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PCR検査拡大に伴う課題。自宅隔離などのため法制度の整備を

ご承知のとおり安倍首相の記者会見によれば、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)へのPCR検査保険適用によって保健所を介さないPCR検査が可能となっていく見込みだ(毎日新聞2月29日、その後の釈明につき同3月3日)。それに伴う課題を指摘したい。

 

PCR検査は検査のための検体採取時にエアロゾルなどによって医師に感染の危険があるため陰圧設備や防護服などが必要で、一般に誤解されているように市井の開業医などが容易にできる検査ではないが、それでもこれからは医師の判断で設備の整っている医療施設でより多く行われるようになろう。そうなればSARS-CoV-2への感染が確認される陽性者の人数が増大することは容易に予想される。

そうした場合の最大の課題は、入院を必要としない軽症陽性例に対する取扱いだ。現在の法制度上、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は政令によって感染症法6条8項の指定感染症とされている。

このため、医学的には入院治療の必要のない陽性者かつ軽症例であっても、感染症病棟に入院隔離されている。3月10日の財務金融委員会における私の質問に対し、政府参考人(厚労省)は「基本的に、感染症法に基づく感染症指定 医療機関に入院いただき、症状に応じた適切な治 療を受けていただくこととしている」と明確に答弁された。感染症法19条による入院措置によるものであろう(7条による準用)

 

しかし、この先PCR検査拡大によって、軽症陽性例が増加すれば入院に適した感染症(隔離)病床が不足する事態も想定される。だが、重症例に対しては人工呼吸器の装着や体外式膜型人工肺(ECMO)などの対症治療が不可欠であって、感染症病床(医療資源)の確保は必要不可欠な最重要事項だ。一方で、軽症陽性例に対しては現在のところなすべき治療法はない。

よって、医療資源温存のためには軽症陽性例については、自宅や宿泊施設での経過観察を伴う隔離も検討されなければならない。

 

先の委員会における私のこの点に関する厚労省の答弁によれば「現在、二千を超える感染症病床がございますけれ ども、緊急時にはこの感染症医療機関におきます病床を最大限動員することで五千床を超える病床を確保することが可能」とのことであったが、換言すれば日本におけるキャパシティは最大5000床ということ。

イタリアで現時点で1万5000人を超す感染者が出ていることを考えれば、状況の推移によってはこれでも足りない。

したがって、限られた医療資源を重症者のために温存するためには、軽症陽性者に対する自宅隔離あるいは宿泊施設を利用した隔離についてその準備を早急に検討しておかなければならない。

法的には19条の規定は「都道府県知事は~入院させるべきことを勧告することができる」とされているため、勧告を見送れば足りるものと考えられる。しかし、実務上は、誤解を生むことのないよう、住民に対しその必要性を十分に説明することが必要となろう。できれば、自宅隔離・宿泊設備隔離に沿った勧告が可能なように法制度を整備することも望ましい。18条に就業制限はあるのだが、自宅待機には明確な規定がない。今回のような病態を法が予想してなかったためであろう。

 

また、自宅隔離・宿泊施設隔離といっても具体的な準備が要る。自宅隔離者には、食料品・日用品などの配給や健康状況のチェックなどのケア体制を整えなければならないし、宿泊施設隔離には、宿泊施設の準備や管理要員の確保が必要となるからだ。(これについては、浅香正博北海道医療大学学長も別の観点からの問題点の指摘をされている。)

 

もちろん、自宅隔離などの必要がなく流行が収束すればそれに越したことはないが、患者数が医療システムのキャパシティを超えたことによる医療崩壊によって死亡者数が増大していると推定されるイタリアの惨状(「新型コロナ「人工呼吸器が足りない」「助けられない命に涙」医療崩壊に瀕するイタリアの医師の悲痛な叫び」「[FT]イタリアに「感染の津波」、医療体制はもう限界」をみれば、その轍を日本が踏むわけにはいかない。

どの程度増大するかはまだ未知の事柄ではあるが、パンクしてから慌ててもイタリア、韓国、そして武漢の二の舞である。

 

ドイツのメルケル首相は、3月11日の記者会見で高齢者とリスク要因保持者のために医療システムを維持することを国民に強く訴え、公衆衛生制度に過重な負荷をかけないことが重要と指摘した(CNNロイターTRTなど)。

日本政府もこの点を強く意識して先手先手の対応を練っていただきたい。