際分散投資が必要では、という問いかけでした。麻生大臣は、日本の信用力には触れず、分散投資はインターナショナルにやる方が極めて有効、と簡単かつ率直に述べました。

 私は、この問いかけは極めて重要なものだと考えています。日本国債は、円建てですから日銀が銀行券、つまりお札さえ増刷すればいくらでも買い支えられます。しかし、円が売り浴びせられたとき、これを買い支えるにはドルが必要なのです。円は通貨発行権に基づき日銀が増発できます。しかし、ドルはそうはいかないのです。だから、一日に5兆ドルも動く外国為替市場で一斉に売り浴びせがあったとき、いかに政府日銀といえどもこれに抵抗することは困難です。過去にイギリスの中央銀行がポンド防衛で一ファンド(ソロスのクォンタムファンド)に敗れ去ったのは有名な逸話です。

 続けては、消費増税と景気の問題。景気の先行指標といわれる半導体市況が2018年の第二四半期から交代局面に入っている、地元のレストランも店を閉める、地元のグルメ雑誌にもレストランの広告がほとんど出なくなっている、現場は冷えてきているのでは、政府の景気回復は続いているという認識は違うのでは、という質問でした。麻生大臣は、外食サービスが減少したことは認めた上で、企業業績やGDPからみて、消費税増税しても、対応策をきちんとすれば大丈夫というものでした。

 私は、この点は疑問符です。静岡でもシャッターのお店は増えるばかり。物価は上がり基調。株価も大きく乱高下しながら基調は下げが続いています。あまり良い方向にはみえません。

 質問の最後は、社会保障費の抑制策を、党派を超えて、政権がかわった場合も含めて、選挙のための材料として裏切ることなく共通の政策目標を持って、与野党問わず共通で答えを出して、それを国民の皆様に御理解いただく努力を、もうさすがにしないとこの国はもたないという提言。

 こういった議論こそ、何十時間でもかけて、財務金融委員会で取り上げるべき議論でしょう。森友・加計学園も大事な問題ですが、やはり木だけではなく森をみることも大事です。少なくとも同じ以上の熱意をもって議論しなければ未来の自分たちを含めた国民への責任が果たせません。

 杉本議員の提言は、最近政府も言い始めた年金支給開始年齢の繰り上げ。既にオーストラリアは、年金の支給開始年齢を七十歳 にする、これも十数年後というような決め方をし て、直近に年金がもらえるかなと思っていた人に 対する不安というかをなくし、そして現役の世代 の方々には覚悟を持っていただくというような法律を通したとのことです。政府は今後の検討課題としてあっさりとした答弁でしたが、締めの言葉が興味深いものでした。プーチン大統領は、六十歳支給というのを平 均寿命が六十歳の国にして不評を買ったとのこと。国をもたせるという意味で国民の皆様にも我慢をしていただく必要を訴えさせていただきたいと思います、とのことでした。

確かに、際限なく平均寿命が延びている我が国においては、国をあげての正面からの議論が必要な時期にきています。

 

 さて、本来のトップバッターは自民党藤丸委員。マネタリーベース、マネーストック、名目GDPの日米欧を比較するグラフなどの素晴らしい資料を用意されました。まさに財務金融委員会にふさわしい資料で、このグラフを見ると、アベノミクスで経済が右肩上がりとの建前とは裏腹で日本だけ名目GDPはほぼ横ばい、米国とヨーロッパは右肩上がりであったことがわかります。日本で増えているのは、通過発行量と日銀の当座預金の合計であるマネタリーベースのみ。それも米国のQE終了に伴い、異次元緩和を続けている日本だけが突出して増えています。この貴重な資料を元に何を質問されるのかと楽しみに待っていましたが、なんとこれの解説のみで関連質問はなし。まさに肩透かしでした。

 しかし、質問の最初は、2025年プライマリーバランス達成の問題。

 答弁はうえの副大臣でしたが、「策定したところであります。後がないという危機感のもと、新たな計画に沿った歳出改革等に真摯に取り組むことで、財政健全化目標の達成を確かなものにしてまいりたい」との答え。本当に実行されることを切に要望いたします。次の質問もこれまた大事な地方金融機関の経営問題。日銀の異次元緩和政策による異常な低金利のために、貸し出し金利と調達金利の利ざやが縮小している上に、地方では新規投資が活発でないことから、どこの地方金融機関も経営見通しが暗く、それ故に合併が盛んに行われているようです。この点を踏まえてでしょうが、「地域金融機関はどうあるべきか」という極めてストレートな質問。

 答弁は田中副大臣。その答えは少し衝撃的で、「地域銀行は、二〇一八年の三月期決算におきまして、過半数の五十四行が、本業利益、貸出しですとか手数料ビジネスの上においては赤字となっている状況」とのこと。バブル崩壊時にバタバタと金融機関が潰れてしまったことを思い起こさせられました。

 

 続いて自民党本田議員。軽減税率の準備状況や仮想通貨の規制や監督について質問されました。前者は政府の宣伝のような色合いでした。後者は今なぜ?という感じもいたします。

 

 次は立憲民主党川内議員。最初の質問は予想どおり麻生大臣の失言問題。野党としては取り上げざるを得ないところでしょうが、あまり長々とやらなかったところが逆に好印象でした。次は、財務省再生プロジェクトのコンサルタントへの報酬。後に何か続くのかもしれませんが、今回の質疑からはまだその意図は読み取れませんでした。そして、2012年と 2016年の比較で、所得金額1億円以上の方、5億円以上の方がそれぞれ増えている、5億円以上は倍増したという質疑応答。日本でもアメリカのように所得格差が広がっている実態がよくわかりました。さらに、月給30〜40万円では有効求人倍率は0.72に過ぎないとのこと。政府与党は、有効求人倍率をあげて景気が良い指標としていますが、有効求人倍率が高いことと給与水準が結びついていない実態が暴かれました。そして,消費税引き上げに関する総理発言を財務省幹部が聞いた時期について。担当の財務省幹部が知らないのはどうか,という趣旨でしょうが若干枝葉との印象は拭えませんでした。締めは森友の評価調書が失念されていた,という問題。木を見るか,森を見るか。財務金融委員会ではもう少し森に重点が置かれても良いのでは,と感じました。

 

 続けて立憲民主党の今井議員。日銀の黒田総裁に対し,名古屋での11月5日の「かつてのように、デフレ克服のため、大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっています」という発言の真意を問いただしました。今の日銀の異常とも言える政策をいつまで続けるのか。まさに日本の国益にかかわる問題であり,待ってました,という質問です。これに対する黒田総裁の答えは,「物価安定の目標の実現に向けてまずは現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくということが必要である。今、更に追加的な措置をとるという必要はないだろう。今の金融緩和措置を粘り強く続けていくということが必要」というもの。さすがに追加措置があり得ないのは当然で,出口戦略について相変わらず口を閉ざされたままでした。

