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緊急事態宣言のような緩い社会的距離政策は取っても意味がないし、取る必要もない

ワクチンや緊急事態宣言解除を巡るマスコミ報道、一部野党の攻撃、専門家と称する方々の言動に、どうにも馴染めない。

「新型コロナ撲滅がすべて」「政府は手ぬるい」という取り上げ方がどんどん強まり、事実はいつも置き去りだ。

ワクチンの効果については以前触れたので(「ワクチン接種率63%のUAEの衝撃」)、今回は私が「緊急事態宣言」に疑問を持つ理由を少し丁寧に述べてみたい。

その最大の理由は効果があまりにも不確かなことにある。

緊急事態宣言は欧米や中国で行われているロックダウンの限定版で「社会的距離政策」と呼ばれる疫学的政策の一種。先に行われた飲食店の時短などは、その中でもかなり緩和的な施策だ。

EUを見ると、小売店はすべて休業、学校も閉鎖したり、自宅からの外出も理由がないと出来ず、移動距離にも制限を求めるなどかなり厳しい措置が罰則を持って取られていることが多いが、それでも効果はなかなか出てこないのが普通。

現在のフランスや少し前のイギリスがその良い例だ。フランスは、バーやレストランの閉鎖措置を昨年の10月頃より実施し続け、10月末からは2度目のロックダウンが1ヶ月ほどなされて感染者数は減少したが、バー・レストランへの閉鎖は続けられたにも関わらず12月初めから徐々に再燃し始め、最近は3万5000人を超えて3度目の全国ロックダウンに踏み切る。日本型の飲食業の制限(フランスはより厳しく禁止)は、少なくとも感染者の持続的抑制に効果がなかったのだ。

アメリカでは、緩和的な社会的距離政策の効果を検証できる、とても良い例がある。

ノースダコタ州とサウスダコタ州における状況だ。

ノースダコタ州でのみ、日本と同様の比較的緩い社会的距離政策が取られたのだ。

両州は、地理的にも南北で隣接し、気候も大差ない。さらに人口(ND州67万人・SD州81万人)、人種構成や産業も似通っているので比較に好都合。

規制について簡単に述べると両州ともに3月〜4月にかけては飲食店を閉店したり施設利用を制限したりしたが、両州共に4月末頃までには解除している。

違いが出たのが11月以降。ノースダコタ州のみ以下の社会的距離政策+マスク政策をとったのだ。具体的には、以下の命令が発出された。(サウス・ダコタ州は一切規制なし)

11⽉16⽇〜12⽉18⽇ 

・屋内のビジネス及び公共の場と対⼈距離を保つことができない屋外のビジネス・公共の場でのフェイスカバー着⽤を義務付ける

・州内の全ての飲食施設では、収容⼈数が着席可能⼈数の50%に制限、150⼈の客を超えてはならない。施設内での営業は午前4時から22時まで。

・全ての宴会場、舞踏場、イベント会場は、収容可能⼈数の25%、かつガイドラインで定められている収容制限を超えてはならない。

・⾼校の冬期スポーツやコミュニティ活動、その他K―12学校の課外活動、競技会、校外活動は、宗教活動など⼀部例外を除いて全て中断。

では、両州の感染者数の推移はどうだったかというと、下記グラフのとおり。

規制が行われた11月中旬〜12月中旬を含め、感染者数の推移はほぼ同じ。

ちなみに人口はサウスダコタ州の方が14万人ほど多いので、規制したノースダコタ州の方がむしろ成績が悪いとも言える。

この例を見ると、少なくとも緩い社会的距離政策に効果があるとは評価できない。

感染は自然に増えて自然に減っていくのだ。

実は、これと同じことは日本でも起きている。

ご承知のとおり、緊急事態宣言が取られたのは日本の一部地域。首都圏と関西圏と福岡県。私の居住する静岡県は、首都圏と関西圏の間に挟まれ、気候が似通っている上に、人口も300万人とそこそこあり、政令指定都市も2つ抱えるなど、比較に適している。

では、緊急事態宣言が出された東京都、大阪府、そして出されなかった静岡県の感染者数の推移はどうだったのか、下のグラフをご覧いただきたい。(比較し易くするために大阪府は感染者数を3倍、静岡県は15倍に補正している)

ご覧の通り、非常に良く相似している。3都府県共に同じような時期に増え、同じような時期に減っているのがよくわかるだろう。そして、大阪府は東京より一足早く2月末で解除されている。

さらに念のため、少し気候が違い、首都圏と関西圏から離れた沖縄県の様子はどうか?

若干ピークは沖縄県が後ずれしているように見えるが、やはり同じような時期に増え、同じような時期に減少している。

さて、以上をご覧いただき、皆さんはどうお考えだろうか。

ご承知のとおり、マスコミやそこに登場する感染症の専門家の方などは相変わらず「解除の時期が早いのでは」「リバウンドを懸念」など同じようなことを繰り返し、一部野党も国会の予算委員会でそう言って政府を責め立てている。

しかし、それらの批判の大前提は「緊急事態宣言に効果がある」あるいは「あった」ということ。

アメリカや日本における規制のあるなしの比較対照例を見れば、少なくとも緊急事態宣言のような緩い社会的距離政策など取っても取らなくても、感染はある時期自然に増え、そして自然に減っていくと誰にでも理解出来るのでは?

その点を、マスコミも専門家も(そして当然のように一部野党も)スルーしているのが不思議でならない。

社会的距離政策に害というか反作用がなければ、「出来ることはなんでもやってみる、試してみる」でも良いかもしれないが、緊急事態宣言は違う。

特に大規模な飲食店の事業者やその従事者、そして関連産業(第一次産業にまで及ぶ)には多大な損害が起きている。

今後のためにも、緊急事態宣言の効果について、以上のような比較対照しての検証をきちんと行うべきだろう。そして、今言えるのは、日本の感染者数のレベルでは、効果が不確かな緊急事態宣言のような政策は取るべきではないということ。

病床数の確保並びに軽症者への治療の充実によって重症化を防ぐという、医療対応政策に全力を挙げるべきだし、それで足りる。