青山まさゆきの今を考える > 新着情報 > 【国会報告】財務金融委員会(後編)

【国会報告】財務金融委員会(後編)

11月20日の財務金融委員会のレポート後半です。今回も順番を入れ替えて、財金にふさわしい骨太の質問からのご紹介です。

 

 最後に質問された維新の杉本議員。経済通の杉本議員は今まで積極財政派との印象でしたが、今回は違いました。最初から、日本の信用力、日銀の信頼性の問題を取り上げられました。国の借金の総額が1100兆円(国債以外の借入含む)にも達する。国民の金融資産1800兆円が国の信用力になっている。今、国際分散投資が必要ではないか。本年6月末の速報値で国債残高は999兆円でている。そのうち、日銀が445兆円・44.6%、海外投資家が61兆円・6.1%保有している。国債を海外投資家が売り浴びせても日銀が買い支えることは出来るだろうが、外国為替はどうか。政府への信認、日銀への信認、そしてそうし高齢化で国民の富が将来的に減っていくことにより日本の信用力が失われれば、国債の売却や(円の売り)が起きうる。国債は日銀が買い支えられて為替は介入で歯止めがきくのか。2025年問題を超えて、2030年、2035年、2040年になってこの国が持つのか。だから国際分散投資が必要では、という問いかけでした。麻生大臣は、日本の信用力には触れず、分散投資はインターナショナルにやる方が極めて有効、と簡単かつ率直に述べました。

 私は、この問いかけは極めて重要なものだと考えています。日本国債は、円建てですから日銀が銀行券、つまりお札さえ増刷すればいくらでも買い支えられます。しかし、円が売り浴びせられたとき、これを買い支えるにはドルが必要なのです。円は通貨発行権に基づき日銀が増発できます。しかし、ドルはそうはいかないのです。だから、一日に5兆ドルも動く外国為替市場で一斉に売り浴びせがあったとき、いかに政府日銀といえどもこれに抵抗することは困難です。過去にイギリスの中央銀行がポンド防衛で一ファンド(ソロスのクォンタムファンド)に敗れ去ったのは有名な逸話です。

 続けては、消費増税と景気の問題。景気の先行指標といわれる半導体市況が2018年の第二四半期から交代局面に入っている、地元のレストランも店を閉める、地元のグルメ雑誌にもレストランの広告がほとんど出なくなっている、現場は冷えてきているのでは、政府の景気回復は続いているという認識は違うのでは、という質問でした。麻生大臣は、外食サービスが減少したことは認めた上で、企業業績やGDPからみて、消費税増税しても、対応策をきちんとすれば大丈夫というものでした。

 私は、この点は疑問符です。静岡でもシャッターのお店は増えるばかり。物価は上がり基調。株価も大きく乱高下しながら基調は下げが続いています。あまり良い方向にはみえません。

 質問の最後は、社会保障費の抑制策を、党派を超えて、政権がかわった場合も含めて、選挙のための材料として裏切ることなく共通の政策目標を持って、与野党問わず共通で答えを出して、それを国民の皆様に御理解いただく努力を、もうさすがにしないとこの国はもたないという提言。

 こういった議論こそ、何十時間でもかけて、財務金融委員会で取り上げるべき議論でしょう。森友・加計学園も大事な問題ですが、やはり木だけではなく森をみることも大事です。少なくとも同じ以上の熱意をもって議論しなければ未来の自分たちを含めた国民への責任が果たせません。

 杉本議員の提言は、最近政府も言い始めた年金支給開始年齢の繰り上げ。既にオーストラリアは、年金の支給開始年齢を七十歳 にする、これも十数年後というような決め方をし て、直近に年金がもらえるかなと思っていた人に 対する不安というかをなくし、そして現役の世代 の方々には覚悟を持っていただくというような法律を通したとのことです。政府は今後の検討課題としてあっさりとした答弁でしたが、締めの言葉が興味深いものでした。プーチン大統領は、六十歳支給というのを平 均寿命が六十歳の国にして不評を買ったとのこと。国をもたせるという意味で国民の皆様にも我慢をしていただく必要を訴えさせていただきたいと思います、とのことでした。

確かに、際限なく平均寿命が延びている我が国においては、国をあげての正面からの議論が必要な時期にきています。

 

