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マスコミよ変われ。

 ゴーン氏の事件,検察の手法や大新聞の報道について,Facebookやツイッターで度々疑問を投げかけてきた。そもそも,オーナー企業や株式非公開会社であればともかく,日産ほどの大企業,しかも一部上場会社で,雇われ社長が背任などの犯罪を行うことはシステム的に困難だ。

 そして,当初の逮捕容疑であった有価証券報告書の虚偽記載などの形式犯で,ゴーン氏ほどの重要人物を逮捕・勾留すること自体が異例で,法適用の公平さを欠いていた。また,その実質も,会社法の規定からすれば退職後の報酬など未確定であったことは明らかだった。

 その後の特別背任容疑となった「デリバティブの損失付け替え」も,山口一臣氏の記事によれば単に報酬をドル建てで確実に受け取るための契約に過ぎず,損失は日産ではなくゴーン氏に帰属することも定められており,ゴーン氏の報酬が担保に差し出されていたとのことだ。また,朝日新聞の記事では,取締役会の承認を得なかったなどともされていたが,額からしてそんなことはあり得ないと思っていたが,やはり事前に承認を得ていたそうだ。

 こういった事実は,記者が取材で明らかに出来るはずのものであるが,おそらくは検察もしくは日産筋からのリークにそのまま乗っかって記事を書いたのであろう。私自身も情報を流す立場,流された立場で経験しているが,日本のマスコミは,独自の裏付けはほとんど取らない。弁護士,検察官,政治運動グループ,相手が誰であれ,面白そうなネタで一見信憑性がありそうであれば,それをそのまま垂れ流すのが通例だ。それをもっとも日常的に利用しているのが警察であり,検察だ。裁判の前にまず世論の流れを作るために情報をリークし,記者もそれを承知で一方的な記事を作る。無罪推定も何もない。

 これが米国などであれば,巨額の懲罰的損害賠償というペナルティがあり,トムクルーズの妻ケイティ・ホームズがスター誌を訴えた事件では,5000万ドルという巨額の賠償を行うこととなったようだ。これほどの金額であれば企業の存続さえ左右するので「裏取り」は意識されるし,危ういとなれば直ちに撤回し謝罪するなどが行われているようだが,日本ではそのような抑止力は働かない。たまに名誉毀損による損害賠償が命ぜられるときもあるが,記事から数年後にせいぜい300万円程度であるため,やった者勝ち,抑止力とはならない。

 最近の報道は,すべての方面において一方的な度合いを増しつつあり,また,各社の横並び意識の激しさから,矢面に立たされたものはまさに集中砲火を浴びて粉みじんとなる。ゴーン氏ほどのステータスがあり,しかも外国人であるが故に国際的な後押しがあればこそ,この状況にあっても反論の声は報道の受け手である国民に少しは届いているが,一般人であれば多少の地位などあってもなんの意味もない。

 厚労省の村木局長の冤罪事件は遠い過去の話ではないが,報道機関はほとんど何も学んではいないようだ。

 日本社会のあらゆる担い手は,今一度,自分の姿を見つめるべきであるが,政治家と並びマスコミは,それが求められる筆頭だ。すべての職業は,アップデートされ向上している。以前と同じ楽なやり方(リーク報道・主催者発表の垂れ流し)ではマスコミ自身の未来が閉ざされる。新聞各社の信じられないほどの部数減は,単に人口減少やネットの普及だけが理由ではない。質が低いままであることを需要者である国民に見切られていることに気づくべきだ。