 また,マイナス金利の幅を縮小することも尋ねられましたが,黒田総裁はこれにも否定的。すると続けて,地方金融機関の運用難による経営悪化について尋ねられ,この辺は大変良い流れで日銀の政策の問題点をつまびらかにされました。黒田総裁は,経営環境というもの自体については十分注意していく必要がある,と答えたにとどまりましたが,問題意識が共有されたということでこの点に関する質問は終了。森友問題などでの細かい論点を鋭く追及されること以上に,日本全体の将来に取り返しのつかない禍根を残しかねない日銀の政策について,今後も追及されることを切に望みます。

 質問は,さらに物価目標2%達成可能か,というそもそも論に。私は個人的には2%は言っているだけ,異次元緩和政策の本質は,金融(金利)抑圧と財政ファイナンスとみていますが,2%に上がったときは日銀ひいては日本に危機が訪れる時かもしれません。

 その後,麻生大臣失言,財務省不祥事の責任の取り方,森友の試掘の深さ問題と続きました。結局,この問題の行き着く先はどこなのでしょうか。

 

 次は国民民主党の緑川議員。麻生大臣失言を最初に取り上げられた後,増税と減税がセットで進められてきたのが過去の基本であったとの質問。純粋な増税を行い,その分サービス改善をしたらどうか,との問題提起でした。

 しかし,今の財政状況-プライマリーバランスの大幅赤字-を考えれば,増税はその穴埋めであり,サービス改善に回る余地はないように思われます。星野参考人もこの趣旨での答弁でした。

 幾つか続けられた質問の中で,日本だけでなく世界で経済成長が頭打ちとなる中での経済成長の意味,を尋ねたことに対する麻生大臣の答えが,いかにも麻生大臣らしく率直で面白いものでした。人口減の中で,経済が1割くらい伸びたが,労働分配率は,自分が経営者だったころは77~78%くらいあった。今は66~67%まで低回している。どうして企業収益が増えるなかで 労働分配率が下がるのか。社会主義ではないので企業の中に手を突っ込んで言うことまでできないが。企業収益の伸びに比べて設備投資とか人件費の伸びがかなり低いのが最近の傾向,というものでした。私が野党側の無所属議員でありながら麻生大臣を評価しているのは,こういう率直なやり取りをされるのはおそらくは今の政府でこの方しかおられない,と思うからです。

 

 次は国民民主党入りされた前原議員。やはり麻生大臣失言問題を聞かれた後,消費税率上げの延期はないのか,という質問。財政規律を守る社会保障・税の一体改革を推し進めた当事者の観点からのものでした。麻生大臣は,財務大臣らしく,過去二度の延期は自分の本意ではなかった,今回はやらせてもらう,という明確な答弁をされました。

 続けて,軽減税率はどうしても納得いかない,との質問。逆進性の緩和にならないし,その分税収に1兆円穴があく,給付付税額控除で一定所得以下の方には戻した方が,政策として優れているのでは,とのもっともな質問です。麻生大臣は,給付付税額控除は,軽減税率と比較して線引きが難しいとの答弁。前原議員は,さらに、ポピュリズムに流され過ぎずに、将来の責任も含めてしっかりと、今の借金や将来の人口減からすれば10%をさらに上回る増税があるということは国民は薄々わかっている,との実直な指摘をされ,その将来に備えて財務大臣が「痛税感」という言葉を安易に使わない方が良い,という堂々とした議論をなされました。こういった質問を受けたときの麻生大臣は正直に納得されたような顔をされるのも,実はあまり知られていないところです。

 

 共産党の宮本議員。共麻生大臣の失言問題は節度を持たれて冒頭指摘するにとどめられ、官公庁における障害者雇用の水増し問題を質問されました。続けて障害者の雇用は非常勤が多いので、常勤雇用や無期雇用への転換の仕組みを設けるべきだ、と続けられました。政府側の答弁は、十分認識しており、検討をしていきたい、とのこと。地道に現実化していただきたいところです。

 そして、消費税10%増税問題。消費への罰金の側面を有する消費税増税は、消費の低迷・国民の貧困化を加速させる、所得税の累進課税強化や法人税率引き上げを図るべきでは。との質問。麻生大臣は、GDPや企業収益は過去最高、有効求人倍率や高く、失業率は2.2%の低水準、賃金も2%の高水準アップが5年続いているし、今回は前の3%ではなく、2%の税率上げ。反動減には低所得者層への支援措置をする、というものでした。

 この問題についての私見を述べさせていただけば、日本のGDP上昇は、円安によって水増しされたものであり、世界標準のドル建てで考えれば実質は減少、しかも欧米はかなり順調に上昇しているのに、です。政府の現状認識は甘いと指摘せざるをえません。

 増税対策としてのキャッシュレスのポイント還元は中小業者を困らせるだけでは、という指摘はまったく同感でした。

 最後にコンビニのイートイン問題。持ち帰るといって軽減税率を適用されたお客が店内で食べだした場合にお店が2%の支払いを求めなくていいのか、という質問でした。ありうるような気もしますが、政府側がその必要はない、と答えたことにそれは正直者がばかを見るという税制にならないか、と結ばれましたが、若干牽強付会の感を覚えました。

【国会報告】財務金融委員会(前編)

 11月20日、財務金融委員会が行われました。この日は一般質疑でした。

 今回のリポートは、野田元総理と麻生大臣の間で大変重要な質疑が行われた関係で、前後半2回に分けてお送りします。まずは、順番を変えてその野田元総理(無所属の会)の質問からご紹介します。

 まずは、冒頭から国際情勢の緊迫化について真っ向から迫られました。米中間の対立激化により、APECが4半世紀の歴史上初めて首脳宣言がまとめられなかったこと、間もなく始まるG20も踏まえ、大臣の所感を尋ねられました。麻生大臣の答えは、 海外の金融、経済、財政関係の方の来日数が多く、政権が安定しているおかげで経済政策もうまくやっている、金融、金利、為替も安定で、多くの問題で日本は非常に頼りにされているというものでした。

 この後、ペンス副大統領来日時になぜ麻生副総理財務大臣と会談して経済対話をしなかったのか、と残念がるような質問。先の国会での財金での質問では大臣に辞任勧奨までされていましたが、野田さんもやはり麻生大臣の実力を十分評価しておられるようです。

