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PCR検査万能は偏った見方。新しい知見を元に医療体制をシフトし、国民の負担に応える時。

ドイツでは、外出制限が緩和され、その代わり公共施設や店内でマスク着用(布でもスカーフでもよいらしい)が義務化。違反者には罰金も科されるとのこと。CDCといい、少なくとも飛沫感染拡大防止にマスクが効果があるとの見方が欧米でも広がっているよう。

日本では、義務化されなくともかなりの着用率だが、アベノマスクと揶揄された布マスク配布も始まって、さらに着用率は広がるだろう。その効果に期待したい。

 

さて、新型コロナウイルスに関する知見と対応は、マスクに対する医学的評価と同様時々刻々変わっていく。

 

最近の大きな変化といえば、無作為検査でコロナウイルスのサイレント感染が広がっているというもの。ニューヨーク市の抗体検査では21%!もの高率で市民に感染歴があったと推定されるし、慶応大学病院のコロナ以外の入院患者へのPCR検査でも6%の感染が確認されている。

 

つまり、市中にはすでに多くの感染者がいる状態という事実がはっきりしてきた。

 

もう一つの知見は、PCR検査がなくとも臨床診断しうる材料が揃ってきていることと、肺炎だけでなく血栓生成による重篤な合併症が起こり得ることがわかってきたこと。

 

CT所見で、他の原因による肺炎とは全く異なる所見が得られることは医師の方たちの間で共通した認識となっており、中国では流行時にCT所見によって臨床診断をしたと伝えられている。

また、欧米の知見として、肺炎発症前の軽症段階でも、味覚・嗅覚障害や、足先などに「コロナの爪先」と言われる赤紫の皮膚症状が出ることがあることもわかってきた。

さらに重要な問題として、血栓症を併発する患者があることで、アメリカでは脳梗塞の発症例が幾つも報告されているし、血栓が大血管を梗塞し心破裂にいたった症例まであるようだ(YAHOO

 

こういった知見にあわせて、我が国の医療的対応もそろそろ見直すべき時期に来ているのでは?

今までは、諸事情から、罹患が疑われる患者の方に−つまりは国民に−がまんを強いて来た。発熱や咳などの症状があっても4日間は診療すら自粛を強いられ自宅待機。その後もスムーズな受診などできないことは、多くの方が経験しているところ。

なぜそうなっているのか?その本音のところは、医療機関のパンクを恐れたからであり、また、医療機関での患者や医療者への二次感染を恐れたからだ。

埼玉市で保健所長がその本音を語り「厳し目にやっていた」と発言したことを市長が注意したなどということがあったが、あまりに日本的な風景であった。

 

当初は、医療機関に患者が殺到し、おそらくはそこでの感染が多発した武漢の二の舞にならないように、という意識が政府にも医療機関にも強かったのであろう。感染症外来が未整備という事情もあって、感染者について受診制限をすることを政府も医療機関も謀ったののだ。

同時に軽症者には特に治療すべき方法もなく、やることがあったとすれば確定診断のためのPCR検査だけだが、これは検査のキャパが限られている上に(横浜市のような大都市でさえ、1日に可能な検査数は4月上旬で30〜40件だったという)検体採取時に医療者に二次感染の可能性もあることから、自ずと制限せざるを得ない、という事情があった。

 

また、軽症者で数が極めて限られている感染症病棟が埋まってしまえば肝心の重症例への治療に支障が出る、という心配もされた。

 

しかし、以上の状況は現在かなり変わってきた。以下列挙すれば

・PCR検査を行わなくとも「疑い診断」をなしうる臨床症状(味覚・嗅覚障害、長引く症状、CT所見)が理解されるようになってきた。

・軽症者用隔離施設が病院外に整備され、軽症・中症者への収容能力が増してきた

・血栓症や急激な悪化による死亡例など、早期に医療の管理下に置く必要な事例の報告が増えた

・オンライン診療で医療機関における二次感染を心配しなくても良い診療方法が解禁された

・東京都などで、PCR検査センターを設けたり、自治体がドライブスルーなどのPCR検査施設を整備し始めた

・血栓症や急激な肺炎悪化の症例報告から、軽症者においても血液検査やSPO2の測定が必要となった

 

これらの状況の変化を踏まえ、かつこのコロナウイルスとの戦いが長期化することを考えれば、これまで国民に強いてきた我慢を、医療体制の整備という形で解消すべき時が来ている。

 

CTを臨床診断に活用するだけでもPCR検査の数十倍、数百倍の処理が可能となる。立憲民主党の枝野代表が今日の予算委員会でまだPCR検査に拘っていたが、臨床の実際を知らない古い考え方だ。

前記した新しい知見に基づけば、これまでのような発熱4日間のような縛りやPCR検査頼みの古い考え方はアップグレードすべき時期。

 

少なくとも各市町村に1カ所以上設けた診療所やオンライン診療で、臨床診断(臨床診断基準の整備が望まれる)や医師の指示によるPCR検査あるいはCT検査によって、症状のある感染疑い者に対し、新型コロナウイルス感染症診断(臨床診断含む)を行なって、軽症者も安心できる医療体制を整備する時。

 

安倍総理が言うようにこの戦いが「長期戦を覚悟する必要」があるとすれば、医療体制をシフトさせ、国民の安心と医療システムの維持の両立に舵を切る時が来ていることは明らかだ。