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思いっきり住みやすい日本に作り替えよう

 私は,日本の将来に解決策がほとんど見出せないと思ってきた。

 だから,少子高齢化,財政破綻,社会保障破綻,異次元緩和などへの危惧をずっと呼びかけながらもそこにとどまっていた。だったらどうするのか,聞かれることもあったが,おいしい未来や解決策を提示することはできないでいた。以前,短時間だが,立命館大学の経済学者浜矩子さんとお話する機会があったがやはり同意見であった。

 

 しかし,市街化調整区域を新住民に提供して再活用しようという静岡県御殿場市の試み をみて,新しいビジョンが開けた。

 

 今,日本国民の1人当たりの名目GDPは,世界で25位,額では3万8448ドルである(2017年・IMF)。首位のルクセンブルクの半額以下ではあるが,フランスやイギリスとほぼ同等,決して貧しいとはいえない。だが,生活実感として自分の生活が豊かである,ゆとりがあると感じている方がどのくらいおられるのであろうか。実際,日本銀行が行っている「生活意識に関するアンケート調査」の最新版によれば生活に「ゆとりが出てきた」という方は6.4%に過ぎず,その割合は経時的にみても一桁台でほとんど変わりはない。

 では,そこそこの収入はあるのに日本人の生活実感が向上しないのはなぜか。

 その主要な理由は,土地価格が高すぎることにあるのではないだろうか。

 一般国民にとって,土地は収益や交換価値を求めて購入するものではない。土地は居住用に購入するものであって,一生に一度の買い物で,いったん購入すればそれを手放すことはない。その土地があまりに高いものであるため,せっかくの収入のかなりの部分が「住宅ローン」の支払に費やされる。それも,長い年月ー購入した後の勤労可能期間のほとんど全部に及ぶことが多い。当然,消費もその分抑制される。これでは,世界的にみて収入がそこそこであっても,実質的な豊かさは実感できない。また,せっかく手に入れた土地も狭小で,「ウサギ小屋」と揶揄されたような貧弱な住環境では生活の質も向上しない。

 土地が高いことの問題は,商業や新規起業者にも大きな影響を及ぼす。一般的に小売業や飲食店は,テナントとして賃借料の支払いが固定的にかかってくる。その負担が重すぎることが,シャッター街の原因ともなっている。また,見逃されがちだが,最近目に見えて増えている老舗の店じまいも,同じ原因だ。老舗は店舗を経営者が所有していることが多いが,後継者として親族ではない第三者が嗣ごうとしても,とても店を購入するまでの費用を考えれば採算が取れなくなる。

 

 それでは,国民の暮らしを豊かにするためには,どうすれば良いのか。答えは簡単だ。土地の価格が安くなれば暮らし向きも楽になるし,生活の質も向上する。そのためには,土地の需要を減らし,供給を増加させれば良い。需要減は放って置いてもそうなる。人口は,厚労省・総務省などの推計によれば2060年頃には9000万人を割り込み,今の人口の3/4となり,100年先には4000万人と1/3まで減少する。さらに少子化の影響で親の不動産にそのまま住む世帯が割合的に増加もするであろう。子供2人以下が標準的である現在,新たに別の土地に世帯を設けることも減る一方となり,これも需要減に繋がる。

 供給増はどうか。その答えの一つが先の御殿場市の取り組み,市街化調整区域の宅地化だ。人口が指数関数的に増大していった高度経済成長期,農地の保全や緑地の確保,という点で,市街化調整区域の存在は意義があった。しかし,今や農業人口が減少し,遊休農地が増えているのが現実だ。かつ需要減から宅地開発への規制の必要性も減少している。

 そこで,段階的に市街化調整区域を開放し,安価で広大な住宅用地を国民に供給するという政策に方向転換することに合理性が見出せるのだ。

 この政策には幾つもの副次的効果が期待できる。一つは,人口の大都市への一極集中の是正だ。安価で広々とした宅地がまとまって供給されれば,そこで子育てや人生を楽しみたいという若い世代はどんどん出てくるはずだ。また,将来の食糧危機への備えともなる。ナショナルセキュリティといえば日本では石油などのエネルギーに偏って議論されるが,真のナショナルセキュリティは食料確保だ。異常気象の相次ぐ昨今,食料の6割以上を輸入に頼る日本は,世界的な食料減産などがあればあっという間に干上がる。国民にとって本当の恐怖,「飢え」が現実化する。第2次大戦前,ブラッドランドと呼ばれたポーランドやウクライナなどで1000万人以上の住民が死亡したとされているが,その多くは餓死者だったという。しかし,ヨーロッパの近郊部でみられるような自家菜園が設けられるような広い敷地が一般化すれば,その備えともなる。生活に欠かせない食費の節減にもなり,豊かさはさらに向上する。将来の年金水準はさらに低下するであろうが,基本的な生活費さえ安ければ,衣食住は賄えるのだ。

 

 

 今の日本,これから大変な危機を迎えるであろうが,やり方次第,切り抜け方はある。これからもこういった提案を行っていきます。