 そして、2025年度プライマリーバランス黒字化のこと。まずは5年先延ばしになってしまった理由を改めて尋ねられました。麻生大臣の答えは、世界経済の成長が去年特に下がったこともあって、税収の伸びが落ちたこと、また、消費増税が前提であったが、それを延ばすという経済判断をされたので、全体として税収の伸びがそれだけ伸びないため、2020年までに達成できなかった。ただし、その前までの3年間は少なくともきちっと半分にしますというのが、それなりの方向に進んでいる、今後とも、このプライマリーバランスを大事にするということは、マーケットの中にある国際市場等々を考えたときに大事なところだ、と答えられました。この答弁について、私は、アベノミクスで経済の好循環が進んでいる、という安倍総理の持論と矛盾するものですし、消費増税延期は麻生大臣の判断ではなく安倍総理の判断であったのは確かでしょうが、他人事のような言いぶりはどうか、と残念に感じました。ただし、マーケットの国際市場とは、おそらくは日本国債や円の信用問題のこと。財政均衡の目途が立たないということになれば国債は暴落、円は際限ない円安という大変な事態にもなりうる、ということを示唆されたのでしょう。ここは全く同感です。

 麻生大臣は続けて、2025年と言っているのは、「団塊の世代がいわゆる後期高齢者というところになってこられますので、そういった意味では、この段階までにきちんとやっておく必要があるのではないかというのが率直な実感でして、それまでにぜひともやり上げたいということを思っておる」と答えられましたが、ぜひ有言実行を期待したいところです。

野田さんは、この答弁を受けて、世界経済の落ち込みや消費税の二度の延期もそうだが、累次の補正予算が、プライマリーバランス黒字化の遅れの原因ではないか、と指摘されました。立憲民主党や国民民主党、共産党などの野党も、補正予算にはもろ手を挙げて賛成のようですが、野田さんの質問によれば、第二次安倍政権になってから黒字の補正予算を過去9回組んで30兆円の追加支出をしており、消費税の使途変更より大きいとのこと。これは放漫財政になりかねないので、十分御注意を、と述べられました。

これに対して麻生大臣は、補正が非常に影響したという指摘はそれなりに拝聴せねばいかぬところだと率直な答弁。

続けて、まさに財務金融委員会の本質にも関わる来年度の予算編成についての質問。きちっと財政健全化の道筋をたどっていくスタートとなるのか、そうではない放漫財政に陥るのか、まさに正念場。ただし、歳出拡大の要因・圧力が今回いっぱいある。例えば安保情勢を考えると、防衛費。 何度も自然災害で大きな被害が出ているので 防災・減災対策は大き歳出拡大要因。一番大きいのは、やはり社会保障費。2016から2018年というのは、3年で自然増を一兆五千億円で抑える、年で数えると五千億という目安があったが、今回目安もないで。そういう歳出拡大圧力が多くある中で、2025年度のプライマリーバランス黒字化に向けて確かに歩んでいくというのは大変なこと。加えて消費税引上げ対策のばらまきも歳出膨張圧力。 そのほかに、今回の消費税の使途変更にかかわる新しい政策の幼児教育の無償化などは従来と別枠という話も。などすると、間違いなく史上最高 の百兆円台の当初予算になる。 それで本当に2025年度のPBの黒字化なん ということが現実的に考えられるかどうか非常に難しい予算編成だと思うが御決意は、というまさに現実を見据えた質問でした。

麻生大臣は、今回の社会保障関係費については、実質的な増加というものを高齢化による増加分に相当する伸び内におさめる。また、非社会保障関係費についても、これまでの歳出改革の取組というのを継続する、地方の歳出は、一般財源の総額については、2018年と実質的に同水準を確保するという歳出方針を骨太方針2018で示している。来年度の予算編成 に当たって、2025年PB黒字化の初年度に当たるので、非常に大事なところで、基礎的財政収支の黒字化達成がきちんとした方向に行っているということを示す意味でも、基本的なラインをきちんと守って、その上で、防衛費等々いろいろな多くの問題を私ども抱えてお りますので、そういったものを含めまて、歳出が緩んだ結果とおかしなことにならないように、最大の努力をしてまいりたいと思っております、と正面から答えられました。

 

今年度は、まさに、これから数十年の日本の命運を決めていくスタートです。若い世代に誹りを受けることのないよう、今を生きる我々は今年度の予算編成をきちんと注視していきたいと思います。

 

【国会報告】漁業法改正に関する代表質問

 先日(H30.11.15)の衆議院本会議では、漁業法改正案に関する代表質問が行われました。一見地味にも見える改正案ですが、日本の漁業の在り方をかなり変えていく可能性がある法案です。

 日本の農業の衰退は話題にのぼることもありますが、漁業についてはマスコミもあまり注目していません。しかし、世界的には漁業生産量が伸びている中、日本の漁業生産量は、1984年の1282万トンをピークとして、2017年には430万トンと、なんと3分の1近くに減っています。漁業者の数も14万人であり、決して多いとはいえない状況です。

 このような状況からしてみれば、何かを変えていかなければならないことは事実でしょう。

 今回の改正案は、漁業権の存続期間終了後,地元漁業者が漁場を「適切かつ有効に活用」している場合は、従前通り漁業権を付与する。そうでない場合は、企業を含めて最も発展に寄与するものに付与する、とするもので、今までの法定の優先順位(簡単に言えば既存の漁業者の既得権)は廃止する、というものです。このほかにも,資源管理について,資源評価を行って期間中に取れる数量の最高限度を定め,これを船舶毎に割り当てるなどの制度が整備,遠洋・沖合漁業の漁船の大型化についても改正案に盛り込まれました。改正案を提出した政府与党の狙いは、「漁業権」に縛られた現状に新規参入の余地を与え、企業を中心として生産性の向上を図ろう、としたものです。

 

 日本においては、「保守」と「革新」がねじれている、というのが作家の橘怜氏の指摘ですが、この法案を巡る審議でもその傾向ははっきりと現れていました。

 

 自民党細田健一議員からは,「世界の漁業生産量が三十年間で二倍以上に拡大する中、かつては世界第一位だった我が国の生産量は、ピーク時の約三分の一にまで減少をしていること,世界では養殖業が急拡大し、養殖による生産量が漁業生産量と拮抗する規模になっている一方で、我が国の養殖業は水産業全体の二割の生産量しかない現状を打破する必要がある」,との指摘がなされました。

 確かに,先日BSの世界のニュースでも,ノルウェーでの極めて先進的・近代的かつ大規模なサケの養殖の様子が紹介されて,彼我の違いに驚いたことがありました。日本の漁業も改革が迫られています。

 細田議員は,続けて,「漁業者の減少に歯どめがかからず、高齢化も進んでいる」とも述べました。これも漁業に限らず,日本の中小規模の産業に共通した課題です。細田議員がいうように,「十年後、二十年後の我が国の水産業のあるべき姿をどのように捉えているのか」という視点は欠かせないものでしょう。

 質問の要所は,「沿岸、養殖漁業にかかわる海面利用制度の見直し」に伴い,「漁業協同組合の位置づけや役割はどうなるのか、漁業権付与の優先順位の廃止により、浜の現場が混乱するのではないか」というものでした。

