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各国政府がリブラを恐れる本当の理由

 今朝のBSニュースでは、facebookが提唱する暗号資産Libra(リブラ)について、世界各国で懸念が広がっていると伝えている。

 表向きは過去に情報流出の既往があるfacebookへの懸念や、マネーロンダリングが挙げられているが本当だろうか。

 そのような点、特にマネーロンダリングが問題となりうるのは確かだが、それは現在の金融システムにおける法規制と同様の規制の網を整備していくことで解決は可能であろう。

 むしろ各国政府の本当の心配は、通貨発行益(シニョリッジ)が侵されることだろう。あまり聞きなれない通貨発行益という言葉だが、現在の通貨はどこの国も金兌換通貨ではないため、各国が理論上は無限定に発行しうる。紙を刷れば、価値のある通貨が打ち出の小槌のように生まれてくる、という政府にとってはおいしい仕組みだ。もちろん、通貨の信認という問題がある。やり過ぎれば通貨の信用が失われ、ハイパーインフレを招きかねないので、事実上は無限定という訳にはいかないが、最近のFRB、ECB、そして日銀などの異常な量的緩和策で通貨が大量に発行されているのをみると、各国が競って通貨安競争を繰り広げているようにも見える。NY市場の株価がもう10年も上がり続けているのをみると,通貨への信用が別の形で失われつつあるように感じる。ドルも,円も,ユーロも信頼出来ないとなれば,現物資産に行くしかないという訳だ。一昔前であれば金に向かっていたところであろうが,貴金属は皆が価値があると思えば価値があるというだけの話(実は通貨も同じだが),現代社会では保管・管理・移動の不自由さもあって,信頼を失いつつあるようにも見える。

 それに変わって登場したのが,仮想通貨と呼ばれていたビットコインなど。仮想通貨が法改正で暗号資産と名称が変わったが,まさにその名の通り,これは資産なのだ。ただ,一般からの信頼性という意味で,マイナーな感じがあったことは否めず,主流にはなってきていなかった。

 それが,Facebookだけではなく,ビザ,Uberなどの巨大企業が連合して信頼性が高い暗号資産ができれば,政府・中央銀行の恣意的な政策次第で価値が上下する通貨を上回る信用をえる可能性がある。

 そうなれば,各国政府は今と同じような中央銀行に頼った放漫な財政政策を続けることが出来なくなる。今はみんなで渡れば怖くない,で協調して量的緩和策が進められているので,主要通貨であるドル,円,ユーロのどれかが突出して通貨安が起きる,ということは生じていないが,政策によって左右されないリブラという基準が出来てしまえば,これからは量的緩和政策など放漫な財政をやっている国の通貨がすべて対リブラ安にくなってもおかしくない。

 結局,いくら通貨を増発しても事実上同じことになってしまい,増発益=通貨発行益が失われることになる。

 

 安定的な資産を求めるのは,時代の影響を避けられない個人にとって当然のこと。リブラの今後については注目していきたい。世界が,変わるかも知れないからだ。