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「受診の目安」という名の診療拒否をいつまで続けるのか

昨日、厚労省が新しい「受診の目安」を公表した。「息苦しさ、強いだるさ、高熱などの強い症状のいずれかがある」「高齢者や基礎疾患がある人で、発熱やせきなどの比較的軽い風邪症状がある」「比較的軽い風邪が続く(症状が4日以上の場合必ず)」の3項目を設定。一つでも該当すればすぐに相談してほしいとのことだ。

 

 しかし、この「目安」とやらはとてもわかりにくい。

PCR検査を受ける目安なのか、医療機関を受診する目安なのか。後者の場合、接触者・帰国者外来の受診の目安なのか、一般医療機関受診の目安なのか。

 

 厚労省はその辺りを故意にぼかしているようだ。

加藤厚労大臣の国会答弁を聞くと、国は受診制限を呼びかけている訳ではない、と言わんがばかりだ(「加藤厚労大臣の許しがたい無責任答弁」参照)。

 しかし、新しい「目安」をみても、「37.5度が4日以上」という表現が「軽い風邪以上が続く(4日以上)」と変わっただけで、まずは「相談」という点に変わりはない。そしてその相談先は、厚労省のHPをみても「保健所の相談センター」である点に変わりはない。その電話の相手が「素人の相談員」という点もまた変わりはないのだ。

 

 本来、医師法19条には「第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」という規定がある。熱がある、咳が出たという患者を一般的に診療拒否することは同条に抵触するおそれがある。だから、厚労省は診療制限という言葉を避け、「接触者・帰国者外来」の受診の目安という曖昧な言い方に終始している。

 だが本当のところは、本来整備されているべき「感染症外来」が日本には数少ないため、医療機関での医療者や他の患者への二次感染を恐れ、加藤厚労大臣流に言えば「敢えて誤解を呼ぶような表現で」できるだけ医療機関への受診を制限してきたのだ。

 しかし、誤魔化しは誤魔化し。これまでも気概と勇気を持って感染可能性がある患者を受け入れてきた医療機関もあったが、多くの患者は診療拒否に苦しんできた。それは今も続いている。これを「発熱外来難民」と呼ぶ報道もあった(YAHOO)。

 そして、耳鼻咽喉科学会などは「2週間経っても他の症状なく嗅覚や味覚が改善しない場合は耳鼻咽喉科外来を受診してください。」と信じられないような「耳鼻咽喉科からのお知らせとお願い」を正面から掲げている。

 

 以上の状況について、今までは「感染症」に対する備えが不十分というか全くない日本の一般医療機関の現実を踏まえ、やむを得ないものとして目をつぶり、口もつぐんできた。

 その理由は、法の建前やら何やらを声高に叫ぶことによって、医療機関に患者が殺到し、二次感染が多発したであろう武漢の二の舞が起きては困ると思ったことがまず一つ。

 もう一つは、医療従事者が感染することにより、医療機関がダメージを受けては、一般医療を含めて医療システムが崩壊することを懸念したこと。

 そして、医療側というか行政側の都合として、重症化して酸素吸入や人工呼吸管理が必要となるまでは、受診してPCR検査などして感染が確認されても為す術がない、という現実を踏まえて、無駄な入院を極力減らして空きベッドをなるべく確保するという現実的必要性があったことを理解していたからだ。

 

 この政府の曖昧模糊としたやり方に対し、世間一般も、細かく突き詰めないまでも漠然とその辺りを理解して、政府の方針に従順に従っていた。いかにも日本らしい有様であった。

 

 しかし、である。今は武漢でこのコロナ感染がアウトブレイクしてから既に3ヶ月も経過している。そして、医学的知見や治療も進歩し、CT所見が有用なことや、血栓症を随伴して脳梗塞など四肢を含む全身に血管の閉塞による障害を起こすことこともあることが明らかになった。

そして、軽症といわれている段階から急激に症状が悪化して自宅や路上で死亡する方も相次いでいる。

 

 一方で、こういった実態を踏まえ、今や軽症段階の方にも行うべき検査や治療があることがはっきりしてきた。

マスコミやそれに煽られたごく普通の方たちは、PCR検査が一番大事と思い込んでいる節があるが、一般の医療の手順に照らせばおかしな話。結果が出るまで時間がかかり、検体採取にも危険が伴うので実は優先度は低い。それ以外にCT検査、凝固系血液検査、パルスオキシメーターの貸し出しによるSPO2管理(呼吸状態の指標となる)に抗凝固薬投与。もう少し経てばイベルメクチンやアビガン投与も加わるかもしれない。やるべきことは幾つもあるのだ。

 

 したがって、「目安」という曖昧な「診療拒否」をいつまでも続けていてはいけない。

政府は自治体任せではなく、医療体制を大幅に拡充・改変して「必要とする方に必要とされる医療を」提供すべき時期に来ているのだ。

 

 その方が、経済を無理矢理窒息死させるような外出自粛や休業要請を継続し、それに伴う莫大な各種給付と補償を行うよりもよほど合理的だし、支出総額も安く抑えられるだろう。