 これに対する吉川農水大臣の答えは「漁業者の減少、高齢化が進む中で、地域によっては漁場の利用の程度が低くなっているところもあり、今後、どのように沿岸漁場の管理や活用を図って地域の維持、活性化につなげていくかが課題となっています。このため、本法律案においては、法律で詳細かつ全国一律に漁業権免許の優先順位を定める仕組みを改め、漁場を適切かつ有効に利用している漁業者や漁協については、将来に向けて安心して漁業に取り組んでいただけるよう、優先して免許する仕組みとしたところです。その上で、利用の程度が低くなっている漁場については、地域の実情に即して水産業の発展に寄与する者に免許するなど、水面の総合利用を進めることとしています。

 こうした改正は、漁協や漁業者の経営の安定化、新たな投資等による経営の発展に向けたインセンティブとなるとともに、漁業者に将来への展望を示し、地域の創意工夫を生かした浜の活性化につながるものと考えています。」というもので,ほとんど答えになっていません。入管法改正の議論でもそうでしたが,政府側答弁は,質問をはぐらかすものが多く,与党議員の質問に対してさえこの有り様です。この答弁で素通りしてしまうところに今の国会の病床の深さを感じざるを得ません。

 

 続いて立憲民主党神谷裕議員。「今回の制度改正はいわゆる官邸主導、安倍総理のもとに置かれている規制改革推進会議の、~,漁業については全く素人で構成する水産ワーキング・グループにおいて」、昨年九月からスタートした検討で、「「水産政策の改革の方向性」が提示され、本年六月には、政府の農林水産業・地域の活力創造プランの中に水産政策の改革について位置づけられ、そのわずか五カ月後の十一月六日に、漁業者、漁業現場の声を聞かないまま、本案が国会に提出されたもの」との指摘。

 規制改革においては既存従事者や既得権益者の声を聞いていては思い切ったものは出来ませんが,それにしても拙速との指摘は正当でしょう。

 質問としては,「なぜ決定までにきちんと水産関係者の意向を聞いてこなかったのか」というものでした。これに対する農水大臣の答えは「これまで、水産政策審議会、地方説明会などさまざまな機会を通じて、漁協や漁業関係者等との意見交換を行っており、法案の内容についても、漁業者の全国団体の理解をいただいている」というものでした。

 質問者は,改正案策定の過程を尋ねたのに対し,策定後に意見交換して理解を得た,というこれもはぐらかした答弁でした。

 また,「船舶等ごとに漁獲割当てを行うとともに、漁獲割当量の譲渡を行うことができる」という制度では,「漁業許可が個人所有的なものへと既得権化し、漁獲割当量が資金力のある経営体に買い上げられ、特定の経営体に集中し、沿岸、沖合等の漁業資源や漁業現場に大きな影響を及ぼすことが必至」で「水産資源の実情や漁業秩序に合わない」との質問もありました。これに対する回答は「実質的な活動内容に着目し、漁場を適切かつ有効に利用している漁業権者に優先して免許するとともに、未利用の漁場等については地域の水産業の発展に寄与する者に免許する仕組みに改めることとしております。これにより、地域の漁業に支障を及ぼす者に免許される事態を防ぐことが可能となるため、地域の漁業、漁村が果たしてきた機能が根本から失われるといった事態を招くことはないと考えております。」というもので,やはり正面から問いに答えるものではありませんでした。

 

 国民民主党の緑川議員。地元秋田の紹介から始まりました。この手の話は全国民の代表者としての立場と、地方の声を国政に届けるという立場の緊張関係を踏まえることが必要です。その後、種子法、私有林の管理に続いて、漁業も官邸主導で大きな変化がもたらされようとしていることへの警戒感が述べられました。

 質問としては、資源管理の方式として、「MSY、最大持続生産量と呼ばれる、漁獲資源量の自然回復力を踏まえた最適な資源量を基準とする方式へ今変更する」理由、「漁獲割当て量を他者に移転することは船舶を譲渡した場合などにしか認められていないが、当の船舶の譲渡自体には制限がないため、船舶を買い集めたものによってその地域の漁業権が寡占化しないか」、さらには「既存の漁業権者が権利を継続する前提にある、漁場を適切かつ有効に活用しているという条文について、具体的にはどのような状態を指すのか、これでは白紙同然の法案であり、何らかの判断基準を国として示すお考えはあるのか」という質問がなされました。最後の問題提起は、入管法改正案とも共通するところで、三権分立の建前からいっても大きな問題です。

 これらに対する農水大臣の答えは、「現行の資源管理法においても、漁業可能量の設定に当たっては、MSYを実現できる水準に資源を維持し又は回復させることを目的とすべきと定められております。今回の法改正においては、より確実にこの実現を図るため、目標管理基準等を導入することとしています。」「本法案では、船舶等とともに設定された漁獲割当てを譲り渡す場合等であって、農林水産大臣や都道府県知事の認可を受けたときに限り、漁獲割当ての移転をすることができることとしたところです。また、このような船舶の譲渡が行われる場合、漁業の許可の承継についても農林水産大臣や都道府県知事の許可を受ける必要がありますが、本法案では、許可の不当な集中に至るおそれがある場合には、この許可をしてはならないこととしています。」と、最初の2つの質問については珍しく噛み合った答弁でした。しかし、肝心の「地域の水産業の発展に最も寄与すると認められる者の判断基準について」の答えは「地域の水産業の発展に最も寄与するとの判断は、例えば、漁業生産がふえて、地域の漁業者の所得向上につながる、地元の雇用創出や就業者の増加につながるなど、地域の水産業の発展に寄与する度合いによって判断されることとなりますが、地域の実情に応じて総合的に行われるものと考えております。実際には、各地域のさまざまな条件のもとで多様な漁場の活用実態があり、地域の漁業に精通する都道府県が実態に即して判断することとなりますが、都道府県によって判断の基準が大きく異なることがないようにする観点から、国が技術的な助言として考え方を示していくこととしました。」というもので、およそ客観的判断基準を読み取ることはできないものでした。

 

 無所属の会の金子議員は「まるで、現在の漁業、水産業は効率が悪いので、効率重視の大資本にお願いし、漁業を再生していただき、成長産業にしたいと言っているようです。」「水産改革の重要な方向性は、漁業者、漁村、地域社会を守ることであるべきです。」と冒頭述べられました。生産性の向上と、既存漁業者の保護、これは本当に対立関係にあるのでしょうか。両者は緊張関係を孕みつつ、改革をし続けていかなければならないのが今の自由貿易・自由経済社会ではないでしょうか。質問は、漁業権の継続に関する判断基準と新たな漁業権の設定についてでした。これに対する農水大臣の答えは「適正かつ有効に活用している場合とは、漁場の環境に適合するように資源管理や養殖生産を行い、将来にわたり持続的に漁業生産力を高めるように漁場を活用していける状況と考えております。具体的には、個々の事案ごとに、地域の漁業に精通する都道府県知事が実態に即して判断することとなりますが、都道府県によって判断の基準が大きく異なることがないようにする観点から、国が技術的助言を定め、適切かつ有効の考え方を示していく考え方です。」「法律案においては、都道府県知事が、漁業を営む者等の利害関係者の意見を聞いて検討を加え、その結果を踏まえて海区漁場計画案を策定しなければならないこととしています。また、計画については、海面の総合的な利用を推進するとともに、それぞれの漁業権が漁業調整その他公益に支障を及ぼさないように設定されなければならないこととしています。新たな漁業者との設定に当たっても、周辺で操業する他の漁業への影響を考慮した上で判断がなされるものと考えております。」というもので、先と同じく具体的中身は読み取れないものでした。

