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その医療は合理的か?検診(レントゲン検査)にまつわる疑問。

私は、財政について強い関心を持つ国会議員であると共に、医療事故訴訟の患者側代理人として第一線に立ち続けてきた。

その経験から、今の医療で国民経済からみて不可解と思われることについて書いていきたい。

まず最初は、検診の問題。日本では医療費節減の目的から、厚労省のリードの下、検診や人間ドックが盛んに行われている。医師会や大病院が、市の中心部に大規模な施設を設け、まるで工場のベルトコンベヤーかブロイラーのように受診者を効率よく流していく。それに使われている費用は、日本全体では膨大なものになるであろう。そして、それによって医療者が得ている利益も相当なものであるはずだ。

しかし、その検診に果たしてどの程度健康を守る機能があり、また医療費節減効果があるのだろうか?血圧の測定や肝機能を始めとする各種血液検査に価値があることにはあまり疑問がない(ただし、標準値の設定には大きな問題があり、議論もあるがそれはまた別の機会に譲る)。

問題は、被曝を伴う、肺や胃のレントゲン検査だ。諸外国ではこれらの検査を実施しても、受診した例としない例で予後は変わらないとの疫学的調査も報告例もあるようだ。逆にオックスフォード大学の調査では、被曝により癌が誘発されたとの報告もあったと報道されている。

私自身が弁護士業務で経験した例でも、30代の男性が2年続けて腫瘤の異常陰影を見逃されたという例があった。最初の年は約1㎝の小さな異常陰影であったが、その翌年の健診フィルムには前年とほぼ同じ場所に,今度は約5㎝もの大きさのはっきりとした円形異常陰影が写し出されていたが,見逃されたのである。その後受診者は死亡された。直径5㎝のはっきりとした円形の印影が見落とされるなど、普通はあり得ない。そこには理由がある筈だ。

裁判において、その検診では、1ロールに200人分のX線写真が巻かれており、医師は,3時間で5~8巻もの分量を見ていたとのことであった。そして,画像は1枚あたり2~3秒の速さで自動的に流れていくそうである。このようなやり方で、医師は到底集中などできないだろうし、見落としは日常茶飯事だろう。

この件につきご意見を聞いたある肺疾患の国際的権威の医師の方は、そもそも見てなかったのでは、それで見落とし事故が起きても賠償した方が安いから、と当然のように語られていた。まさに率直な実態といったところだろう。

まともにチェックされたければ、たとえば高価なPET-CTを使った検診ということになろうが、これでもやはり見落としはある。やはり数センチ単位の肺がんの見落とし事件を経験したが、その件では見落としによる放置で、PET-CT時にはなかった骨転移にまで至ってしまった。

本当にきちんとした健診を受けるには、時間をかけて専門医(放射線科医師)がトリプルチェックくらいする必要があり、実際に私が数年に一度程度利用している最先端の光学機器メーカーが運営している検診施設などはそのレベルの検診を行っているが費用は10万円を超えてしまうし、被曝量もレントゲン検査よりは格段に多くなるので集団検診として機能し得るものではないだろう。

胃のレントゲン検査でも肺レントゲン検査と同様の問題がある上に、バリウムによる副作用や台から転落して死亡する事故まで起きている。

これらの検診(レントゲン検査)には、当然利権が絡んでいるので簡単ではないであろうが、財政状況に鑑みても、あるいは国民の健康という観点からも、国が音頭をとって、大規模疫学調査を行い、要不要を判断する時期に来ているのではないか。

少なくとも、抜き打ち的に検診施設に立ち入り検査を行い、実効性のある読影が行われているかの検証を行うべきであろう。

もう一つの問題は、インフルエンザ予防接種を巡る問題。これについては、次回に。