日本の社会は上手くいっているのか?安倍政権存続の秘密と将来に置かれた負の遺産

好き嫌いで評価すれば、大多数の野党支持者にとって安倍政権の評価は最低だろう。しかし、2012年12月の第2次安倍政権発足以来政権は7年目となり、その間の選挙をみれば盤石の結果を残している。

ではなぜそうなのか?そこを解明しない限り政権交代の日は訪れない。

先のブログでは、野党の側にも改善すべき点があることを指摘したが、翻って今回は安倍政権について検討してみたい。安倍政権が選挙で結果を出してきた秘密はどこにあるのだろう。

まずは、我々日本人の生活実態を見るために民間給与所得の推移を見てみる。下のグラフは国税庁の統計を基に私がグラフ化したものだ。

民間給与所得は2007年の437万円をピークとして2009年には406万円にまで下がっている。2009年といえば8月に行われた総選挙で民主党が自民党を破り、政権交代を果たした年だ。経済の好不調が選挙結果に直結することは洋の東西を問わず普遍的なもの。2007年のリーマンショックで落ち込んだ景気が2009年には底に達し、政権交代に結びついたのだ。ただし、リーマンショックに対する対応はアメリカのFRB・バーナンキ議長がQE(量的緩和)で先行して手当てをして、世界経済(というよりはアメリカなどの世界的金融会社・銀行)の壊滅的打撃を防いだ。EUがそれに続き、そこから回復傾向に向かった。どんなショックにも底はある。日本では底を這っていた時期に民主党が政権を担当し、底を打った後の回復に向かうタイミング(2012年)で登場したのが安倍政権と黒田日銀総裁であった。ただし、日本経済の回復は、正しくは横ばいであった。名目GDPの推移をアメリカはドル建て、日本は円建てで示したのが以下のグラフだ。

 

2012年ころからわずかに日本の名目GDPは伸びているが増加幅はわずか。これに対してアメリカの名目GDPは2010年には早くも回復しその後は右肩上がり、25%以上の上昇を見せている。しかも、日本の横ばいのようなわずかな回復は為替のマジックにより修飾されたもの。円安により企業業績が水増しされ、売上がかさ上げされたことによるものなのだ。そのことは下に示した基軸通貨であるドル建てのグラフを見れば一目瞭然だ。民主党政権当時の2011年に比べ、実は相当程度落ち込んだままなのだ。

日本国内からみれば安倍政権はまあまあよくやっている、国外からみれば安倍政権は日本経済の運営に失敗した、という評価となろう。

いずれにしろ、円安というカンフル剤というか点滴によってどうにか息をついているのが日本の経済であり正直な姿。アベノミクスや異次元緩和でもたらされた円安や放漫財政でも人口減少に伴って落ち込み始めた経済の凋落を止めることはできずに、どうにか現状維持がなされている程度なのだ。

 

しかし、政治に対する評価としては、現状維持であれば概ね肯定的評価がなされるところである。安倍政権が評価されているのは、円安により見かけ上の景気が維持されていること、並びに人口減少→労働人口減少→人手不足という因果による失業率の大幅低下により、庶民の暮らしが低位安定しているからなのだ。

ただし、低位安定といっても、ピーク時に比べて極端に庶民の所得などが低下したのではなく、先に示した民間給与所得のとおり国民の所得はそれでも回復傾向にあり、失業率に至っては就職氷河期の世代から見ればうらやましいくらいの状況となっている。だから、特に時代の変革の担い手である若い世代に大きな不満がたまるような状況にはなっていない。つまり野党に選挙で負けるような状況とはなっていないのだ。

では、安倍政権の実績は評価されるものであり、このまま日本を担っていくべきなのか?答えはNOだ。それも大声でNOなのだ。

安倍政権がなぜ、日本の経済を維持し、どの層に対しても不満のない政治ができているのかといえば、それは明らかに国債に大きく依存した異常な財政出動による放漫経営を行っているからだ。安倍政権支持者は、国債はいつまでたっても暴落しないと事実を軽視し、財政均衡論者を馬鹿にするが、日銀が円を発行しまくって無限に買い支えれば国債の価格は維持できる。つまり、国債暴落は日銀が買い支えを行いうる限りは起こらないのだ。むしろ起こりそうなのは通貨発行量の増大によってもたらされる円安によるコストプッシュインフレだが、これも現状は起きていない。しかし、これにも原因はある。米欧の中央銀行が共に日銀に匹敵する量的緩和を行って通貨を増発し、これを縮小していない現状(下記グラフ参照)では、日本だけが突出して通貨を水増しした形とはならないので起きていないだけなのだ。