 

 共産党は、田村議員。漁業権を知事が企業に与えることを可能とすることや、漁獲量の正確な把握は可能か、漁獲割り当ての仕組みについての質問がありました。ただ、すべての変革に反対という立場が色濃いものであり、先の橘氏の指摘通り左翼が実は保守という側面を感じました。

 

 維新は、森議員。入管法改正案が成立した場合の対象業種に漁業が含まれていることが漁業の生産性向上を目指した本法案と矛盾しないか、という他党にはない観点からの質問があり、面白い視点だなと感じさせました。

 

 総じて、農水大臣の答えが質問に対して正面から答えていない感が強く、残念ながら物足りない質疑と言わざるを得ません。民主主義の基本の一つは討論にあります。政府もその点は今一度認識すべきでしょう。

 

【国会報告】入管法の趣旨説明と質疑が行われました

 昨日(2018年11月13日),衆議院本会議が開かれ,出入国管理法改正案に関する与野党の質疑が行われました。国会,特に本会議における法案の質疑は,言いっ放し・答えっ放しとなることが多く,また,肝心の法案ではないことに対する質問が質問時間の大半を占めたりするので,議論としては物足りないことが多いのですが,昨日は与野党共にこの法案の質疑に集中しており,充実したものでした。

 まず最初にこの法案について簡単に説明しますと,これは実質的な「移民受け入れ法」です。
 人材不足の業種において,相当な知識や経験を必要とする技能を要する業務に従事する「特定技能1号」,熟練した技能を要する業務に従事する「特定技能2号」という在留資格を設けます。1号は,在留資格は5年を限度,家族の帯同を認めない,とされています。つまり,2号は,5年毎に更新可能で家族を同行して日本に住まわせることも可能な訳です。また,1号も,一定の試験に合格することで2号に移行可能とされています。つまり,延長を繰り返せば永続的に日本に家族と共に住むことが可能になるのです。しかも,この日の質疑でも取り上げられましたが,永住許可にあたっては10年以上の継続在留が要件とされていますから,最初の5年が1回更新されれば,事実上永住権を得るための資格を得ることができるのです。

 話を少し戻します。現状においては,外国人労働者の受け入れに関し,建前上は「鎖国政策」を維持しながらも現実には「技能実習」(ちょっと前は研修生)という姑息な制度を設け,外国人の方を低賃金で長時間労働させるという奴隷労働のようなやり方をとっており,国内だけでなく国際的にも強い批判が寄せられています。また,日本国内では労働力需要が高まる一方ですが,今の制度では誰も日本での労働に魅力を感じなくなり,日本で働こうとする外国人はいなくなるでしょう。
 こういったことから,唐突に臨時国会に上程されたのがこの出入国管理法改正案でした。
 私は,今の技能実習制度への疑問(廃止されるべきです)や,明治から昭和にかけてハワイやブラジル,満州,台湾に多くの日本人がチャンスを求めて移民していったという近代の歴史,それにそもそも全ての人類がアフリカからの移民であるという人類史に照らせば,正面から移民を受け入れるべきだと考えています。
 したがって,本当であればこの出入国管理法改正案に賛成したいところですが,残念ながら今回の法案には大きな欠陥があります。それは,法案の中身が「がらんどう」で,ほとんど全てを省令で決めることとしていることです。次の問題は,先にお示ししたとおり,事実上の移民,しかも永住権を持つ移民に大きく門戸を開く法案でありながら,労働力が不足している分野において,専門性や特別な技能を持つ外国人の方に一定期間の在留資格を認めるに過ぎない,と詭弁を弄した説明が行われている点です。これは安保法制や憲法9条改正論議でも行われている,安倍政権独特のやり口です。「衣の下に鎧」な訳です。3つ目は,当然起こるであろう,日本人労働者とのバッティングの問題,また日本人労働者の賃金水準の低下を招くであろうことについて,正面からの議論を避けている点です。

 さて,前置きが長くなりましたが,この日の質疑をハイライトでご紹介いたします。

  トップバッターの自民党田所議員の質問は,上記問題点について,懸念を払拭させるという観点からでしょうが,野党議員かと思うような質問がなされました。誰もが聞きたい,①「単純労働者の受け入れ」とどう異なるのか,というのが最初の質問でした。これに対する安倍総理の答えは,「今回、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお労働力が不足する分野に限り、一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れることとしたものであります。これは、現行の専門的、技術的分野における外国人受入れ制度を拡充したものであり、従来の基本方針を変更するものではありません」というものであり,正面からの答えはありませんでした。どのような事実をもって「一定の専門性,技能を有し」ているとみるのか,何をもって「即戦力」というのか,あまりに曖昧です。どんな職業でも「一定の専門性,技能」は必要なのですから。この後,②受け入れ見込み数についての質問がなされましたが,安倍総理の答えは,「現在精査中。近日中に初年度と当初5年間の見込み数を出す」。常識的に考えれば,法案審議にもっとも必要な情報のうちの一つである「見込み数」すら国会審議の席上で出せないような状態で,このような法案を上程すべきではなかったでしょう。このあと,法務大臣に対し,③日本人の雇用を奪うことにならないか,④「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」とは何か,⑤在留期間の更新が可能となるため,永住者になるのではないか,⑥社会保障への影響,⑦「移民」受け入れに当たらないのか,とまさに率直かつ具体的な質問が続きました。
 法務大臣の答弁は,③「日本人雇用との競合」,については,所管官庁が適切に把握して受け入れ停止措置を講じる,との答えでしたが,それでは単なる雇用の調整弁を外国人労働者に担わせるだけです。技能実習制度と同じく,あまりにご都合主義でしょう。④「技能とは何か」については,具体的な答えはなく「相当期間の実務経験」「日本語はある程度の日常会話」「業種に応じて面接」など抽象的なものばかりでした。⑤「永住権」とのからみでは,まさに正面からの答えはなく,法に定められた観点から審査する,という木で鼻をくくったような答えでした。⑥社会保障への影響については,主に不正防止の観点からの答えにとどまりました。⑦「移民ではないか」については,「政府としては、例えば、国民の人口に比して、一定程度のスケールの外国人及びその家族を、期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持しておこうという政策をとることは考えていません。」と斜め横からの答え。移民政策を問うているのではなく,移民にあたるか否かが問われているのですが。逆に言えば,政府の移民の定義は「「国民の人口に比して、一定程度のスケールの外国人及びその家族を、期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持しておこうという政策」によって受け入れる外国人及びその家族」ということなのでしょう。