 さて、本来のトップバッターは自民党藤丸委員。マネタリーベース、マネーストック、名目GDPの日米欧を比較するグラフなどの素晴らしい資料を用意されました。まさに財務金融委員会にふさわしい資料で、このグラフを見ると、アベノミクスで経済が右肩上がりとの建前とは裏腹で日本だけ名目GDPはほぼ横ばい、米国とヨーロッパは右肩上がりであったことがわかります。日本で増えているのは、通過発行量と日銀の当座預金の合計であるマネタリーベースのみ。それも米国のQE終了に伴い、異次元緩和を続けている日本だけが突出して増えています。この貴重な資料を元に何を質問されるのかと楽しみに待っていましたが、なんとこれの解説のみで関連質問はなし。まさに肩透かしでした。

 しかし、質問の最初は、2025年プライマリーバランス達成の問題。

 答弁はうえの副大臣でしたが、「策定したところであります。後がないという危機感のもと、新たな計画に沿った歳出改革等に真摯に取り組むことで、財政健全化目標の達成を確かなものにしてまいりたい」との答え。本当に実行されることを切に要望いたします。次の質問もこれまた大事な地方金融機関の経営問題。日銀の異次元緩和政策による異常な低金利のために、貸し出し金利と調達金利の利ざやが縮小している上に、地方では新規投資が活発でないことから、どこの地方金融機関も経営見通しが暗く、それ故に合併が盛んに行われているようです。この点を踏まえてでしょうが、「地域金融機関はどうあるべきか」という極めてストレートな質問。

 答弁は田中副大臣。その答えは少し衝撃的で、「地域銀行は、二〇一八年の三月期決算におきまして、過半数の五十四行が、本業利益、貸出しですとか手数料ビジネスの上においては赤字となっている状況」とのこと。バブル崩壊時にバタバタと金融機関が潰れてしまったことを思い起こさせられました。

 

 続いて自民党本田議員。軽減税率の準備状況や仮想通貨の規制や監督について質問されました。前者は政府の宣伝のような色合いでした。後者は今なぜ?という感じもいたします。

 

 次は立憲民主党川内議員。最初の質問は予想どおり麻生大臣の失言問題。野党としては取り上げざるを得ないところでしょうが、あまり長々とやらなかったところが逆に好印象でした。次は、財務省再生プロジェクトのコンサルタントへの報酬。後に何か続くのかもしれませんが、今回の質疑からはまだその意図は読み取れませんでした。そして、2012年と 2016年の比較で、所得金額1億円以上の方、5億円以上の方がそれぞれ増えている、5億円以上は倍増したという質疑応答。日本でもアメリカのように所得格差が広がっている実態がよくわかりました。さらに、月給30〜40万円では有効求人倍率は0.72に過ぎないとのこと。政府与党は、有効求人倍率をあげて景気が良い指標としていますが、有効求人倍率が高いことと給与水準が結びついていない実態が暴かれました。そして,消費税引き上げに関する総理発言を財務省幹部が聞いた時期について。担当の財務省幹部が知らないのはどうか,という趣旨でしょうが若干枝葉との印象は拭えませんでした。締めは森友の評価調書が失念されていた,という問題。木を見るか,森を見るか。財務金融委員会ではもう少し森に重点が置かれても良いのでは,と感じました。

 

 続けて立憲民主党の今井議員。日銀の黒田総裁に対し,名古屋での11月5日の「かつてのように、デフレ克服のため、大規模な政策を思い切って実施することが最適な政策運営と判断された経済・物価情勢ではなくなっています」という発言の真意を問いただしました。今の日銀の異常とも言える政策をいつまで続けるのか。まさに日本の国益にかかわる問題であり,待ってました,という質問です。これに対する黒田総裁の答えは,「物価安定の目標の実現に向けてまずは現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくということが必要である。今、更に追加的な措置をとるという必要はないだろう。今の金融緩和措置を粘り強く続けていくということが必要」というもの。さすがに追加措置があり得ないのは当然で,出口戦略について相変わらず口を閉ざされたままでした。

 また,マイナス金利の幅を縮小することも尋ねられましたが,黒田総裁はこれにも否定的。すると続けて,地方金融機関の運用難による経営悪化について尋ねられ,この辺は大変良い流れで日銀の政策の問題点をつまびらかにされました。黒田総裁は,経営環境というもの自体については十分注意していく必要がある,と答えたにとどまりましたが,問題意識が共有されたということでこの点に関する質問は終了。森友問題などでの細かい論点を鋭く追及されること以上に,日本全体の将来に取り返しのつかない禍根を残しかねない日銀の政策について,今後も追及されることを切に望みます。

