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古くて新しい問題を解決しよう

最近すっかり下火になったカルロスゴーン氏を巡る問題。彼が日産の社長に電撃的に就任した当時一躍時代の寵児になったのは,天下り・系列取引による競争力低下で数兆円の負債を抱え倒産すらも噂された日産自動車に乗り込み,その前時代的慣行を断ち切って日産を再生させたからであった。しがらみに囚われた日本人経営者では出来なかったこと,仲間内だけが得をする既得権益の構造をぶち壊したのだった。

 

翻って,今の日本は,その当時の日産よりもさらに強く既得権益や利益誘導のバリアに何重にも囲まれていて,それによって窒息寸前なのではないか。そしてそれは政治が中心だ。

問題は小から大に至るまで広範なものであり,そしてそれは与野党を問わない。

 

桜を見る会の問題もその一つ。政権を握ったものが,支持層に対する利益誘導の一手段として公費で支援者を招待する。利益誘導政治そのものであるが,これは民主党政権時代にも規模はかなり小規模ながら行われていたもの。そういう文化が日本には根付いてしまっている。

 

もっと問題なのは相も変わらぬ土建政治。景気底上げのために大型補正予算を安倍首相は組むと言うが,その使い道は公共事業。結局は自民党の票田である土木建築関係者だけが潤い,自民党の票はより強固となる。一方で,財政への負担は更に増す。これに対する警鐘は,外資系メディアが目立たず報じるだけ(「今年度補正予算、第2次安倍政権下で最大規模も-埋没する財政懸念」Bloomberg)。既得権益に対する利益誘導そのものが巨大な規模で行われ続けている。

 

これと並ぶ既得権益の牙城は診療報酬。日本の財政を悪化させる一方の社会保障費の大半を占める医療費にメスが入っていかないのはその現れ。医療費の中で,薬価こそ毎年引き下げられているが,診療報酬はマイナス改定されていない。そこには最強の既得権益団体である日本医師会の政治力が働いており,与党もそこを突破することは出来ないようだ(もっとも野党もこれを批判しているようには見えない)。

 

一方の野党も既得権益への配慮や有権者への利益誘導では負けてはいない。現在合流協議が進められている立憲民主党と国民民主党では,例えば原発政策で言葉以上の差異がある。国民民主党は,原発を従来通り稼働させたい電力労連が強力なバックシートドライバーとして実権を握っており,そこに配慮せざるを得ないため国民民主党が原発廃止政策に本気で取り組むことは望めない。原発廃止に取り組む議員は徹底的に排除するというのが彼らのやり方だ。

 

そして,野党の最大の利益誘導は,財源の裏付けのない減税と,本来は減税と相反する社会保障や教育の充実というアピール。この手法で国民を煽動した野党が政権を取ることがある中南米では,その後たいてい通貨安やインフレで国がガタガタになる。一方で先進国,特にEUには厳しい財政ルールがあるので甘い話を振りまく政党が政権を握ることやこれを実施に移すことは極めて困難。ギリシャのように国家的不正会計でもしなければ無茶なバラマキ政策は行えないが,日本では財政ルールはあってないようなもの,国債と日銀という打ち出の小槌がある以上,これを使わない手はないというような主張が目立ち始めているのは要注意だ。

 

さて,今更なぜこの古くて新しい問題を述べたのか。政治家の訃報を報じた新聞記事などで,相も変わらず政治家の功績といえば地元に何をもたらしたのか-どんな道路を作ったのか,どんな施設を作ったのか-が取り沙汰され,それを「桜を見る会」は鋭く追求するマスコミも,政治家の追悼記事などでは平気で書いているのを目にして,そんな旧態依然のものの見方がまったく変わっていないことをつくづく感じたから。

 

私が言うまでもなく,これからの令和は,日本にとって冬の時代。春や夏ならば放っておいても草木は茂る。しかし,冬に向かう今,縮小する国富における限られた財源から何を選択し,今の日本の繁栄をどう続けていくのか政治も行政も智慧を絞らなければならない。

道路の作り方一つをとっても,大手の土木業者に大きな利益を確保させて派手ではあるがガラガラの高速道路を作るのか,地味ではあるが市民生活に欠かせない街中の道路に安全な歩道を確保して生活の質を高めていくのか,そういった一つ一つの選択を既得権益への配慮や利益誘導から離れて行うことがこれからの政治家や政党に求められるところであろう。

「既得権益に配慮しない」「国民においしい話ばかり振りまかない」「煽動的報道に振り回されない」そんなスローガンを堂々と打ち立て,実行する。そんな政党が正面から安倍政権と選挙で対峙する。そこに日本の活路が開けるだろう。