 次は,立憲民主党の山尾議員。この方の質問はいつも中々キレがあり,楽しみにしています。この日もスイスの小説家の「我々が欲しかったのは労働者だが,来たのは人間だった」という,まさに言い得て妙,な言葉の紹介から始まり,①技能実習の問題点(最低賃金以下,失踪者が失踪せざるを得なかった事情を記した聞き取り調査票の公開),②移民の定義と移民政策,③在留期間の更新と10年を要件とする永住許可との関係,④単純労働との違い,⑤受け入れ業種(現在14業種)選定の透明性と公正性,⑤受け入れ見込み数,⑥日本人の賃金水準への影響,⑦社会保障への影響,⑧家族まで帯同させながら景気の調整弁とするつもりか,などが続きました。
 その答えは,安倍総理,法務大臣共に先に紹介した自民党議員への答弁のオウム返しであり,全体的に「話を逸らしている」というしかない答弁でした。

 国民民主党の階議員の質問は,「骨皮だけの筋なし法案」との皮肉に始まりましたが,「本法案が肝心な部分を法務省令に白紙委任し,法案成立後に法務省が実質的な立法権を行使しようとすることは,国会を唯一の立法機関とする憲法41条に照らしてみても問題です」との指摘がなされました。なるほど,と頷かされました。仰るとおり。
 また,「外国人を単なる労働力として扱うのではなく同じ人間として扱い,日本人として共生して地域社会になじんでいける体制を整える必要があり」そうでなければ「日本人と外国人との間に心理的,物理的な障壁ができ,国民の不安と不満が高まりかね」ず,「将来的には日本の経済界がいくら望んでも外国人の側が日本で働くことを選択しなくなる時代が来るかもしれません。」という指摘は全く同感でした。
 そのほか,①骨太方針に示された,前提条件となる生産性向上や国内人材確保のための取り組みがなされているのか,②技能実習生の声を聞かないのか,などの技能実習制度とからめた質問,③転職の自由により地方の人手不足が解消しないのでは,などの質問がなされ,独特の切り口を感じました。
 そして,①②に関し,再質問,再々質問がなされましたが,総理の答弁は「業界ごとに異なり,法律で定めることはできない」,「所管の法務省で行う」などといったものでした。

 公明党の濱地議員の質問は,公明党らしく,細かい論点を押さえていく,というものでした。①なぜ来年4月から受け入れ拡大するのか,②国内人材の就労・処遇改善策,③受け入れ業種の検討状況,その判断指標は何か,④10年の永住要件と5年就労資格との関係,⑤悪質ブローカー排除と就労先倒産などの場合の支援,⑥雇用形態として派遣を認める分野,⑦技能実習生の失踪問題,⑧1号外国人に家族帯同を認めないことの人道的問題,⑧新たに創設される出入国在留管理庁,⑨地方公共団体への支援,を取り上げました。
 質問を聞いていて答弁で何が出てくるのか,と期待したのが,①,③,⑥でした。
①なぜ来年4月か,についての安倍総理の答えは「人手不足が深刻な状況」でした。このあたり,「専門性,技術力を有する即戦力」を受け入れるもので,単なる人手不足解消のためではない,とする建前と矛盾したのではないでしょうか。③判断指標,については有効求人倍率以外には示されませんでした。⑥派遣を認める分野,については「派遣形態が真に必要不可欠な業態」との答えで,まさに「問いを持って問いに答える」で,答えにも何もなっていなかったと感じます。

 無所属の会の黒岩議員の質問も独自性があって興味深いものでした。
 法案の建て付けが,「第一段階:法案成立」,次に「第2段階:政府基本方針で,通則的な受け入れ基準,技能水準を閣議決定で定め,「第3段階:分野別運用方針を各省庁が定め」「第4段階:法務省令改正で初めて具体的な業種名やその数が決まる」となっているので,質問して何も答えられないだろう,という指摘がありました。総理や法務大臣の答えが抽象的なものにとどまっている理由を明快に説明したものでした。

 共産党藤野議員の質問も,同党らしく,技能実習生の悲惨な実態の紹介とその改善を求める指摘。1990年の入管法施行以来,在留資格を次々と追加しながら外国人労働者を技能実習生,留学生,日系人の受け入れを行ってきたが,安価な労働力として利用してきただけで,これ以上のごまかしはやめるべき,という指摘はまさに正論でした。

 維新の会の串田議員の質問は,2号の存在で外国人にのみ5年更新の有期契約が認められるので日本人の正規雇用の機会が失われないか,技能実習生の7000人以上の失踪者がなぜ見つけられないか,介護分野の労働力不足を低賃金の外国人労働力で埋めるのは,日本人労働者の環境改善を阻害するのでは,という,同党らしい観点からの質問がなされました。

 最後に総括します。政府側答弁に物足りなさが残ったものの,法案及びこれに関連した制度の内容に集中した,白熱した質問が今日の国会本会議にはありました。さらにいえば,待ったなしかつ日本の将来を大きく変えていくであろうこの課題について,政府側を問い詰めるだけではなく,「我が党はこう考える」,という正面からのぶつかり合いも今後の委員会質疑及び採決時の反対討論・賛成討論において行われることを期待したいと思います。

【国会報告】代表質問2日目を終えて

 昨日(10月30日)の代表質問は、公明党、無所属の会(野田さん岡田さんらのグループ)、共産党そして維新の会でした。この中でも,無所属の会はいつもキラリと光る質問をされるので楽しみにしていたところです。

 

 さて,ここでは実際に行われた順番とは順序を変えて、まずはその無所属の会、野田元総理の質問から紹介します。まずはジャブのように総理として未来への責任を聞かれたが、これは挨拶がわりのようなものでした。

 次はいきなり本題の財政健全化。基礎的財政収支(プライマリーバランス。国債など借金以外の収入と、国債などへの元金利払い以外の支出を比べたもの。借金しないで支出が賄えるかどうかの指標)の2020年度黒字化が5年も先送りされたことを問いただしたもので、他の与野党はこの最重要な問題に触れてもいません。触れれば「バラまき」が出来なくなるからでしょう。今の政治の無責任さの象徴です。そこは、さすがに党が不人気であったところにあえて不人気な消費税引き上げをぶち上げて解散に総理として臨んだ過去を持つ野田さんのこと,やはり覚悟が違いました。この正面からの問いに対して安倍首相は「全世代型社会保障制度への転換」を先送りの理由として答弁しました。しかし,質問とは噛み合っていません。プライマリーバランスの範囲で予算を執行するのか、背伸び(借金)して予算を組んでいくのか、先送りするか否かはこの根本的な発想の違いによるもので、そこをきちんと説明すべきだったでしょう。