いったんバランスシートを縮小しかけたFRBも、株価の下落でこれを中断することを表明したため、当面は現状維持が続くかもしれない。しかし、リーマンショックへの非常措置として量的緩和を行ったアメリカやEUと違い、日本は財政赤字を日銀が買い取る国債で埋めるという、麻薬のような手法(財政ファイナンス)に依存することが常態化し、感覚がマヒしてしまっている。これを本気で止めようとする気がないことは、「Bプランなき財政再建計画。本気度ゼロ?」

https://ameblo.jp/masayuki-aoyama/entry-12439569005.html

で指摘させていただいた通りだ。

そして、政治における信義誠実に反するものとしてもっとも許しがたいことは、今の放漫財政のつけを遠い将来の国民に先送りしていることだ。下に国債の償還年数別残高をグラフにして示した。これをご覧いただければおわかりのとおり、超長期国債へのシフトは進行している。我々のつけは、超長期国債(20、30、40年債)という形でどんどん子供たちに先送りされてしまっているのだ。しかも、この超長期国債へのシフトは政権にとってもう一つメリットがある。借り換え分の国債発行残高をしばらくの間は少なくできるので、見かけ上財政健全化が進んだような外形を取り繕うことができるのだ。新たな手法による財政偽装と言えるだろう。

これほど恥ずかしいことが他にあるだろうか?我々が身の丈以上の暮らしを送るためにまだ選挙権さえない子供たちに負担を先送りする。その時には安倍さんだけでなくほとんどの与党政治家も政治家を続けているどころかこの世にもいない可能性があるから、後は知らん顔しても問題はない。そんな「未来への無責任」を続けている今の安倍政治を肯定する訳にはいかないのだ。

しかし、こういった事実はマスコミでは報じられていないし、だからほとんどの国民も知らない。野党でさえ、このもっともモラルハザードな安倍政権の最大の問題点には事実上口をつぐんでおり、これを正面から問題視する政党・政治家はまだまだ少ないのが現状だ。我々政治家は、そして国民は未来への責任感を感じるべきであるし、その点をきちんと追及すべきだ。そうすれば、国民の安倍政権に対する肯定的評価はやがて180度転換するだろう。

野党こそ自省と変革を。正面から国会に取り組んで

 自民党の甘利氏が、野党は批判ではなく対案を提示すべきと主張されている。立場は違えどその通りだと思う。今の安倍政権の問題点は、旧来型の政治の行き詰まりを、旧来型の政治を極端に推し進めることによって成り立たせていること。それによって利益を得ているのは実は政権与党だけではない。バラマキ型政治の恩恵は野党にももたらされている。しかし、今の政策・政治に持続可能性はない。新しい切り口の政治、新たなる発想が必要なのだ。しかし、その姿は国民に提示されていない。

 そもそも、口を極めて野党や一部市民グループが罵る現政権がなぜ「持続可能」なのか。それは野党が現政権よりも劣ると国民に判断されているからに他ならない。ではなぜそう判断されているのか?それは場当たり的な政権批判や重箱の隅をつづくような国会での議論に終始しているからであり,そのことについて国民がこころよく思っていないことを野党は理解していないのだ。一例を上げれば、最近の桜田大臣を巡る議論。桜田大臣が、あるべき大臣像からかけ離れた存在であり、不適格であることは誰の目にも明らかであろう。しかし、池江選手に関する意図的なマスコミの策略に便乗したり、僅かな遅参について審議拒否している姿が国民にどう映っているのか野党は理解しているのであろうか?

