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日銀の追加緩和策は大丈夫なのか?

日銀の追加緩和が本日発表された。その中にETFの買入枠を年6兆円から12兆円に拡大、が含まれている(毎日新聞)。日銀は抜き差しならない状況にあるのではないか?

ここのところNWダウを起点として,世界同時株安が続いている。NWダウは2000ドルの下落や上昇などリーマンショック時にも見なかったような、まさに乱高下を繰り返しながら下げ基調を続けている。2月中旬に付けた2万9500ドルの最高値からわずか1ヶ月で2万3000ドル(3月12日には2万1200ドル)まで下げており,2割の下落。今日も先物の様子を見ると再び大幅下落の可能性がある。ミラー相場と呼ばれていた日経平均も2月中旬の2万3000円から今日の終値で17002円と17000円台割れ寸前。

 

こんな中で,市場の動向に反して日銀は先週金曜日までの段階で3月だけでも5000億円を投じて日経平均を買い支えている(日銀HP)。

今回の追加緩和はさらにそれを拡大していくという意思表示だが,市場の下げは止まらず,今日の終値は429円安。

 

財務金融委員会では、日銀が膨大に買い入れたETFの損益分岐点が度々問題とされてきたが、直近では参議院の財務金融委員会で日銀の黒田総裁が「1万9500円程度」と回答されている。今日の終値が17000円なので既に相当の含み損を抱えていることになる。日銀の損失は元手がかかっていない(簡単に言えばお札を刷ってそれで買い入れただけ)が、これが拡大すれば日銀の信用が失われ、中央銀行への信用が失われれば、金融政策が機能不全に陥ったり、通貨への信用が失われれる恐れがある。

だから買い支えの枠を増やしたのであろうが、それは世界の投資ファンドに向かって手札を明かしたようなもの。下げ相場に対して上限12兆円で時流に逆らいますよ、と宣言したに等しいからだ。売り方からすれば上げては売り、を安心して繰り返せる訳で「下手な難平、すかんぴん」という投資の格言通りになってしまう恐れがあるのではないだろうか。

もう一つの問題点は、株式市場における価格決定機能が失われること。日本の株式の価値が不合理なものとなり、今後日銀以外には誰も日本株を買わなくなる恐れもあるだろう。

こういった問題については日銀も黒田総裁も百もご承知だろうが、だからと言って放置すれば日銀の損失は拡大する。かつ、政権運営の一つの基盤となっている株高がさらに揺らげば政権だけでなく、日銀トップつまりは黒田総裁への批判も集中することになるだろう。だからETFの買入枠を拡大せざるを得なかったのではないか?日銀はまさに抜き差しならない状況に陥ったと言える。

なお、同様に深刻なのは言うまでもなくGPIF。元手が私たちの保険料だからだ。