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熱狂の伝播が何を産むのか。

 参院選後,恐れている事態が静かに現実化しつつある。立憲民主党に変わり,まるでリベラル・市民派層の救世主のように山本太郎氏が登場し,コアな層受けする政策を徹底的に訴えて新たなる熱狂を生んだ。

 今度の選挙では,政治に特に関心のない,いわば普通の国民層の興味が失われている結果が投票率50%割れに表れ,政治に熱心な層の熱狂がSNSでの山本太郎ブームとなって,れいわ新撰組2議席獲得という結果を生んだ。山本太郎氏のパフォーマンスは,現実対応を最優先事項とし,理念や将来像を明確にしない,究極のご都合主義ともいえる安倍政権が長く続いていることに対するリベラル・市民派層の不満のはけ口となったといっていいだろう。

 だが問題は,これから。衆院選に大量の候補者を擁立するとも伝えられているが,立憲民主党など各野党もその方向に引きずられ,全体として野党のポピュリズム色がより強まることが懸念される。

 庶民の味方を強く訴えたポピュリズム政治家の代表の1人がベネズエラのチャベス前大統領。豊かな石油資源大国であるベネズエラは,チャベス,マドゥロ現大統領と続いたポピュリズム政治家によるバラマキ政策などによって徹底的に破壊されてしまった。
 「昨年まで100円で買えたものが1月末には2億6800万円になった」(「ハイパーインフレで「地獄」と化したベネズエラ」より引用)。庶民の心を揺さぶった庶民の味方が,庶民の生活を困窮の極みに突き落としたのだ。

 政治家のすぐれた演説が国民の心を鼓舞するのは勿論だ。だが,演説が国民を救うのではない。その政策が,何をもたらすのか。少なくとも,財政・経済政策の前には計算が前提の現実がそびえている。それを無視したとき,一見庶民よりの政策が何をもたらすのか。ベネズエラに,その答えの一つをみることができる。

 

 政治の本質は理念に導かれた「政策」にある。現実を静かに見つめ最善の努力でベストの結果を得ようとする努力の積み重ねだろう。政治家・政党が「票が取れる」ことを第一義においた政策を喧伝し,そしてその目的が成功してしまったとき,国の将来は歪むこととなる。