 そのような些末なことより、本会議や委員会においてどのような真剣な議論を行なうかこそが重要であろう。ところが、議員の本分たるそこの部分で、全力を尽くしているとは思われない行為が平然と行われている。例えば先日の衆議院財務金融委員会において、麻生大臣の所信表明に対する質疑が行われた。危機に瀕している財政について、正面から真面目な議論を挑んだ議員もいた。しかし、ある議員は、視察に訪れた那覇空港の発着回数について延々と質問を行なっていた。今、日本の財政は危機的状況にある。財務金融委員会こそそのような議論を行うべき場であるべきだし、しかもそのことに焦点が当てられるべき財務大臣の所信に対する質疑の場である。そのような場において、財務金融とは全く関係のない空港の発着問題を取り上げるような姿勢こそ、大臣の言の葉や数分の遅刻よりもよほど問題である。野党にそういう自覚が芽生えなければ、いくら安倍政権に失策が続いたとしても政権交代など永遠に望めないだろう。

 野党が変革するか、あるいはまったく新しい政治勢力が台頭するのか。安倍政権が存続することに対する自省こそ今野党に求められていることだろう

【国会報告】国会における論戦にこそ注目を!そこに政権担当能力が示されている

昨日の財務金融委員会では,麻生財務大臣の所信演説についての質疑が行われました。最初に指摘しなければならないのは,国の財政が危機的状況にある中,その財政に関する最も重要な政府の所感が表されているのが財務大臣の所信演説です。これに対する質疑ですから,当然各党委員(党によっては複数議員が質問されます)の質疑もこれを中心にした真剣な議論が行われるべきところです。期待どおりの正面からの論戦があった一方で,本題から遠く外れた質問,揚げ足取りのみを狙ったかのような質問など,そのような気概が感じられない質問が見受けられたことは極めて残念でした。政府与党の政治にこれだけ問題がある中,政権交代の機運が盛り上がらないことの一因というか主因は,野党の政権担当能力を国民が疑問視しているからでしょう。その意味で,国会における質疑では,自党の政権担当能力を示すような正面からの論戦を挑む姿こそ期待されるところです。そういった観点から,ここではいつものように,みるべき質問が行われた部分について紹介させていただきます。

国民民主党の緑川議員は,まずプライマリーバランス(PB)黒字化達成の目標が先送りされたことを指摘し,その上で国債と借入金の合計の国の借金が1100兆5千億円に達している,これは次の世代への先送りであり,第2次安倍政権発足以来175兆円も増えていることについて歳出改革の姿勢について問いただされました。麻生大臣は,「国の借金ではなく政府の借金」「国民は国債を買っておられるので債権者であって債務者じゃありません」とカウンターを浴びせました。しかし,結局政府の借金は将来の国民の税金で返すのですから実質的には国民の負担,つまり国の借金です。次に,2025年度PB黒字化計画について,新経済再生計画では実質で1.5から2%,名目で3%の経済成長が前提とされており,民間予測の2倍近くで,近年の実績にもないものであってハードルが高いと質問されました。これは,私が最近のブログ(Bプランなき財政再建計画https://ameblo.jp/masayuki-aoyama/entry-12439569005.html)で指摘したことと同旨であり,あまり注目されていないところを的確に指摘された良質な質問でした。これに対する麻生大臣の答弁は,「現政権の基本政策は,経済再生なくして財政再建はできない」とだけ。つまりは景気頼み,ただそれだけなのです。

やはり国民民主党の前原議員は,日銀の量的緩和政策の変化について,わかりやすいグラフを配布された上で,黒田総裁を参考人として呼ばれて質問されました。まず,アメリカのFRBの方針転換(利上げ基調から利下げへ)に関する大臣の見解を尋ね,その上でアメリカが利下げして日本との金利差が縮まれば円高になる可能性がある,その場合追加緩和できるのか,ETFも買い過ぎだし,金利低下で金融機関がかなり毀損し始めている,そういった中で追加緩和できるのか,という本質的なところを黒田総裁に質問しました。黒田総裁は,為替相場にリンクした金融政策は行っていない,その時々の状況に応じて最適な方法を検討していく,という具体性に乏しい答弁でした。アメリカ議会でのFRB議長証言であればとても持たない内容でしょう。続けて,日銀の積み上がったETF(株)資産は,株価の変動で大きな含み損となること(日銀のバランスシート上日経平均が1万7700円で赤字となり,1万1700円で日銀を債務超過に転落),金利低下でどんどん金融機関の経営を悪くする,ということを指摘した上で,この先もETF買い続け,6兆円も積み増すのか,と質されましたが,黒田総裁は影響を十分考慮した上でETF買いを続ける,と答えたのみでした。
こういう質問こそ,十分に時間をかけ,論戦となることが期待されるのですが,前川議員の質問時間は30分で時間切れ。残念です。

