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私たちはオズに怯えるエメラルドの都の住人だ

未確定のことが多い新型コロナウイルス感染症。

ただ、偽りのない一つの真実がある。それは、日本では、欧米とは別の疾患といっていいほど病態が異なるという事実。感染率も低く、病態もはるかに軽い。

 

ところが、マスコミ主導により、欧米の病態と混同された議論が多くなされ、それが患者だけでなく医療者さえも新型コロナから遠ざけている。

相当数の医師の方々が、病院で、また開業医として、現実にコロナと向き合ってくださっており、大変心強い限りなのだが、残念ながら世の中すべてがそうではない。

 

かといって、そこを非難するつもりもない。誰しも未知のものは怖いし、それが風評被害を呼ぶとなれば余計にそうだろう。

弁護士もきれいな仕事ばかりではなく、ヤミ金やら暴力団やら凶暴なDV配偶者やらと向き合わなくてはならない時もあり、できれば正直やりたくないと思いつつもなけなしのプライドで対峙したり、時には回避したりもしていたので、新型コロナ診療を回避されるそのお気持ちは痛いほどわかる。経済的にもマイナスとなり、看護師などの従業員が離職する可能性もあるとなれば尚更だ。

 

しかし、欧米の患者数や病床数、欧米における工夫などを調査・分析すると、適切な医療体制さえ整えば、日本における患者数であるならば、多くの人を路頭に迷わすような強力な措置をとることなく、乗り切ることも不可能ではないかもしれない。

 

そして、その対応策についても医師の方々にご意見をお聞きして提案としてまとめたりもしてきた(「死亡者を減らし、医療崩壊を防ぐための5つの方法」)。

 

そういった対応策をとるための最大のネックは、春先からずっと継続している歪んだ情報の蔓延。

 

例えば、日本と比べればはるかに強毒的で、若年層にも血栓その他で重篤な状況をもたらす欧米の症例に関する情報が、まるで日本で起きているかのごとく伝えられてきた。

そして、欧米と日本との差別化要因については無視されている。新型コロナにおいては、肥満と喫煙が重症化要因であるところ、特にアメリカなどでは、日本人の常識では考えられないような肥満者が、若年者から老年層までゴロゴロしているのに対し、日本では特に若年層には病的肥満者はほとんどいない。

そういったこともあってか10代以下の死亡者はゼロ、20代でも2人にとどまり、30代でも9名なのだ。

 

さらに、悪い情報だけが大々的に取り上げられ、有利な情報は伝えられない。

たとえば、春先に比べてステロイドや抗血栓薬など効果的な対症療法が定着してきており、重症者の主力である高齢者の死亡率も低下している。

 

ところが、こういった正しい情報がワイドショーをはじめとするテレビにしか情報源のない方には伝わらず、世代間に情報格差が生じている。そして、やみくもに新型コロナを怖がる風潮が一向に改まらない。

 

そういった情報の不均衡からくる一部の方々(とはいっても日本全体ではすさまじい人数)の偏見が、医療者さえも新型コロナから遠ざけている。先に述べた通り、風評被害からくる差別が存在するからだ。

ある開業医の方が、優秀で患者さんからも人気者だった事務職員の方がスーパーの買い物中に心ない罵声を浴びるなどが続き、辞めてしまったと嘆かれていた。大阪の十三市民病院に勤務する医療者・事務職などにも多くの差別や嫌がらせがなされた。

 

こういったことが、国民の医療アクセスを阻害し、ならなくても良かったはずの重症化を招き、死ななくても済んだはずの死亡例を生んでいるのだ。

 

ところが、医療の専門家は、コロナの病態を正しく伝えることがコロナ軽視を呼び、感染拡大を止まらなくすると眉をひそめる傾向にある。恐怖を伝えることが、感染拡大を防止するための唯一の方法だと。

だがそれは、逆ではないか?

必要以上に怖がられているが故に、正しい対処すらなされれば制御可能な感染症が、逆に誰も手を出せない存在となっていないか。

 

まるで日本中が、ただの人間に過ぎない「オズの魔法使い」に怯えて支配されているエメラルドの都の住人になってしまっているようだ。

 

先般、維新の会の勉強会で、関西で開業され、コロナ診療に取り組んでおられる医師の方のお話をお聞きしてその思いを強くした。

 

新型コロナを過剰に恐れる風潮が、風評被害を産むため、初期診療に取り組む開業医を少なくしているというのだ。

早期に治療が開始されれば、デキサメタゾンやフサンなどの投与で重症化を防げる。日本にはPCR検査だけでなく、CTも抗原検査もある。

そうして、自宅待機で済む方を増やせば、最も資源としては少ないICUまで備えた重症者用施設の利用率を低下させることができ、医療崩壊も回避できるというのに。

 

最近ニュースに登場することがなくなったあのWHOのヒゲのおじさんが騒いでいた「検査、検査、検査」ではなく、「診察、検査、治療」が大事なのだ。

 

その「診察、検査、治療」を妨げているのが初期診療施設(簡単に言えば「街角の医院」)の少なさであり、その少なさの原因は偏見と差別からくる風評被害であり、さらにその原因は偏ったマスコミ報道にあり、そしてその最終原因は正しい病態評価に関する情報不足にある。

 

長くなったが、最後にLANCET呼吸器内科に掲載されている論文を紹介しておく(原著:Comparison of the characteristics, morbidity, and mortality of COVID-19 and seasonal influenza: a nationwide, population-based retrospective cohort study)。フランスのデータなのでそのまま日本に当てはまるものではないが、結構驚くような内容だ。入院患者同士で比較した場合(母数 コロナ89,530:インフル45,819)、合併症として

 

・呼吸不全や塞栓系はコロナの方が多い

・心疾患はインフルの方が多い。

・脳卒中はイーブン

・人工呼吸管理やICU管理はコロナの方が多いがインフルも結構いる

・死亡はコロナの方が多いが人工呼吸器管理されるとインフルと大差ない

コロナだけを恐れている高齢者の方がおられるが、結局、入院にまで至るとインフルエンザも大差ないというのが結論だろう。なお、この場合にはフランスのデータというところに意味がある。それは、フランスの方が明らかに新型コロナウイルス感染症の病態が重いので、日本においてはよりインフルエンザの病態に接近することが予想されるからだ。

 

結局、新型コロナを必要以上に恐れる今の風潮こそ、医療者も感染者も適切な医療から遠ざけ、逆に医療崩壊に近付けてしまっているのではないか。

 

合理的なやり方を医療の側でも工夫され(自宅待機者への遠隔診療もその一つ)、より多くの医療者の方が取り組めば、この感染症は日本では医療崩壊を起こさずに乗り切れる可能性がある。

 

最後に、そうお考えの現場の医師の方の声が幾つか寄せられていることを申し添えさせていただく。