 質問は,さらに物価目標2%達成可能か,というそもそも論に。私は個人的には2%は言っているだけ,異次元緩和政策の本質は,金融(金利)抑圧と財政ファイナンスとみていますが,2%に上がったときは日銀ひいては日本に危機が訪れる時かもしれません。

 その後,麻生大臣失言,財務省不祥事の責任の取り方,森友の試掘の深さ問題と続きました。結局,この問題の行き着く先はどこなのでしょうか。

 

 次は国民民主党の緑川議員。麻生大臣失言を最初に取り上げられた後,増税と減税がセットで進められてきたのが過去の基本であったとの質問。純粋な増税を行い,その分サービス改善をしたらどうか,との問題提起でした。

 しかし,今の財政状況-プライマリーバランスの大幅赤字-を考えれば,増税はその穴埋めであり,サービス改善に回る余地はないように思われます。星野参考人もこの趣旨での答弁でした。

 幾つか続けられた質問の中で,日本だけでなく世界で経済成長が頭打ちとなる中での経済成長の意味,を尋ねたことに対する麻生大臣の答えが,いかにも麻生大臣らしく率直で面白いものでした。人口減の中で,経済が1割くらい伸びたが,労働分配率は,自分が経営者だったころは77~78%くらいあった。今は66~67%まで低回している。どうして企業収益が増えるなかで 労働分配率が下がるのか。社会主義ではないので企業の中に手を突っ込んで言うことまでできないが。企業収益の伸びに比べて設備投資とか人件費の伸びがかなり低いのが最近の傾向,というものでした。私が野党側の無所属議員でありながら麻生大臣を評価しているのは,こういう率直なやり取りをされるのはおそらくは今の政府でこの方しかおられない,と思うからです。

 

 次は国民民主党入りされた前原議員。やはり麻生大臣失言問題を聞かれた後,消費税率上げの延期はないのか,という質問。財政規律を守る社会保障・税の一体改革を推し進めた当事者の観点からのものでした。麻生大臣は,財務大臣らしく,過去二度の延期は自分の本意ではなかった,今回はやらせてもらう,という明確な答弁をされました。

 続けて,軽減税率はどうしても納得いかない,との質問。逆進性の緩和にならないし,その分税収に1兆円穴があく,給付付税額控除で一定所得以下の方には戻した方が,政策として優れているのでは,とのもっともな質問です。麻生大臣は,給付付税額控除は,軽減税率と比較して線引きが難しいとの答弁。前原議員は,さらに、ポピュリズムに流され過ぎずに、将来の責任も含めてしっかりと、今の借金や将来の人口減からすれば10%をさらに上回る増税があるということは国民は薄々わかっている,との実直な指摘をされ,その将来に備えて財務大臣が「痛税感」という言葉を安易に使わない方が良い,という堂々とした議論をなされました。こういった質問を受けたときの麻生大臣は正直に納得されたような顔をされるのも,実はあまり知られていないところです。

 

 共産党の宮本議員。共麻生大臣の失言問題は節度を持たれて冒頭指摘するにとどめられ、官公庁における障害者雇用の水増し問題を質問されました。続けて障害者の雇用は非常勤が多いので、常勤雇用や無期雇用への転換の仕組みを設けるべきだ、と続けられました。政府側の答弁は、十分認識しており、検討をしていきたい、とのこと。地道に現実化していただきたいところです。

 そして、消費税10%増税問題。消費への罰金の側面を有する消費税増税は、消費の低迷・国民の貧困化を加速させる、所得税の累進課税強化や法人税率引き上げを図るべきでは。との質問。麻生大臣は、GDPや企業収益は過去最高、有効求人倍率や高く、失業率は2.2%の低水準、賃金も2%の高水準アップが5年続いているし、今回は前の3%ではなく、2%の税率上げ。反動減には低所得者層への支援措置をする、というものでした。

 この問題についての私見を述べさせていただけば、日本のGDP上昇は、円安によって水増しされたものであり、世界標準のドル建てで考えれば実質は減少、しかも欧米はかなり順調に上昇しているのに、です。政府の現状認識は甘いと指摘せざるをえません。

 増税対策としてのキャッシュレスのポイント還元は中小業者を困らせるだけでは、という指摘はまったく同感でした。

 最後にコンビニのイートイン問題。持ち帰るといって軽減税率を適用されたお客が店内で食べだした場合にお店が2%の支払いを求めなくていいのか、という質問でした。ありうるような気もしますが、政府側がその必要はない、と答えたことにそれは正直者がばかを見るという税制にならないか、と結ばれましたが、若干牽強付会の感を覚えました。