社会保障を立てなおす国民会議の野田議員(元総理)は,所信演説に関する質疑ということで,まさに前回配られた麻生大臣の所信表明のペーパーに線を入れられての質問でした。その姿勢はさすがです。まず,日本経済の景気回復について,「企業部門の改善が家計部門に広がり,好循環が進展する」と書かれているが,報道機関各社の世論調査結果で示された国民の実感とは乖離があり,認識不足ではないか,との趣旨の質問をされました。締めの質問では,「新規国債発行額を安倍内閣発足以来7年連続で縮減」とあるが,自分が財務大臣,総理大臣だった2011年2012年もそうだし,平成30年度は,補正予算で新規国債発行をしているので新規国債発行額は増えている,という事実に基づく指摘をされました。麻生大臣もこれらは率直に認められ,実は補正も含めれば新規国債発行額が増えた年度は計2回あったと言及されました。

立憲民主党の福田議員は,平成元年度から平成29年度の消費税累計額が349兆円,これに対して法人3税の減収額累計が280兆円であり,8割が法人3税の減収で消えていることを質問されました。この問題は私も以前から指摘しているところです。この質問に対する麻生大臣の回答は「企業の活力と国際競争力の維持する,強化するというため」というもので,あまり説得力はありませんでした。

各党の質疑を評価すれば,党として真面目に日本の経済財政運営に関する議論に取り組もうとされているところとそうでないところの差が一層開いてきているようです。しかし,国民にこの姿は明らかとはなっていません。これは,マスコミの報道が,刺激的・刹那的な問題に偏り地道な政治の姿を報じようとしない,というところにも問題があるでしょう。日本の政治の質を上げるためにも,これからも出来る限りのリポートを続けていきます。

 

【国会報告】地方税法改正、特別法人事業税、森林環境税に関する質疑

 今日の衆議院本会議は、地方税法の改正(自動車税関連・ふるさと納税関連)、地方税だった法人事業税の一部を国税にする特別法人事業税、森林環境税についての質疑が行なわれました。最近、政治の世界では場外乱闘というかこどもの口喧嘩みたいなやり取りが目立っていますが、本会議ではこれぞ国権の最高機関と唸らせるような議論をして欲しいところです。
 今日はどうだったかというと、法案が比較的地味であったが故に逆に法案質疑に対する姿勢や調査力が滲みでた感がありました。
 法案について正面から質問されたのは、社会保障を立て直す国民会議(野田さんのグループ)の重徳議員。地方への配分割合を決めるのに私有林人工森面積50%、林業従事者20%、人口30%なので、私有林人工森1万2千haの岡崎市より人口90万人の世田谷区の方が配分が多くなるとのこと。具体的にわかりやすく不備を突かれました。
 法案とは離れましたが共産党の本村さんは児童虐待事件を踏まえ非難ではなく解決策を具体的に提言され(その中に弁護士活用も)、好感が持てましたし、安倍総理もそれに沿った施策を進めると答弁していました。また、児相職員削減圧力に関連して地方自治体の職員削減率を交付税算定の評価基準とするのを止めるべき、とのもっともな質問も。総理答弁によれば平成32年度以降見直すとのこと。
 国民民主・無所属クラブの日吉議員は、森林と深く関わる林業について人工林ばかりになったことが林業を逆に阻害したとの視点での質問。
 立憲民主の高井議員は、被災時、当該市町村は被災者なので近隣自治体が助けに入るイタリアの例を引き、防災省の創設を訴えました。ちなみにアメリカにもFEMAという政府機関があり、災害ものの映画などにも出てきます。
 言わずもがなな質問をされて残念であったのが維新の足立議員でした。国家統計局など筋の良い指摘もあっただけに勿体無いというしかありません。

