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実効性のある名誉棄損対抗策を個人に。日本にも懲罰的損害賠償を

ワイドショーだけでなくマスコミの話題を一時期独占したアメフトの悪質タックル問題。NHKの朝晩のニュースで取り上げられるほどであったが,ライブドアニュース(http://news.livedoor.com/article/detail/15976578/)が伝えるところによれば,警察は,当時のマスコミの盛り上げ方とは別の結論を出したようだ。

 

当時の報道は,危険なレートタックルを行った選手を,あたかももう一人の被害者であったかのように取り上げ,逆に,彼が行ったそのタックルは指導者らの指示によるものであったとした告発を勇気ある行動としてもてはやした。そして,コーチらが行ったそのような意図はなかったとする弁明をまったく取り上げようともしなかった。

その後,傷害事件として警察による捜査が行われた。選手の主張どおりなら,選手は実行犯,コーチらは教唆犯である。しかし,警察がビデオを含めて詳しく検証した結果,選手の主張が重要な点で事実と異なり,選手のみが書類送検されたという。その理由として指摘されているのは,かなり具体的で,客観的な以下の事実だ。
「「内田氏が悪質タックルを見ていたのに選手を交代させなかった」と指摘される根拠については、内田氏の視線はボールを追っており、悪質タックルを見ていなかったことを確認。コーチ陣がインカム(ヘッドホン)を通じて反則があったことを伝えたのに内田氏が交代させなかったとも指摘されたが、内田氏はそもそもインカムを着けていなかった」(上記ライブドアニュースより)。

これに対して当時,袋叩きしたマスコミはほとんど沈黙を守ったままだ。

この事件で何もかも失ったヘッドコーチは,大学に対して解雇無効の民事訴訟を行っているようだが,勝ったとしても失われた名誉は帰って来ない。仮に民事訴訟を起こしたとしても,せいぜい300万円程度の損害賠償が一般的で,大マスコミにとっては痛くも痒くもない金額であろう。やった者勝ち,というしかない。

 

仮に,これがアメリカであったらどうであろうか。様々な名誉毀損事実を含めた報道が日本と同様に行われているが,仮に報道が事実でなかった場合,報道側に課せられるペナルティーは重い。トム・クルーズが娘や妻を巡る報道で5000万ドルの損害賠償を求めて訴訟をし,その後記事が事実ではない旨認めさせて和解したことがあった。さすがに5000万ドルともなれば十分な抑止力となった訳である。たしか,前にも損害賠償訴訟の予告だけでねつ造隠し子報道を撤回させたこともあったと記憶している。

日本でも,個人がマスコミという第三の権力に対抗しうる手段を持つためには,懲罰的損害賠償制度の制定が必須であろう。