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質疑で一歩前進。重症者を救う、都道府県境を越えた患者移送システム

昨日(5月21日)の厚労委員会、自治体の枠を越えた患者移送システム構築についてようやく一歩前進が見られた。

 

この問題、昨年来から提言してきた。緊急事態宣言などの社会的距離政策は医療システムを守るためのもの。致死率、感染率ともに過去のパンデミックを起こした感染症(ペスト、コレラ、スペイン風邪、日本における昭和初期の結核)と比較すれば強い脅威とは言えない新型コロナウイルス。しかし、重症化すると治療期間が長く2〜3週間ICU病床を占有するため、医療ひっ迫を惹き起こすところに問題点があるという、現代型の脅威だ。

 

したがって、政府のアドバイザリーボードも、緊急事態宣言等の発令要件には「医療のひっ迫度合い」を計る項目を並べいる。

逆に言えば、医療ひっ迫が起きなければ緊急事態宣言の発令や飲食業などへの自粛要請を出来るだけ行わないことが出来る。

 

また、その問題を離れてみても、感染拡大が起きやすい大都市圏(人口密度が高いが故の宿命)で感染拡大すると、日本全体では病床が余っているのに同じ日本国民が適切な治療を受けられないという事態が度々起きるのはまったくもって不合理な話。

この事態を改善するには、自治体の枠を超えた医療融通(患者移送)システムの構築がどうしても必要だ。

過去にもインフルエンザの大流行期に東京都で救急医療で長時間にわたる患者たらい回しが頻発した。これからも更なる大波が来るかもしれないし、いつまた同様もしくはもっと大規模なパンデミックが起こるかもしれない。

 

そこで、総理との4月23日厚労委員会質疑でその構築を要請したところ、総理からは

 

「医療提供体制がひっ迫する中で、都道府県の壁にこだわることなく国を挙げて対応していくべきというのは、私も同じ考え方であり、貴重な提案に感謝申し上げたいと思います。」

 

との答弁をいただいた。

憲法72条により、「内閣を代表して行政各部を指揮監督する」総理がここまでおっしゃったのだから、当然、厚労省はこの答弁に基づき具体化に向けて検討すべきだが、前回(5月19日)の厚労委員会で、田村大臣はちゃんと検討したかさえハッキリと答えずいい加減な答弁だった。しかも前提事実を幾つか間違えて(以下の答弁)。

 

①「(移送された重症患者が)大阪から滋賀で一件ありますが、これも結局また大阪に戻っている。理由はよく分からないんですが、人工呼吸器をつけたまま大阪に戻られたという話であって」

②「ドクターヘリは重症者移送にはスペースの問題がある。気圧の問題がある」

 

①については、「人工呼吸器をつけたままではなかった。気管切開していたので酸素投与(吹き流し)は受けていたが、人工呼吸器からは離脱していた。この場を借りてお詫び申し上げる。誠に申し訳ございませんでした」

補足すると、人工呼吸器から離脱することが大事で、自分で呼吸していて補助的に酸素投与されているだけということ。重症者の定義からも外れる。

②は、そもそもドクターヘリには人工呼吸器が備えられており、患者移送にも使われている。さらに、自衛隊にはドクターヘリの2〜8倍の輸送人員の中・大型ヘリとヘリ搭載可能な人工呼吸器がある。それだけでなく、「空飛ぶICU」(機動衛生ユニット)があり、それを輸送できる輸送機がある。この点について防衛省にこの質疑で尋ねたところ

「人口呼吸器搭載可能ヘリは250機。機動衛生ユニットは小松基地に4機、これを収容可能な輸送機は全国に21機ある。この機動衛生ユニットで人工呼吸器を付けたまま患者を移送した実績は平成29年からで11件ある。」

 

つまり、日本にもコロナの重症患者を広域搬送できる物的・人的資源はきちんとあるのだ。

こういった大事な問題について、私が数日で調べられる程度の事実について調査も確認もせず、適当な思い込みだけでコロナ患者の広域搬送は出来ない、と「厚労大臣」が「国会」で正式に答弁するのは何故なのか?

広域搬送できないと思い込んでいるのか?自治体の枠を超えた移送システム構築が面倒なのか?既得権益団体や自治体間の利害調整をするのが嫌なのか。それとも現場仕事に汗を流すことは厚労省はやらないのか?大臣に尋ねた。答弁は、

 

「勉強不足で申し訳ありません。これだけあればドクターヘリ等々不備しているので防衛省からいろんなものお借りできる。一応指示はして、知事会に投げた。出したい県は沢山あるが受け手くれる県があるか、指示出している。なんの検討もしていない訳ではない。一方で、確保病床は常に空いているわけではない。自分の県のために確保している。知事会の方に投げさせていただいて検討している。」

 

この問題、フランスでは昨年3月、パンデミック発生から1ヶ月でTGVの改造までして多発州から、少ない州に重症患者を移送している。ドイツでは、国境の壁さえ越えて緊急救命機を他国に派遣して患者を受け入れている。

昨年4月、ドイツのハイコ・マース外相は

 

「友人であるイタリアのそばにいるのだから、ともに戦うしかない」

 

と述べてイタリアの患者を受け入れたのだ。こんな友人がいればどんなに頼もしいことか。

ところが、日本では、県境を一歩越えれば友人ではなくなる。ともに戦う国民ではなくなってしまうのか?大臣に尋ねた。

大臣は、

 

「確保病床ずっともっている訳ではないし、自分の県が感染が拡大したときように病床確保しているのではあるが、出す方も自分のとこが感染広がったときに受けてもらえるということなので、意向を聞きながらネットワークが組めるか投げかけを始めさせていただく」

私も少しくらい余っている程度なら言わない。しかし、重症者用病床4500あり、重症者は1500人。3千空いている。しかも圧倒的に大都市圏で感染者は多い。患者移送システムを作りさえすれば、必ず有効に機能する。

ここで、大事なことを大臣は答弁された。

 

「(病床を他県の患者のために)出せば、自分のとこが感染拡がったときに受けてもらえる」

 

助け合うことはどの都道府県にとっても必要なのだ。

「ネットワークが組めるか投げかけを始めさせていただく」という答弁があり、まずは一歩前進。

 

この大事な仕組みが実現するまで、質疑や提言を通じて努力をしていきたい。