【国会報告】所得税法の一部を改正する法律案

 本日は、衆議院本会議で「所得税法等の一部を改正する法律案」の質疑が行われました。住宅ローン控除や自動車重量税、個人事業の承継税制についての改正案です。各党の質問のうち、優れていたものを紹介させていただきます(批判が主体の国会討議から脱却することが急務と最近強く思っているため、まずは隗より始めよということで)。
 国民民主党の緑川議員は要点をついた質問で、安倍総理の力みを引き出しました。皆さんご承知のとおり、安倍首相は都合が悪いと思うと力む癖があります。どこで力んだかというと、「総雇用者所得がプラス」という成果を安倍首相が誇っている点。65歳以上の非正規労働者数が2013年度204万人が2018年度は358万人に急増しているので、総雇用所得の伸びは高齢者が無理に働きに出ざるを得ない社会になっていることを示しているのでは、という鋭い指摘のところでした。総雇用者数×賃金=総雇用所得という関係にあるので、賃金が伸びなくても人数さえ伸びれば総雇用所得は伸びるのです。
 維新の党の杉本議員もいつもながら深い造詣をお持ちの財政についてわかりやすく、かつ単刀直入な質問をされました。国家財政を家計に例えれば、600万円の年収の方が、400万円の借金で1000万円の生活。借金の残高は1億1000万円になったと。借金は身内からしているのだし、バランスシートではプラスの資産があるから実質借金は6000万円、大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせているのが今の日本の姿だと。ワニが口を大きく開けているような財政運営をいつまで続けているのかと。
共産党の宮本議員は、30年間に消費税収は372兆円増えたが法人3税は290兆円減ったと指摘。
 今回の質疑は、各党間で大きく質が分かれていたと思います。皆さんも是非ネットでやっている国会中継ご覧になって、各党の通信簿をつけてください。政党の本当の姿が見えてくるかもしれません。面白いですよ。

児相は弁護士を活用すべき。損保では当たり前のこと

最近の極めて残念な児童虐待事件について、弁護士を活用すべきというブログを書いた。そうしたところ、同じ弁護士の方が児相に弁護士を置くことは不要、という記事を書かれていることを目にした。ほかの問題であればいちいち反応することもないが、この問題は別だ。子どもの命がかかっているからだ。

私も児相に弁護士を常駐させるべきとは思っていない。しかし、今回の小学4年生の女児の父親のように、いわゆるモンスターペアレントのような類型の方に一般職の公務員が対応するのは困難を極める。そういったケースを弁護士にスポットで委任することは当たり前の話である。例えば、事故対応のプロである損害保険会社も、困難事件(事故態様が複雑な時ばかりではなく、相手方が暴力団関係者であったり、苦情が激しかったりする場合も含まれる)はプロである弁護士に委任し、対応を一任する。そして、そういう事件は全体から見ればそんなに多いものではないから、依頼者である保険会社にとっての経済的負担もそれほ大きくない。保険加入者(虐待事件では被害児童にあたる)を守るためにも、担当社員(児相職員)を守り過度のストレスから解放して円滑かつ適切な業務執行を続けるためにも必要なコストなのだ。

なお、断っておくがそれが弁護士の儲け口になる、などの低い意識で提言をしているのではない。この種の事件は、弁護士にとっても大きなストレスがあり、場合によっては身の危険を感じることすらある。私も勾留中の相手方から、違法な脅迫状を複数受け取り、法廷においてすら凄まれたことがあった。また、事件報酬も低廉な定額制になるであろうから、大多数の弁護士にとっても決して喜んで受けたい事件類型ではないだろう。
それでも、現状は変えなければならない。制度を作ることによって、確実に救える命があるからだ。

Bプランなき財政再建計画。本気度ゼロ?

