青山まさゆきの今を考える > 新着情報 > 結局、政府がやってるのは楽で目立つところだけ。やるべきことはみんな置き去り

結局、政府がやってるのは楽で目立つところだけ。やるべきことはみんな置き去り

今の現状に堪えきれず、憤りをぶつけるようなブログを書いたのは昨日のこと(「怒りと共に立ち上がれ」)。怒りを抑えられなかったのは、一昨日の厚労委員会、田村大臣の答弁がきっかけだった。

 

つい先日、京都市で20代の若者が死亡した。入院を希望していたのにそれがかなわず自宅隔離中の出来事だった(京都新聞)。この背景としてあったのが、関西圏での医療のひっ迫。が、実は日本全国では空き病床の方が遙かに多い。

こういった場合の都道府県境を越えた患者移送については、昨年来ずっと政府に要望し続け、4月23日にも管総理に直接質疑し、総理からも

「医療提供体制がひっ迫する中で、都道府県の壁にこだわることなく国を挙げて対応していくべきというのは、私も同じ考え方であり、貴重な提案に感謝申し上げたいと思います。」

との答弁を得ていた。

また、アメリカ・イタリアは日本の倍以上新規感染者数が多いのに、アメリカでは経済が再生し、消費者物価指数が2ヶ月続けて急上昇し、イタリアでは規制を解除して前に進み始めている。

そこで、色々な思いをこめて田村大臣に迫った。

日本は情けない国になった。全国で重症者用病床だけでも3000も空いているというのに、よその県の重症者を受け入れれば助かる命を、みすみす放置。こんな国で良いのだろうか?都道府県間の調整なのだから、国がやるしかないだろう。

オリンピックもそう。世界中で身を削るような努力をしている世界中のアスリートに対し、自国内の努力不足でオリンピック返上と騒ぐのは、申し訳ない。国力衰退を世界に晒すもの。

変異株の重症化は実際にはないことも含め、科学的に今の状況をきちんと国民に知らせて世論を変えていくべきだ、と。

 

ところが、この日の田村大臣の答弁は、

「アメリカ、イタリアの数字を見て衝撃を受けた。新規感染者数がここまで減ってきていて日本が増えている。」

「病床数はおっしゃるとおり全体的に見れば空いている。しかし、重症者は移動に2時間が限界。2時間以内で運べればなんとかなる。ところが、この感染は平野で感染が拡がる。行けるところはベッドがいっぱいになる。山を越えて行けるところは病院が空いている。タイムリミット的に行けるところに見つからない。ではどうすれば良いか、何もしていない訳では無くて色々お声は聞いているが難しい。」

 

はあ?である。アメリカ・イタリアの感染者数が減って「衝撃」?混ぜっ返すような話ではないだろう。

その上に、患者移送について、なんの工夫もやる気もないその答え。山を越えて2時間以内で行くためにはいくらでも方法はある。日本にドクターヘリがあるのはご存じないのか?自衛隊にもヘリや輸送機がある。新幹線だって使える。「お声を聞いてる」ってもう1年話だけ聞いて過ごしてきたのか?お声を聞いて「はい、難しいですね。」とそれで済ませば、こんな楽な仕事はない。

 

国は、結局のところ、何も汗をかいていない。この1年余、やってきたことは

・受け入れ病床作ってくれればお金を出しますよ

・通知を出しましたよ

・都道府県の要請受けて緊急事態宣言出しましたよ

・それで休業された業者には雀の涙の支援金出しましたよ

ということだけ。

自分で汗をかいて国民のためにシステムを作り上げることなどまるでしていないのだ。

特別給付金などと同じく、お金だけだして後は丸投げの以外のことが何も出来ていない。「楽で目立つ」ことしかやっていないのだ。日本の行政力・政治力は、今や世界の二流国並み、発展途上国ならず衰退途上国だ。

 

そして、世界の一流国は、日本とは全く異なる姿を見せている。

 

昨年2月、新型コロナパンデミックが世界に広がる様相を見せた折にドイツ政府が、まず何に手をつけたか皆さんはご存知だろうか。

ロックダウン? 

