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(続)なぜCt値は統一されていないのか。

Ct値についての続き(前回の投稿も見てください)。Ct値は結局、以下の式によって変化します。

 

Ct値⇒ウイルス量×【抽出効率】×【逆転写反応効率】×【PCR効率】

 

これはRNAウイルスである新型コロナウイルスのRT-PCR検査(Reverse Transcription PCR)は

 

1 ウイルスの殻の中から試薬を使ってRNAを取り出す【抽出】

2 そのRNAに逆転写酵素入りの試薬Aを使ってcDNAを作る【逆転写反応】

3 cDNAとRNAを加熱して(検査機械)2つに分ける

 

4 試薬Bを使い、新型コロナウイルスに特有の遺伝断片を人工的に作ったプライマーとプローブをくっつける(cDNAが新型コロナ由来でなければくっつかないのでここで終わり)。

プライマーとプローブの間は酵素(DNAポリメラーゼ)の働きにより遊離ヌクレオチが取り込まれて伸長していき、cDNAと一対になる複製物(コピー)が作られる【PCR反応】

 

5 1〜4を繰り返す

 

という課程をたどるわけです。プローブに蛍光物質が仕組み、コピーが一定量に増幅されると目で見えるようになるので蛍光検出器で確認できるようになっているのがリアルタイムPCR法です。なお、冒頭述べたようにRT-PCR検査のRTはReverse Transcription(逆転写))という意味なので、リアルタイムPCR検査のことではありません。

 

この課程において使用される試薬の性能により、【抽出効率】、【逆転写効率】、【PCR反応効率】が分かれてきます。

各々、どんなに効率が良くても100%はないので、結果も良く言われる理論上の2乗の繰り返しにはならず、結構分かれてきてしまいます。

つまり、『ウイルス量が同じでも、その後の効率が何%ずつなのかで、Ct値は変わる』ということなのです。

仮にウイルス量が100だとしても、

 

100×0.8×0.5×0.7

100×0.7×0.3×0.5

では、違う結果になるのです。

 

また、加熱冷却や蛍光検出器にも性能差があり、これも結果に若干の影響を与えます。

 

だから、「機械と試薬の組み合わせで変わるCt値で線引きはできない」ということなのです。