平成31年度予算案は史上初めて当初予算案として100兆円を超えた。そのうち32兆円は,国債という名の国の借金で賄われている。ただし,歳出において15兆円が既発の国債償還に充てられるので,国債の純増は17兆円だ。こうして年々増加する国債の残高は日銀によれば昨年9月末で999兆円に達している。

この国債については様々な議論がある。これを心配しなくて良い,という者もあり,その論拠は,①国のバランスシートを作れば,資産も多大にあるから大丈夫である,②国債は国の借金であり,国民の借金ではない,③日本国債は主に国内で引き受けられているので,ギリシャのようにはならない,などである。

しかし,①国の資産は簡単に売れるものではない。また,資産は,帳簿上計上されている通りの値段で売れるものでもない。簡保の財産(かんぽの宿)が,貸借対照表上の価値よりはるかに低い金額で叩き売られたことを思い出して欲しい。倒産処理を経験したものならすぐ理解できるが,大事なのはキャッシュ・フローであり,現金性の資産である。②国が国債を償還する原資は国民から徴収する税金。すなわち,返す主体は国民であり,実質上は国民の借金だ。③日本国内の金融機関(銀行,保険会社)には既に国債引受の余力はない。所得の低下により国民の金融資産(預貯金)が取り崩され,減少に転じているからである。このため,日銀が紙幣を増刷して(現実には輪転機を回すことすらなく当座預金の残高の数字をコンピュータで入力して増やしているだけ)実質的に国債を全額買い支えている。その結果日銀保有国債残高は国債残高全体1000兆円の45%,約450兆円にも達している。これが続けば,国債は暴落せずとも(内国通貨建て(円建て)の国債は,理論上は通貨増発により無限に中央銀行(日銀)が買い支えられる),通貨量の水増しによる通貨価値の減少=通貨安が起こる。ジンバブエのようなハイパーインフレが起こるか,そうでなくとも第2次大戦後の英国のように経済が長期低迷し継続する通貨安によるコストプッシュインフレに国民が苦しみ続けることになる。

さすがに,政府与党も,この野放図な財政赤字をいつまでも放置しておけば「円の信認」が国際的に失われることは意識しているとみられ,「新経済・財政再生計画」において,2026年度でのプライマリーバランス均衡を目指している。

プライマリーバランス均衡について簡単に説明すれば,国債費(償還費・利払費)を除く政策的経費を,税収等で賄うようにするというものだ。平成31年度予算案を例にとって説明すれば,歳出のうち政策的経費は約76兆円,これに対して,歳入のうち税収等は67兆円しかないため,プライマリーバランスは9兆円の赤字だ。

ただし,国債費の純増は,プライマリーバランス(PB)が均衡しても生じる。国債費には利払費が含まれているため,利払費分は,仮にPBがトントンであっても国債が増発されることになる。その関係を平成31年度予算案で下図に示す(純増は正確には17兆2176億円)。

したがって,既発国債残高を増やさないためには,プライマリーバランスの均衡では足らず,利払費と政策的経費の合計額を税収等で賄う必要がある。そうではあるが,プライマリーバランス均衡が財政再建のまずは第一歩だ。これが達成できなければ,二歩目(利払費+政策的経費と税収との均衡)も,3歩目(既発国債残高の減少)も続くことはできない。

その意味でプライマリーバランス均衡は重要なのだが,日本政府のプライマリーバランス均衡=財政再建計画は国内よりもむしろ国外から日本の行く末を指し示すものとして注目されている。しかし,その中身足るや,まるで達成に対する意欲が感じられないものであった。本気度ゼロなのである。このブログを書くために,内閣府や財務省からも聴取を行い確認をしたが,「新経済・財政再生計画」における2025年プライマリーバランス均衡は,すべて経済成長頼みなのである。すなわち,経済の成長とそれによる税収増のみがPB達成の原資であり,それ以外の方法(歳出減等)は一切触れられてもいない。つまり,それのみに依存したものなのだ。

そして,肝心の経済成長見込みの中身足るや,名目GDPで3%前後,実質では1.5~2%程度の高い成長を前提としたものとなっている。

2013年から2017年の実質GDPの伸び率は平均すれば1.2%前後である。2018年はこれよりも落ち込む見込であるし,今年以降の世界経済も中国の景気悪化及び米中経済戦争などの影響により,約10年も続いた異例の長寿景気が落ち込むであろうことはほぼ一致したコンセンサスとなっている。もちろん,景気の予測が必ずしもあたるものではないが,一国の財政健全化計画の基盤となるものである以上,コンセンサスに基づく予測とかけ離れたものであってはならないであろう。計画では,経済成長が下振れした(成長率が潜在成長率程度にとどまった)場合をベースラインケースとしてグラフに併記しているが(実質GDP成長率1%前後),その場合には「試算期間内のPB改善は緩やかなものにとどまる」としているだけである。換言すれば,その場合に目標年限である2026年度にPB黒字化を達成することは諦める,としているだけなのだ。つまり,Bプランはない。これは驚くべきことだ。達成するためのやる気はまったく感じられないというか,ないのである。