No!

答えはICUの増床だ。しかも、ただでさえ2.8万床もあったものを一気に1.2万床も増やして4万床に。そして、驚くのはそのスピード。ドイツでのコロナ禍が始まって1ヶ月も経っていなかった昨年4月初旬には、1万床以上のコロナ用ICU空き病床を確保したのだった(西日本新聞)。

ドイツの人口は8300万人。日本の約2/3なので、日本でいえば1万5千床を確保したことになる。

 

第4波で、9都道府県に緊急事態宣言、10県にまん延等防止措置が出されようとしている今の日本。その指標は医療のひっ迫で、以下はその状況。実は元々全国的にみれば医療はまるでひっ迫していない。厚労省データでは、5月12日現在の重症者数は1209人なのでさらに改善されている。

今でさえも余っているのに、さらに1万床余計にあったらどうだったか、ドイツ並みに1万床増床していたら、が下記。

当然ガラ空きで、待機死など到底起こりえなかっただろう。それだけでなく、日本で果たして緊急事態宣言などされていたかも疑問。待機死含め救えた命も数多かっただろう。

 
もう一つの手段は、先に述べた患者の移送。
これもフランスでは昨年3月から行われており、飛行機の他、TGVなどの鉄道輸送も行われている(NHK)。そして、日本の新幹線にあたるTGVは患者移送用の改造車まで用意された(東洋経済)。スウェーデンでも下記グラフのように国内移送は日常的に行われている。
ヨーロッパでは、州境どころか国を超えた移送も普通に行われており、ドイツは、フランスだけでなくイタリア、オランダ等からも患者を受け入れており(ロイター)、移送には6つの集中治療室のほか38人の患者が収容できる緊急救命機(エアバスA310)という凄いものも使われている(BUSINESS INSIDER)。
 
そして、ドイツのハイコ・マース外相は
「友人であるイタリアのそばにいるのだから、ともに戦うしかない」
と述べてイタリアの患者を受け入れた。こんな友人がいればどんなに頼もしいことか。
ところが、日本では、県境を一歩越えれば友人ではなくなる。ともに戦う国民ではなくなってしまうのだ。日本人は気づかないうちに、国内さえもバラバラなのだ。
そして、国はいつまで経ってもこの状態を改めようとはしていない。国内移送。国がやる気を出しさえすれば、こんなに簡単な解決策はないだろう。
 
これ以外にすぐに国が自ら汗をかいてやるべき施策はあと2つだけ。
・医療体制の拡充
 万全を期してさらなる病床数拡大を図るべきで、特例的な病床における人的基準緩和もやむを得ないだろうし、医療機関が入院患者受け入れを拒むのであれば、特措法31条の活用もなされなければならない。
第○波などにおいて、患者数が多くなる大都市圏では、国直轄の臨時施設の設置も考えるべきだろう。
 
・重症者の大半を占める介護施設クラスター発生防止対策
 かつての北海道、今の大阪府の医療ひっ迫を招いている原因は介護施設でのクラスター。重症化し易い高齢者施設に感染を持ち込むのは主として従事者。∴従事者に3日に一度の抗原検査かPCR検査を行うべきで、当面、公費でその手配含め完全実施をするべき。陽性が出た場合の人員援助も合わせ実施。
 
 
改めて、声を大にして言いたい。
国は、個人に、あるいは中小の事業者に多大な負担や時に取り返しのつかない損害をもたらす政策を採る前に、自らが汗を流してやるべきことをやれ。
それが中央官庁の汗を要するものであっても、国の手を汚すものでも、最大の既得権益団体の反発を招くものであったとしても。
 
国民は、国がやれることをやらなければ、いくら緊急事態宣言を出しても、まん防を出しても、誰も言うことを聞かなくなるだろう。自分たちばかりに負担を押しつけられては、そっぽを向くばかりになりつつあるのは当たり前だ。