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新しい政治の胎動・医療の民主化改革

新しい政治の胎動が見えてきた。国会での論戦を見ても,高齢化社会が益々亢進する一方で,経済成長は縮小過程にあるこれからの日本に対応した社会保障制度の改革に,正面から取り組もうとしている政党は与野党共にない。しかし,日本の政治課題の筆頭は、社会保障の維持と高齢化社会に対応する制度への改革であることは間違いない。

そして遂に,この重い課題に正面から取り組もうとする野党議員の動きが始まった。

 

 近時,年金2000万円が話題となった。年金制度についても,検証と改革は必要だが,社会保障制度の中でも、まず最初に取り組むべきは医療制度改革であろう。年金は、その水準が徐々に切り下がっていくという見通しはあるものの,制度自体は当面維持できそうな制度設計になっている。しかし、医療費の増加は国家財政を膨張させ,財政不均衡を拡大し,国家財政破綻の原因ともなりかねない。少し詳しく見ていくと,現在の国家予算(一般会計:基礎的財政支出対象経費)の中で平成を通して一貫して伸びているのは社会保障費だけ。ここ5年は多少伸び率が低下しているが、それでも毎年1.4〜3.3%の伸びを示している。防衛費を除くほどんどの費目がマイナスの伸び率となっている中で、突出した数字だ。額的にも2019年度予算で34兆円(以下いずれも兆円未満四捨五入)、一般会計歳出全体の33%を占めている。2013年では19兆円だったので、倍増近い。同様に増えたのは17兆円だった国債費が24兆円に増えたこと。平成15年一般会計歳出は81兆円。本年度歳出との差額は20兆円。予算が20%増しになった原因は、社会保障費と国債費が増えたからなのだ。

 

 高齢者層が増大すれば、医療費が増大する。年齢階層別の一人当たり医療費が、65歳未満全体が18万円であるのに対し、65歳以上全体は73万円。4倍にも上る。また、75歳以上全体は91万円と、高齢者では年齢構成が上がっていくほど医療費も増加していく。(厚労省「平成28年度国民医療費の概況」)。本年度予算社会保障費34兆円のうち、医療給付費は12兆円と3分の1。そのうち5兆円が後期高齢者医療制度の国費負担分だ。ここが膨らめば社会保障費も自然と膨らんでいく。全体としての人口減少による医療給付の減少もあろうが,人口減は若年層の減少によるもの。0~14歳は16万円,15~44歳は12万円であるため,若年層にかかる医療費は高齢者世代の1/6に過ぎない。この層の人口が減少するよりも高齢者層が増大する方が,全体の医療費を膨らませる。

 

 言うまでもないが日本の医療保険制度は諸外国と比べて,決して劣っているものではない。健康保険であっても,全国均一の医療が受けられる。オプジーボで話題となったが,多額の費用がかかる先進医療までも幅広くカバーされている。自己負担があるといっても,高額療養費の自己負担限度額制度があり,どんなに費用が嵩んでも自己負担が一定額以上になることはない。また,難病指定されれば医療費が助成される。収入が減少する高齢者世代には後期高齢者医療制度が用意されている。至れり尽くせりといった感じで,医療費が無料の北欧などに比べても,遜色はないというのが正当な評価であろう。

しかし、先に述べたとおり、高齢者人口の増大により、近い将来、制度自体が財政的に持たなくなる恐れがある。財政的な収支を改善しようと思えばやる事は二つしかない。収入を増やす、つまりは国民負担率を上げていくか、支出を抑えていくかだ。

既に自己負担率は3割に達していることを考えれば、まずは支出を抑えるための最大限の努力や工夫を行うべきであろう。

 

 冒頭述べたとおり,この重い課題に正面から向き合い、検討を進めてこられた国会議員有志の方々が,「『医療の民主化』改革で,次世代に責任ある政治を実現する議員連盟」を立ち上げられ,私も参加させていただいた。呼びかけ人は,(立憲民主党)青柳,篠原、(国民民主党)小熊,青山大人,源馬,(社会保障を立て直す国民会議)井出,重徳,中島各議員。会長は野田佳彦元総理が就かれている。

 

 この議連の具体策は,「かかりつけ医制度の創設」。この構想は、EUなどの「家庭医」制度に着想を得たものであろう。普段から健康の相談に乗ることのできる特定の専門を持たない医師のことを家庭医と呼ぶ。ヨーロッパでは、医師は病院のspecialist(専門医)と診療所のgeneral practitioner(一般医)の2種類に大別され、後者が家庭医の役割を果たしている。一般医は特定の診療科を専門とせず総合的に診断治療するので最近日本では総合医と呼ばれるようになっている(以上は一圓光彌「ヨーロッパの医療補償制度と家庭医制度」より)。

この家庭医制度を中心に,医療制度を治療から予防に転換する,「医療の民主化」というべき改革を進めよう,というものだ。

 

 厚労省においても,この構想は検討されていることが先日日経で報道された(「かかりつけ医を定額制に 過剰な診療抑制 厚労省検討」)。

その記事にも触れられていたが,この構想には医師会の反対が予想される。しかし,「業界本意の医療からの決別」を議連が掲げておられるとおり,高齢化社会を迎え,日本の医療制度にも国民目線での改革が必要なことは明らかである。

 

 この取り組みをきっかけとして,既得権益や党利党略からFreeの立場で,日本の未来をしっかりと立て直していく政治の動きが加速することが強く望まれる。