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東京都の新規感染者増はどう解釈すべきか?

ご承知のとおり,7月2日以来連続して東京都の新規感染者数が100人を超え,マスコミがこれを大々的に報じ,SNSでも新型コロナに関心が高い層の心配を呼んでいる。

だが,この数字,果たして額面通り受け取って良いか?

 

これに影響を与えていそうなものとしてまず挙げられるのがPCR検査の拡大。6月から医療機関経由のものがかなり増えていて,10日間毎に平均すると6月初旬で1500人前後,7月に入ってからは1757人。したがって,数の増加は200件程度であまり数としては増えてはいない。

 

ただし,増加分についての陽性率によってはかなり結果が左右される。

ここで,注目されるのが新宿区での陽性率。いわゆる「夜の街」の筆頭格である「歌舞伎町」を抱える新宿区はいわばHot Spot。ここで始められたのが,陽性者であることが判明すると10万円が給付される,というよくわからない事業(bloomberg)。

陽性率が都全体では4.5%(7月5日現在)に過ぎないのに,新宿地域では20%を超えるという(NHK)。

 

この新しい施策によって,高い陽性率の新宿地域でのPCR検査数が増え,今まで水面下に隠れていた氷山の一角,実は多数派であった暗数が姿を現したに過ぎない可能性もある。

 

この人数拡大を深刻に受け止めるべきか否かのもう一つの指標が重症例の推移。東京都の発表している数字(旧モニタリング指標(6))を見ると,6月23日に20人であったものが徐々に減り始め,7月2日に9人となってからその数字は動いていない。

念のため私の事務所で東京都福祉保健局感染症対策課に問い合わせたところ,その数字どおりで新規感染者の内,重症者(集中治療室等での管理または人工呼吸器管理が必要な患者)はなく、無症候者が1割~多くても2割程度であり、大多数が軽症例である,とのことであった。

 

やはり最近の欧米の実態と日本の実態はかなり違う。現状の新規感染者に重症例が少ないというか無いことを前提とする限り,新規感染者の「数」ばかり取り上げて大騒ぎする必要はなさそうだし,ましてや外出制限・休業要請の必要もないだろう。

 

あくまで可能性の一つではあるが,過去のインフルエンザで見られたように重症化するタイプが駆逐され,軽症で済むタイプに置き換わることがある。重症化させてばかりいては感染を蔓延させることもできずに宿主を殺してしまうからだ。そういうことが起きている可能性もあるかも知れない。

 また,別の話ではあるが,京都大学の上久保特任教授は,軽症例ばかりという事実が,日本人が既に免疫を獲得している事実を示しており,免疫を活性化し続けるためにも一定程度の感染が継続することはむしろ望ましいとの説を示しておられる。この説の当否は未だ確定していないが,経済的な影響は新型コロナウイルスの感染に伴う病態やその結果との比較に照らして考えるべきともおっしゃっており,こちらは証明の問題ではなく,政策における比較衡量の問題であって,特に異論を挟む余地はないだろう。

 

報道においては,表面だけでなく,その背後に隠れた事実に迫るものであってもらいたい。

政策においては,都知事選も終わったことであるし,パフォーマンスではなく,真実と必要性の観点から,地に足をつけたものを実践していただきたい。