日本の財政や経済に対する外国からの目は厳しい。プライマリーバランス均衡のための,「新経済・財政再生計画」はそのためのエクスキューズでもあろう。しかし,日本政府には,2020年度までのプライマリーバランス均衡目標を放棄した前例がある。次に2026年度までのPB均衡を放棄すれば,今度こそ日本政府すなわち日本への信頼は損なわれ,それは「円の信認」が失われることに直結していくであろう。そして,それは国民の生活を破壊する。政府には責任がある。期待される経済成長率に達しなかった場合のBプランが作られるべきである。

児童虐待の悲劇。政治問題とするなら積極的な対案を。

 悲劇を批判として政治利用するのではなく、対案を。

 つい最近、またも児童虐待の悲しい事件が生じてしまった。児相という公的機関が関与していたケースだけに、この事件が防げなかったのか、どうしたら防げるのかについて真摯な検証とそれに基づく改善が必要なことは言うまでもない。

 この事件を政治的・政策的視点から検証することも必要だろう。だが、この事件を政治的に利用するだけでは世の中は変わらない。政権批判に利用すればそれを気にした政権側が予算配分に配慮するということで間接的な効果はあるかもしれないが、それではあまりに刹那的である。
 そもそも、悲しいかな現場がいくら頑張っても、全ての子どもの命を守ることは難しい。私も弁護士として、医療過誤やDVなどの弱者保護の事件にある時は体を張って取り組んできた。しかし、残念ながら全ての人は守れない。それでも、その取り組みには意義がある。弁護士に出来ることは個別事件の救済であり、政治家に出来ることは、国あるいは地方自治体のシステムにおいて、どうすればこういった悲劇を少しでも減らしていけるのか、どうしたらゼロに近づけていけるのかの地道な取り組みだ。アイデアは幾らでもある。こういった事例で重要なのは、虐待の事実の真実性の確認、親権者の子育てに関する自主性との調和だ。例えば、児相の行う保護について、親権者からの強い抗議があった場合、それへの対処まで児相職員に求めるのは酷だ。そんな時は弁護士あるいは弁護士会と提携したシステムを構築しておき、予備審問的調査を弁護士にさせ、児相職員の負担軽減を図るとともに、親権者の権利との調整を図ったらどうであろうか。そんなに予算がかかるとも思われないし、弁護士過剰時代の今、弁護士側のヒューマンリソースに事欠くことはないであろう。既に同じようなシステムが住宅紛争に関して構築され、実際に各地で稼働している。
 こういった提言を含めた建設的対案を行うことこそ、今野党に求められていることではないだろうか。

野党こそ変わるべき。国会における討論の質を高めよう。

第2次補正予算が衆議院を通過した。私は,本会議でどのような討論が行われるのか注目していた。注目していたのは「補正予算」の審議にどの程度各党が集中するか,といういわば当たり前の点である。

ここのところ,補正予算は形骸化し,本来当初予算案に計上すべき項目が補正に回されることが常態化している。当初予算案の形を整え,見かけ上の前年比支出増を回避するためである。特に今回の補正では,防災・減災,国土強靱化のための3か年緊急対策に1兆円も割かれている。本来はもうすぐ審議が始まる当初予算案に計上すべき予算であり,しかも時期からして補正を組んでも当初予算でも執行はどのみち大差はないだろう。

このようなやり方は,まさに財政法29条1項「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となつた経費の支出又は債務の負担を行なうため必要な予算の追加を行なう場合」という規定に反する脱法的行為である。もう一つの問題は,当然ながらこの補正予算により歳出は増大する。結局約2兆8000億円が1次補正よりも増加し,101兆3581億円と,通年では100兆円を超える支出となってしまったのである。増えた分を補う歳入はまたしても国債である(維新の党の指摘によれば1次補正予算と合わせて2兆円の建設国債増)。これは,財政健全化に反するものであることは明らかである。

