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リスク管理をしよう①食料自給

 歴史的に日本ではリスク管理が行われていない。

 その最たる例が、第二次大戦における米国に対する開戦だ。当時の国力をよく表す鉄鋼生産量は日本の8倍強、GDPは5倍強であった。石油生産量に至っては738倍、到底かなう相手ではない。しかし、それでも戦争は選択された。

 少し前、北朝鮮がアメリカとチキンレースを行い、開戦前夜のような雰囲気が漂った。このとき、ほとんどの方は北朝鮮に勝ち目はない、開戦すればかの国の独裁体制が終焉するときと感じていたであろうが、当時の世界から日本を見る目はこれと同じであったであろう。チャーチルは、ドイツとの戦争勝利を確信したと伝えられている。

 

 では、その反省は現代の政治に生かされているか?答えはNOだ。

 そもそも「リスク管理」という発想すらないように思われる。

 

 そもそも国家における重要事項は何か?それは、国民を困難に直面させないことである、と私は考える。個々人ではできない備えを行うことこそ国家の重要事項なのである。国防が国家の機能として重要視されるのはその表れであろう。現代における国防とはすなわちリスク管理なのである。

 しかし、リスク管理は国防にとどまるものではなく、同等以上に重要なものが幾つか存在する。そしてそれには優先順位がある。その中でまず、最重要なものは何か?

 それは「国民を飢えさせない」ことだ。化学肥料と品種改良により農業が飛躍的に発展し、食料品の輸出入が当然となっている日本や先進国においては想像すらできないことではあるが、飢饉、そしてそれに引き続く飢餓は、現在でもアフリカや北朝鮮などの発展途上国では深刻な問題だ。最近の異常気象の頻発をみれば世界的な気候変動による食料生産の突発的な減少が起きたとしても不思議はない。その時に、食料生産国はまず輸入よりも自国への供給を優先させるであろう。そうなれば食料自給率の低い我が国は直ちに飢餓に直面することになるのだ。食料自給率の計算にはカロリーベース、生産額ベースの2とおりがあるが、ここでは飢餓との関連を論じているのでカロリーベースをみていく。感覚のとおり、日本の食料自給率は長期的に継続して低下しており、昭和40年代には7割を超えていたものが、直近の平成29年度には4割を切り38%となっている(出典:農林水産省WEBサイト http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html)。

 ナショナル・セキュリティーといえば、原子力発電に関連して「石油」のみ語られることが多いが、石油生産は埋蔵量がはっきりしている地下資源からの採掘であることから、自然的要因によって生産量が不可避的に急減することはあまり考えられない。今後も上向くことはないであろうから、むしろリスクが大きいのは食料輸入だ。仮に直ちに輸入が止まれば、単純に考えれば国民の6割は飢えに直面してしまうのだ。

 

 この飢餓リスクに対する備えとして、最も簡単なのは保存食の国家的備蓄である。石油においてはすでに計画的に行われ、国家備蓄132日分、民間備蓄92日分、産油国共同備蓄6日分計229日分が備蓄されている。これに対し、食料については、緊急事態食料安全保障指針が定められており、農水省のWEBでは、米については100万トンが適正備蓄水準、小麦は国全体として外国産食糧用小麦の需要量の2.3ヶ月分と紹介されているが、政府備蓄米は91万トン程度だ。これに対して主食米の年間需要量は減少したとはいえ750万トンあるため、91万トンでは2か月分にも満たない。

 

 そこで、以下の提言を行う。

1 米・小麦などの保存可能な主食を中心として、冷凍食品などの保存食も活用して、食料の備蓄量を1年間分程度まで増やすこと

2 農産物の自由化が進むことを踏まえ、バランスのとれた最低自給率目標を各品目ごとに定め、この分の生産については国策として確保すること

3 国民個々が自衛策を取りやすくするため、市街化調整区域の開放を段階的に進め、農家でなくとも農地を借りて耕作を行えるようにする、あるいは自給自足ができるほどの敷地をもった住居をもてるような誘導政策を進めること

4 近海漁業に関する効率化を推進する。特に養殖事業の改善に取り組むこと