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日本に関するFACT CHECK

知人より日本の貧困と消費税についてお尋ねをいただいた。

消費税が貧困や格差を助長しているのではないか?との内容だ。そこで、やりとりをさせていただいたのだが、折角なのでここで紹介させていただく。

 

まずはFACTをチェックしてみてください。日本の貧困問題、本当に拡大していますか?野党やマスコミは政権批判のために常に粗探しを行ってそれを政策のせいにしています。それが事実でしょうか。

日本の一人当たりGDPは何位かご存知ですか?

 

実は世界で23位に過ぎません。OECD諸国でいえば下位層なのです。

そのポジションで、例えばアメリカと比べれば信じられないほど社会福祉は充実しています。病気や失業、本当に困った時に社会福祉の手が必ず差し伸べられて生きていくのには絶対に困らないのはご存知のはず。たまに新聞沙汰になるようなケースは、本来差し伸べられるべき手が差し伸べられなかったもので、そもそもそういうメニューがないアメリカなどとは根本的に異なります。

 

また、いいとこ取りで比べられる北欧などの消費税は25%、しかも一人当たりGDPは日本よりはるか上です。社会保障とは、国民全てが保険料を払っていざという時に備えているようなもの。豊かな国の国民が、ふんだんに保険料を支払ってシェアしているものと比べてもどうしようもありません。さして豊かではない国の国民が保険料をケチっているのですから、シェアされるものが少ないのも当たり前なのです。

 

ぜひ「FACT FULLNESS」(ハンス・ロスリング他著)をお読みください。私たちが、私たちより上の世代の努力でどこからどこに上ってきたのかがよくわかります。

私の子供の頃は道路も舗装されておらず穴ぼこだらけ。電話は半径100mの近隣の中で1台だけ。何かあると呼びに来てくれるトトロの世界です。

脳卒中の後は自宅の布団で寝たきり。ドリフの世界です。

生活保護世帯でさえ携帯電話を持っている今の暮らしは貧困と呼べるものではありません。見ているところをどこに置くかの問題です。

日本の現状、企業や人の間で所得や富の格差が広がりつつあるのはおっしゃる通りですが、これは日本に限ったものではなく、消費税の高い安いも関係なく世界的傾向です。最も格差が拡大しているアメリカは、消費税は州によってあったりなかったり、EUに比べて遥かに低い税率ですが、世界一の格差社会。

貧困層は水道も止められもらい水で体を洗っています(BBC)。

 

逆に消費税が高水準のEUでも格差が拡大しているのはピケティが指摘している通りです。

 

これらは全て企業や人を取り巻く競争環境が激しくなり、また変化の度合いが大きくなっていることに起因します。成功や失敗の度合いがとても大きくなっているので、お金が貯まる人や企業はどんと貯まる、失うものはどんと失うのです。

 

また、日本の労働における格差の本当の問題は、正規と非正規の格差。

しかし、それも非正規を認めてきた中曽根、小泉政権だけが悪いかといえば、これは実は大企業労働組合との合作です。貴殿も経営者なのでお分かりかもしれませんが、今の変化の激しい時代、正規労働者を雇うことは、経営者側に多大なリスクです。いつ経営状況が変化するかわからないのに、解雇がほとんど認められないのであれば、怖くて人は雇えません。好調な時にきちんと待遇するのは全く構いませんが、経営者の努力だけでは時代の変化には対応できないのです。

昔のように変化が少ない時代であれば良かったのですが、どんな大企業でも5年先の変化が見えない今の時代に、日本の硬直した労働慣行は全くついて行っていないのです。

そこを埋めるために抜け道的に派遣を認めたのが、いかにも日本的やり方でした。

ただし、それは労働者全体にとっては不利なやり方でした。ピンはねされる分が総体としてどんと乗ってきたのですから。

ですから、労働者層の取り分を増やし、格差拡大を減らそうと思えば、正社員への厳格過ぎる解雇規制を緩め、派遣を無くして行くのがもっとも速いのですが、これには既得権益の最たるものみたいな連合が立ちはだかりますし、ステレオタイプの批判を繰り返す左派リベラル層の総攻撃を受けるでしょう。

本当はその方たちのことを思ってのことであったとしても。

 

長くなりましたが、リベラルが正しいと思ってきたことに実は問題があることも多く、だからこそ現実政党としての自民党が多数を占めていることに早くリベラルも気づくべきなのです。

日本の左側が言っていることは世界標準ではありません。昔の全共闘世代が、自分たちが正義で保守側は悪だと思い込んでいたそのままが、大してバージョンアップされずに続いているのが現実ですし、だからこそ政権交代もろくにされないのです。

少し違う方向に着地しましたが、ぜひ「FACT FULLNESS」は読んで見てください。