 続けて日銀の異次元金融緩和の出口政策について、その時期や手法についての質問。勿論、中央銀行の独立性から考えればこれを首相に問うのはお門違いではあるのですが、現在の日銀と政府の癒着ぶり、その癒着による財政ファイナンス(日銀にお金を刷らせて支出を賄うこと)というとんでもない政策を考慮しての,いわば確信犯的質問だったのでしょう。安倍首相も中央銀行の独立性を理由にかわしました。

 続けて消費税引き上げについて。先に紹介したように、政権だけでなく事実上与党の地位を投げ打ってまで決めた3党合意による消費税引き上げ。野田さんにとって、財政健全化への想い、責任感はそれほど強かったのでしょう。この質問でも、終戦時の債務残高はGDP比200%であったのが、今年度は240%を超えていることを指摘し、その財政赤字の最大の要因が社会保障費であるからこそ、社会保障と税の一体改革が必要であると正面からの議論を持ち出されました。そして、低所得者層への逆進性対策として有効なのは軽減税率ではなく、対象を明確に絞ることのできる「給付付き税額控除」であると主張して再考を求められました。この点はまさに同感です。これに対して安倍首相は、2.9万回の説明会を延べ83万人に実施したなどと答弁されましたが、いくら説明会を開いても不合理な制度は不合理。その答えにあまり説得力は感じられませんでした。

 議員定数削減を巡っては、参院での6増は、党首討論での定数削減の約束に反したのでは、との質問に対し、安倍首相は、衆議院では削減したといきりたち、議場は騒然。安倍さんは痛いところを疲れると如実に態度に現れますが、今回の代表質問でそこまで追い込まれたのは野田さんの質問の時だけだったように思います。

 その後、日米同盟に関連し、米国のパリ協定離脱、INF(中距離核戦力全廃)条約破棄、イスラエルのエルサレム首都移転、2国間FTAについて、トランプ大統領に翻意を促す努力をしたのかと、ストレートな質問。これに対し、安倍首相は、最後の関税交渉について、やはり「言うは易し行うは難し」といきりたち、痛いところをつかれた感がありあり。

 この後、ロシア、北朝鮮、女性宮家の問題で締めくくられ、憲法改正問題が取り上げられなかったことは残念でした。是非意見をお聞きしたかったところです。

 総じていえば、まさに重量級の質問。迫力がありましたし、その内容に気持ちが込められていました。個々の政策について私とは意見が違うところはありますが、その気概は政治家として是非とも見習わなければならないと思いました。また,こういった正面からの議論こそ今の国会に必要なものだと改めて感じさせられました。

 

 公明党は公明党らしく、生活に密着したきめ細かい問題を取り上げていました。国会中継の字幕放送実現から始まり、防災、被災者支援ときてブロック塀対策。空港の防災対策や教育費の負担軽減、認知症対策。税制改革も車体課税の見直し(これを書いている10月31日のお昼に,なんとJAFが車体課税見直しを街頭で訴えていました。外郭団体も連携しての出来レースなんですね)や一人親対策から個人事業主版事業承継税制まで。連立与党の在り方として細かいところに気を配るというのはありだとは思いますが、巨大与党にピリッと辛口の意見も進言するというのは難しいのでしょうか。

 そして、消費税引き上げ。公明党は軽減税率の旗振り役でしたから、これを肯定するのは当然でしょうが、消費の反動減対策として様々な給付金やクレジットカードのポイント付与システムなどは増税による税収増を減じますし、設備投資が必要なため中小企業者に対して負担になることなど負の側面も多大にあります。これらに対する「対策」を総理に求めましたが、その対策には当然新たなる予算増が伴います。日本でも政策はよりシンプルなものにするべきでしょう。

 

 次は共産党。最初が沖縄県知事選と辺野古の埋め立てに関する国土交通大臣の埋め立て承認撤回の執行停止問題。日米地位協定にも触れられました。この問題は、国の安全保障の在り方にもかかわる大きな問題。立憲民主党の代表質問のところでも触れましたが、辺野古移転が反対は良いとして,ではその先の中長期的ビジョンをどうしていくのか。沖縄の負担軽減のためにどういう方向性を考えているのか。そこも含めて堂々たる論戦を展開していただきたいところです。

 消費税増税について、過去の税率引き上げ時に景気が冷え込んだとの指摘はそのとおり。ただ、消費税上げに頼らず財政健全化をどうやって達成するのか、その具体的なシナリオも示していただきたいところです。ポイント還元や給付金のバラマキ反対を述べられたことには強く同意します。また、富裕層と大企業への優遇税制廃止も訴えられましたが、財政健全化の見地からこれも強く賛同します。

 続けて憲法9条についての質問。憲法9条改正反対の理由として上げられたのが、①自衛隊を前にしての改憲宣言、②所信表明での言及、③世論調査では反対が多数であること。それはそうですが、あまりに手続き論すぎて、正直、迫力に欠ける反対理由です。党としてなぜ反対なのか、正面からぶつかる迫力のある議論を期待します。

 

 最後は維新の会。維新の会はあくまで維新の会らしく、消費税引き上げ反対の理由として挙げたのが行財政改革の不徹底。議員定数削減や人事院勧告に従った公務員給与引き上げ反対を述べられました。

 議員定数削減は人口減に併せて必要ですし,先の通常国会で成立した参議院議員の定数6増はまさに論外ですが,人事院勧告による公務員給与引き上げは,労働権の制約がある公務員への代償措置であって,労働者である公務員の基本的人権に関わる問題。また,最近の日本の問題点は給与所得者の給与水準が急速に劣化していることであり,公務員給与が改善されなければ民間給与もそれに引きずられてしまいます。負のスパイラルをこれ以上加速させないためにも人事院勧告は守られるべきです。

 憲法改正については,維新の会の持論である教育無償化などの観点からの賛成意見。私としては,そこを憲法で決めるべきことか否かは疑問ですが,議論を提起されること自体を否定するものではありません。

 外国人在留資格に関しては,建前ではなく「移民」をどうするかという国民的議論を,との提案。こういった正面からの問題提起は賛成です。今の政治にもっとも欠けているところですから。面白かったのはNHK受信料下げを提案されたこと。公共放送機関としての役割を整理し,スポーツ番組や娯楽番組は別の有料体系にすべき,という具体案が添えられていました。確かに,とうなずくところでした。

 

 以上で衆院での各党代表質問が終了しました。先の通常国会で行われた議論から予想されたとおりの内容でしたが,今の各党の色合いや実力というものもよく現れたものだったと思います。そういった意味ではとても参考になるものでしたが,残念ながらそういった観点からマスコミや各党から論評がなされたことは今までなかったと思います。国会議員として,有権者の皆様に果たすべき責任と受け止め,これからも国会報告を詳細かつわかりやすく続けさせていただきます。

【国会報告】代表質問がおこなわれました

   昨日、代表質問が衆院で行われました。

 

