Fact を見つめよう

GoToキャンペーンを巡るゴタゴタが収まらず,久しぶりに見たワイドショーでも政府の対応に対する東京都民の批判が渦巻いていた。

ほとんど何の説明もなく,場当たり的な対応を繰り返す政府の対応には呆れて物も言えないが,それはそれとして,最近の東京都の状況を中心にFact チェックしてみた。

1.新規感染者数は,徐々に増えているのは確か。ただし,NYの3月のような指数関数的増え方ではない。下記は,新規感染者数が初めて100を超えてからの推移を両都市で比べたもの。日付はNY州の数字に合わせてあり,東京都では7月2日から19日が実際。

(Worldometerと東京都HPから数字を抽出し青山まさゆき事務所作成)

2.重症例がほとんど増えていない。

  以下は,東京都におけるその日毎の重症例(ICU等または人工呼吸器で管理)の患者数。新規患者数ではなく,その日毎の総数である。8~10名の間で推移しており,ほとんど増えていないことがわかる。重症化するまでタイムラグがあると解説する医療者の方が多いが,100名の大台を超えてから2週間以上経過するが,それに比例して増えている様子は見られない。

(東京都HPから数字を抽出し青山まさゆき事務所作成)

3.死者数も増えていない。

  以下は,東京都ではなく全国の新規死者数の推移。東京都のHPには死者数の推移が表示されていないが,全国での推移が以下の通りであるので,東京都での推移はそれ以下ということになる。

(NHK HPより数字を抽出し青山まさゆき事務所作成)

 さて,これをご覧いただいて皆さんはどう考えられるだろうか?

新規感染者の数字だけを取り出してメディアが煽り立てているのが現状。

また,それに乗っかるように日本でも重症例や死者が頻発した3月4月や,若者にも重症例や死亡例が多かったNY州などを引き合いに出して,過剰とも思える警告をされる医療者の方もいる。

ここでコロナウイルスに関する常識が2月の頃からとは一変しているのを思い起こしていただきたい。あの頃は,欧米・WHOはマスクなどなんの効果もないと笑っていたが,今は世界的に感染拡大防止に最重要なツールと位置付けられている。また,病態に対する理解も大きく変化している(今はサイトカインストーム症候群との位置付け)。そして,武漢前,武漢,欧米と時間の経過と場所によってコロナウイルスは変化し,病態もそれぞれの局面で異なる姿を見せている。

Factを見つめ,過剰な反応を控えよう。

ちなみに,海外の症例での悲惨な事例を引かれて「ただの風邪ではない」とおっしゃる方がよくいる。たしかに新型コロナウイルスは「ただの風邪」ではないが,「エボラやペスト,天然痘」でもない。現実をよくみて,冷静な議論が必要だ。

その観点から,最後に現時点でのFactに基づく提言をしたい。

医師の方から「指定感染症」におけるランクを下げてもらわないと(より柔軟な診療体制作りが)どうにもならない,という意見をよくお聞きする。軽症者への医療を充実させ,実態に即した医療体制を再構築するためにも厚労省は検討を進めるべき。