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【国会報告】入管法改正案採決

 昨日(11月27日)の夜間に行われた入管法改正案採決のご報告です。総じていえば,明らかに野党の反対意見に説得力がありました。採決の結果は賛成317票,反対136票で可決でした。参院での審議がまだ控えていますが,このままいけば,そう遠くない未来に,外国人の低賃金労働が日本人の賃金や就職率に影響を与えること,また,十分な共生への配慮が決められていない現状では,文化的コンフリクトが起きそうなこと,それらが政治にも大きな影響を及ぼしそうなこと,はほぼ確実に見えます。このような大きな問題は,やはり事前に国民に呈示し,十分な議論を尽くした上で法制化する,それが民主主義というものでしょう。

 

 

 反対討論にまず立たれたのは立憲民主党の山尾議員。満を持してという感じで最初からヒートアップ。「国民の覚悟が問われる法案」との問い掛けから始まりましたが、仰る通りです。受け入れ見込数・受け入れ上限規制・永住資格・受け入れる対象となる労働の範囲、の4つの主要項目について法案で決まっていない,との指摘。さらに,法案成立が遅れ,施行が4月を過ぎてしまうと技能実習生が帰ってしまうと企業・使用主側が心配しているのがこの拙速な法案提出と審議の理由ではと。締めの言葉は,このままでは立法府が壊れる,傍観者ではなく共犯者,立法府が行政府の下請になっている,等々追及の舌鋒は鋭いのですが,再三指摘してきたとおり,では自党は移民を積極的に受け入れる施策についてどう考えているのかは最後まで明らかにされませんでした。これではただの反対政党になってしまいます。立憲民主党の支持率低下の真の原因はそういったところにあるのでは,と心配しているところです。

 

 自民党の平沢議員は法務委員会の筆頭理事。しかし,委員会・理事懇でも失言が相次いだこともあって,議場はヤジで騒然,発言が聞こえないほどでした。賛成理由は,アベノミクスと少子高齢化で中小企業で人手不足が進んでいる,このため真に人手不足の分野に限り外国人労働者を受け入れる必要がある,というものでした。

 しかし,今の時代,人手不足ではない分野など逆に極めて限られたもの(弁護士と歯科医くらいしか思いつきません)です。結局,ほとんどの分野に外国人労働者が参入することになるでしょう。

 また,現在の技能実習制度における問題は一部のものであり,ほとんどうまくいっている,と胸を張られたのですが,まさに開いた口がふさがらないといったところです。日本人の雇用に影響を与える点については,「丁寧な説明」をしたとのこと。いくら丁寧に説明されたとしても,低賃金の固定化などの問題は理路必然的に起こるもの。総じてなんの説得力もない意見でした。

 

 国民民主党は,論客の階議員。特定技能の水準や受入数の上限が法文上明らかでなく省令に白地委任されているのは憲法41条違反である,とのいつものもっともな意見を披露されました。また,省令に丸投げは与党と業界の癒着を招くので,産業別・地域別に枠を決定すべきとも。さらに,特定技能1号の供給源はほぼ技能実習生であるから,現行制度の問題点の実態を把握して見直すべき,このままでは壊れた土台の上に家を建てるようなもの,との指摘は鋭いものでした。

 

 公明党の賛成討論は,人手不足が深刻であること,今まで外国人に就労資格が与えられなかった建設や宿泊に認めたもの,上限など根幹部分についても答弁で既に明らか,等々当然ながら法案や周辺問題を賛美するものでしたが,少し主題から離れて。根幹部分は明らか,との意見に「エーーッ」とのヤジが野党から上がりました。与党でもこの「エーッ」を言う方がいて流行りなのかもしれませんが,率直に言って少々子どもっぽい。国権の最高機関たる国会に相応しくないように思えてならないので自粛されては,と思っています。

 

 無所属の会の黒岩議員は,法務委員会の強引な審議について触れられました。官邸の下請と化したかのように,委員会審議4日間のうち,3日は定例日外で,これは歴史上初めてであること,理事会・理事懇と同時間しか委員会審議時間がなかったことも異例であることなど,切り口を変えた具体的な意見を述べられました。また,14業種中3業種しか有効求人倍率を使った積算をしていないこと,なども具体的で面白い意見でした。

 

 維新は串田議員。この法改正によって,日本人労働者の労働環境悪化が懸念される一方,人手不足が地方で拡大し,97%の中小企業で人手不足が深刻化している。そこで,賛成・反対ではなく修正協議に応じることにした,と短く率直な意見。賛否については私と意見を異にしますが,その率直な言論には好感を受けました。

 

 共産党は藤野議員。この改正案は,外国人労働者を雇用の調整弁とするもの。また,安価な労働力としての技能実習生を今後も使い続けようとするものであるし,技能実習生の処遇改善の法文がないことも問題として指摘されました。さらに,技能実習制度を歪めているブローカー(実習生が本国で100万円以上の支払を強いられ,それに見合う収入を実習で上げられないことも失踪の大きな要因となっているようです)規制が設けられなかったこと,受け入れ予定の14業種中13業種ではその8~10割が技能実習生が人材の供給源となる見込であること,来年4月の施行を急いだ理由は,半年で数万人の技能実習生が帰国してしまうから,と法務大臣が答弁していること,失踪者へのアンケート調査で86%が最低賃金割れの実態があること,などの共産党らしい細かい論点を列挙されましたが,どれも頷ける指摘でした。