 トップバッターは、野党第一党の立憲民主党の枝野代表。最初のテーマとして持ち出されたのは予想通り前国会で追及されたモリカケ問題や防衛省の日報問題でした。賛否のあるところですが、私としては、野党第一党らしく、国の根幹について堂々たる議論をぶつけていただきたかったところでした。このところの立憲民主党の支持率低迷の原因は、率直にいって声が大きい方達の声ばかりが聞こえてしまい、サイレントマジョリティである大多数の国民の声とは違うところを向いてしまっているからなのでは、と危惧を感じています。粘り強く期待してくださっている国民も多いところですので、骨太の議論を前面に押し出してその期待に応えていただきたいと思います。

 補正予算の編成遅れや賃上げ・経済成長に関する国民の実感と続いた後、ようやく国民の主要な関心事-消費税引き上げについての質問があり,その使途(保育所の無償化)と格差拡大の観点から反対する、と述べられました。そして、逆進性対策としてのクレジットカードのポイント付与や商品券配布についての批判がなされました。逆進性対策については、中小業者にとって負担となるだけですし、まさに弥縫策、私も反対で,枝野代表に強く共感しました。ただ、消費税引き上げ反対を言うからには、三党合意をされた肝心な理由である財政均衡について,その点をどうされるのかきちんと説明されるべきだったのではないでしょうか。

 憲法改正について、総理が改正の旗手となることの法的・立憲主義的問題点を指摘されたところは、納得でした。その後いくつかの質問事項の中で私が気になったのは、外国人労働者を受け入れるための入管法改正案について。移民受け入れや研修に名を借りた外国人労働者に対する賃金差別問題について枝野党首自身はどう考えておられるのか、そこも聞きたかったところ。諸外国における一般的な定義では1年以上定住している外国人は移民なのですから。ここは正面からの議論をしていただきたいところです。ドイツのメルケル首相は、党の評判など気にすることもなく、筋を通して移民受け入れ政策を推し進めています。その政治家としての潔さこそ、これから、日本においても求められてくるところでしょう。

 最後の方で辺野古基地問題にも触れられました。その目配りはさすがですが、沖縄基地問題の中長期的ビジョンも質問の前提として、お聞きしたかったところ。

 総じて言えば、政権交代を目指す野党第一党として、逃げない議論を是非していただきたい。国民はそこをみていると感じます。

 

 次は自民党。政権与党であるため、首相の所信表明演説の礼賛となるのはある意味当然。しかし、党として注文をつける、というところは少しで良いから必要だったのではないでしょうか。質問者の稲田議員は、ペーパーを棒読みの感じで、メモだけを見て質問する昔の弁護士のようでした。肝心の中身は、最初に「五箇条の御誓文」や聖徳太子の十七条の憲法第一条を持ち出されるなど復古主義者であることを彷彿とさせるものでした。

 外交・安保問題でも、米国、中国、ロシアにはその力に配慮したかのような慎重な物言いに終始されましたが、韓国に対しては、相当程度敵対的・挑発的な内容で、対照的な印象を受けました。保守であるならば、大国に対しても臆せずモノを言う、という態度をみせて欲しかったところです。 大変問題があった「全世代型社会保障制度」と「憲法9条改正」については、先に報告させていただきましたのでそちらをご覧ください。

 

 昨日の最後は、国民民主党でした。支持率は結党当初から低いのですが、質問においては前国会においても光るところをしばしば感じていました。優秀な政策スタッフの存在があるのでしょうが、玉木氏自身の考え方や個性も当然反映されているのでしょう。今日も最初の方で「日米地位協定」そして首都圏の空域問題を取り上げ、独立国の権利を主張された辺りさすがという感じでした。

 北方領土・日ソ平和条約に関する具体的提言をされた後、憲法9条に関する対案としての改憲案と国民投票法に関しても具体的提言。前者は必ずしも賛同しませんが、後者はまさにおっしゃるとおり。

 軽減税率の問題では、タブー(?)である宅配新聞の軽減の問題も取り上げられました。インボイスの発行で中小企業者が取引から排除される懸念も頷けるところでした。コドモノミクスと名付け子ども一人1000万円の給付を提案されましたが、これは時すでに遅しの感がある上に日本社会では嫉妬がらみの批判が高まりそうです。

 入管法改正では「外国人と共生」を訴え、「同一労働同一賃金」「日本語教育の義務付け」と具体策を提示されましたが、これにはおおいに賛同します。とにかく、具体的で熱が入った面白い代表質問でした。

 日本に改革中道政党が必要なことは言われるとおり。支援団体と一定の距離を保ち、国民全体の利益に配慮した、率直な意見を今後も述べられることを期待します。

【国会報告】代表質問で露呈した安倍政権の 国民に対する虚構

 本日はいよいよ代表質問が衆院で行われた。まずは衝撃的な質問と答弁について紹介する。自民党の稲田議員が、「元気で活躍できる高齢者に「支え手」の側に回ってもらう」と質問し、安倍総理は、「年齢にかかわらず学び働く」「70歳まで就業確保」と答弁された。つまり、事実上「死ぬまで働いてください、年金はほぼ払いません」と公式に政府が表明したのである。私は、正直な言葉で政策を語るべきであり、その点が現在の政府に根本的に欠けている問題点だ、ということを述べてきた。安倍政権が提唱する「全世代型社会保障」という言葉の真の意味はここにあり、その真の姿が国民の前に姿を現しつつある。

 

 同じ問題を抱える別の重要な質問もやはり稲田議員によってなされた。憲法9条改正を巡る問題だ。「自衛隊違憲論に終止符を打つ」「防衛大臣時代に南スーダンを視察しましたが、気温50度を超える灼熱の地で黙々と道路や施設を補修する自衛隊員の姿は現地の人々や世界から賞賛されていました。」「災害において自らの危険を顧みず救助、復興作業に当たっているのも自衛隊員の皆さんです。」だから、「自衛隊を誰からも憲法違反などとは言わせない、そのためにも憲法改正は急務」と質問し、安倍総理は「総理としては答弁は差し控えるが自民党総裁として」答弁された(?)。その内容は「自衛隊が合憲という憲法学者は2割」だから、その論争に終止符を打つためだそうだ。現在の憲法学者で自衛隊を違憲という方を探すほうが難しいと思うが、自衛隊改憲論の後ろに隠されたもの―日米同盟において自衛隊を米軍の世界戦略における補完勢力とするための基盤整備として、安全保障法制と憲法改正を一体として進める―はあくまで隠しとおして物事を進めるつもりなのだ。

 私は、憲法改正の一切を認めない、という立場ではない。しかし、一国の基盤たる憲法、しかもその主要部分とされる安全保障の在り方を定めた憲法9条改正を、言葉のごまかしで進めるべきではない。正々堂々とした議論の果てに行われるべきであるし、それが「主権在民」「民主主義」の姿だ。国民を欺くようにして、国の進路を決めるべきではないのだ。