アメリカの4~6月期GDPが32.9%減という衝撃的なニュースが伝えられた(日経)。過去最大の落ち込みだという。
これは対岸の火事ではなく、街の声を聞けば日本のあらゆる業種にも深刻な影が差している。株価が比較的維持されているのでマスコミはあまり報じないが、やがて日本でも数字にも現れてくるだろう。吉野家の店舗閉鎖やANAの業績悪化は既に報じられている。
一方で、東京都の新規感染者増が100人を超えてからそろそろ1ヶ月が経とうとしている。全国的にも感染者増が続く。しかし、その中身はどうか?
この点について、福岡市長が自治体首長として初めて(?)その中身をブログで報じている。
4月と比べ今は①無症候者が2割➡︎5割、②重症例は0、とのこと。
東京都だけでなく全国的にも重症例が極めて少ない状況は続いているのだ。
東京都で新規感染者が100人を超えた時から、マスコミに登場する医師の方の決まり文句は2つ。
1つは、重症化にはタイムラグがあるので、やがて増えてくる、
もう1つは、今は若い世代中心だが、やがて中高年齢層に波及してくる、
というもの。
約一ヶ月が経過して「やがて」はきたのだろうか?
まずは重症化。下記は、新規感染者増加数を青棒、その10日後の重症者増加数をオレンジ棒で示したもの。7月2日であれば7月12日の重症者増加数を並べたものだ(以下いずれのグラフも東京都発表数を青山まさゆき事務所がグラフ化したもの)。
重症者数もわずかに増えてはいるが、その数は期間トータルで新規感染者増の1%以下。
では、「中高年齢層への広がり」はどうか?
まず、7月2日~8日における年代別割合は以下のとおり。
次に7月22日~28日は以下のとおり。
若干の広がりは見られるものの、著明な変化はない。
さらに、(新型コロナと確認されている訳ではないが)夏風邪程度の症状の患者が増えているという開業医の方のSNSへの投稿も幾つか目にする。重症者用病床が満杯になったという話も聞かない。
やはり、そろそろ冷静な目で現在の感染者増の中身を議論すべき時が来ている。
この新型コロナウイルス・パンデミックの着地点について、4月の時点で米ハーバード大学は終息に2年かかることを予測した(AFP)。集団免疫獲得のために断続的なソーシャル・ディスタンスが必要としたものだ。日本でも「犠牲者を少なくしながら感染経験者を増やしていく戦略」(Yahoo)を考慮する必要性が免疫学者から指摘されている。
誰しも今の状況が長引くのは嫌だ。早くスッキリさせてほしいと皆が願っている。
しかし、叶う願いもあれば叶わない願いもある。
現実を見つめたとき、やはり長期戦を改めて覚悟する必要があることがはっきりとしつつある。そうした中で、今の感染者増ばかりを伝える報道のやり方、そして、これについてきちんと見解を発表しない政府の出方は、社会にとってマイナスでしかない。
政府は敢えて口にしていないが、新規感染者増にもかかわらず緊急事態宣言はほぼ否定し、一方でGoToキャンペーンは開始しているところをみると、ハーバード大の報告のような捉え方のもと、ある程度の感染拡大は容認しているのであろう。
経済の壊滅も社会に別の死をもたらすものなのだから、その選択も万やむを得ないものとして当然あり得る。
しかし、それを正面から説明しないでなし崩しに行うのでは国民の間の疑心暗鬼は払拭されない。
政府は、医療システムを維持できる範囲であれば、新規感染者増は一定程度容認し、コントロールしながら集団免疫獲得の長い道のりを歩くしかないことを国民に説明すべきだ。その政策を現に取っているのだから。