このようなまさに本質的としかいいようのない問題を含んだ第2次補正予算案に対し,討論が行われた訳だが,各党10~5分の持ち時間しかないのであるから,こういった本質的議論に集中するのが本筋だろう。しかし,残念ながら現実はまたもや違っていた。

立憲は,冒頭3分の1を統計不正問題に費やし,さらに消費増税,軽減税率と繋げて最後にようやく国土強靱化関係予算を補正で組むことについて指摘したが,結論は補正予算で予算化することではなく本当に必要な防災対策であるべき,という焦点のぼけたものとなってしまっていた。また,財政健全化への言及は皆無で,幼児教育無償化の手法や,児童相談所への体制強化に使うべき,という「使い道」競争の視点しかみられなかった。

国民民主は,歳出抑制及び財政法29条の観点から,国土強靱化関係予算や地方創生拠点交付金・戦闘機購入は当初予算に組み込むべきとの説得力ある討論を行ったが,やはり冒頭は統計不正問題であったし,締めは公文書改ざんなどに対する政治家の責任で終わっていた。徹頭徹尾補正予算案に関する本質的問題についての討論を行ったのは維新ただ一党であった(結論はなぜか賛成であったが)。

要は,ケジメをきちんとつけていただきたい,ということなのだ。国会に参加して一年余を経過したが,いつも同じことの繰り返しである。本来討議されるべき事柄(法律案であったり予算案であったり,委員長の解任決議案や大臣の不信任案であったりもする)は横に置かれ,関連性の薄いことや主題でないことが延々と訴えられる。確かに野党にとってはアピールの機会ではあろうが,まずはやるべきことがある。まずは議題に集中し,質の高い討議を行うことこそ,真の国民へのアピールとなるのではないだろうか。「本物の力」こそ,人の魂を揺さぶる。また,じわじわとではあっても,静かにそれは伝播し,広がっていく。今は,テレビ中継はなくともインターネット中継が存在し,そこで何が行われているのか見る人は見ている。

国会の質,そこで行われている民主主義の本質たる討論の質を高めることこそ,野党に求められているところではないだろうか。

 

【国会報告】平成30年度第二次補正予算

 2月5日午後7時10分という遅い時間から開かれた衆議院本会議で,平成30年度の第2次補正予算が通過しました。まずは余談の部類ですが,細野豪志議員が早くも自民党側の席に移っておられ,注目が集まっていました。

 さて,肝心の討論で私が注目したのは,「補正予算」の審議にどの程度各党が集中するか,という点でした。補正予算が形骸化し,本来当初予算案に計上すべき項目が補正に回されることが常態化しています。当初予算案の形を整え,ゼロシーリングの制約を回避するためにです。特に今回の補正では,防災・減災,国土強靱化のための3か年緊急対策に1兆円もさかれています。本来はもうすぐ審議が始まる当初予算案に計上すべき予算であり,しかも補正を組んでも当初予算でも執行はどのみち4月以降でしょうから大差ありません。このようなやり方は,まさに脱法的行為であり,財政健全化に反するものです。

 各党10~5分の持ち時間しかないのですから,こういった本質的議論に集中するのが本筋でしょう。しかし,残念ながらというか案の定というか立憲,国民,共産の各党は約4分の1くらいは統計不正問題に時間を費やしていました。この辺のケジメをもう少しきちんとつけていただきたいところです。

 これに対して,維新は,皆さん意外と思われるかもしれませんが真面目に①3カ年緊急対策予算を補正予算に入れるのはおかしい②遡及適用の問題③補正予算の中身からして財政健全化に反する,と真っ向から補正予算についての疑義を訴えていました。

ただし,結論は成立に賛成でしたが。維新の党の議論は,建前ではなく本音なので,聞いていていつも面白いのですが,今回もそうでした。

 

 なお,各野党への注文は,政権選択野党,新しいレジュームの野党にバージョンアップされ,今の与党の受け皿として国民に認識されるようになっていただきたい,という気持ちからさせていただいていますので悪しからず。