消費税撤廃を訴える新党を応援する一部ジャーナリストが、立憲民主党と国民民主党を批判している。誰もが自分の主張を自由に行い意見を戦わせるのが民主主義なので、批判についてとやかく言うつもりは一切ない。ただ、問題は、その批判の根幹部分が法制度に対する誤解(意図的かどうかは不明だが)で成り立っているところだ。
彼らの主張を簡単にまとめれば、輸出企業は消費税分の「輸出戻し税」が国庫から入るので、消費税が上がれば上がるほど黙っていても儲かる、だからトヨタ自動車労組出身の連合事務局長も消費増税を要請した、労使一体の連合は経団連の手先、先の両党も同類との批判だ。
しかし、輸出戻し税とは、当該輸出企業が、下請業者・部品納入業者などに自ら支払った消費税が戻って来ているだけ。
消費税は、本来、最終消費者が負担する仕組みである。マクドナルドなどのサービス業でも、原材料を仕入れる際には仕入れ価格に、当然、消費税が含まれている。その分を全部販売価格に転嫁しているので、負担しているのは最終消費者。
ところが輸出品の場合には、海外の事業者や消費者に負担を転嫁できない。だから自分が支払った分が還付されているだけ。仮に消費税が廃止されれば、下請業者に消費税分を支払うこともなくなるので還付もなくなる。損も得もないのだ。
無理やり輸出業者に得があると説明しているWEBを見ると、下請け企業に無理な値下げを迫り、消費税を実質的に負担させているので輸出企業はやはり儲けている、と説明したりしている。そのような実態もあることは確かで下請け・納入業者に消費税分負担を押しつける行為は政府・税務当局によっても厳しく指導・是正されてきた。だが、それは垂直的な企業構造の問題であって消費税があってもなくても同じこと。税の仕組みとは本質的には関わりはない。
安倍政権の問題点は、政策の真の狙いというか動機を国民に正しく説明していないこと。それを批判している野党側も政策を正しく説明することは大事だし、相手を批判する以上よりその姿勢は必要。イギリスでは、ブレグジットを問うた国民投票の際に「週に3億5000万ポンドEUに支払っている」と不正確な説明を行って国民を扇動したという民間人からの告発を受け、元外相が訴追されている。日本でも、政策に関するコレクトネスは当然必要。不正確な情報で国民を煽ることは、仮にある勢力に選挙で有利となったとしても、国民の未来を損ねるだろう。