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内閣支持率48%解散はありえない。報道の質の劣化

    今朝のNHKニュースは,「内閣支持率堅調 与野党から「衆参同日選」との見方」と題して,世論調査で内閣支持率が48%と好調だったことを理由として解散が強まったと繰り返し報じていた。しかし,その好調さというのも前月から僅か1ポイント上がっただけ。にもかかわらず,NHKは「今月の内閣支持率が48%だったことをめぐり、与野党からは安倍総理大臣が夏の参議院選挙にあわせて「衆参同日選挙」に打って出る可能性が高まっているとの見方が出ており」と大々的に報じているのだ。

 

 いったい今のNHKには,公正な報道機関として,視聴者にしっかりとしたものの見方を伝えるという責任感があるのだろうか?

 現状,衆議院の任期を2年余も残した段階であると共に,与党が絶対多数を握って安定した政権運営を行っており,国民に信を問うべき状況にはない。また,政策的に緊急に浮上した争点もない。したがって,解散の必要性は見受けられない。解散の口実として時折巷間噂に上る消費税凍結については,「リーマンショック級の事態」が生じているか否か,という高度に政治的な情勢判断の問題であって,税率上げ自体は法定事項である。その使途も既に選挙の争点とされて閣議決定済みの幼児教育無償化などの財源とされることが決まっており,その是非について改めて選挙を行い民意を問う段階ではとうにない。解散の必要性など皆無である。

 

 そもそも,内閣総理大臣の任意的裁量に基づく解散は,憲法7条を根拠にしたもの(内閣不信任案に対抗するための69条解散は,任意的裁量ではない。あくまで内閣不信任案可決が条件)。ところが,憲法7条とは,憲法4条の規定を受けて天皇の国事行為を列挙したという体裁である(「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。」)。その3号に衆議院の解散が挙げられているのであるが,文理解釈からすれば,この規定で内閣(=内閣総理大臣)の解散権を認めたと解するには少々無理がある。

 そのような背景があるため,仮に議院内閣制の趣旨などから7条解散が許されると解する立場にたったとしても,単に「内閣支持率が堅調で選挙に有利」というだけで恣意的な解散が行われたとすれば,明らかに裁量権の逸脱にあたるだろう。

 

 以上によれば,「内閣支持率が堅調」という理由だけで解散することなど許されるはずもない。そのようなことがあったとしたら,それは党利党略の極みであり,解散権の乱用である。このことは,多少の法的知識を備え,かつ現在に至るまでの議論を知っている者からすれば明らかである。にもかかわらず,批判的論調を加えることすらなく,さも当たり前のことであるかのように堂々と報道したということは,報道機関として「物を考えていない」ということの自白に等しい。

 

 念のため述べれば,今回の報道は,安倍首相ないしは安倍政権の閣僚から出てきたものではないので,安倍首相もしくは政権中枢に問題があるというつもりはない。問題は,そのような「党利党略的」な解散がさも当然であるかのような報道の仕方であり,付言すればそれについて,きちんと批判しない与野党各党のコメントにある。

 内閣支持率解散,党利党略解散が当然と,仮に政権中枢が発言したとしたら,それは大失言として報じられるであろう。ところが,報道機関自身がそのような報道を根拠も示さず行うことの問題点には,何も気づいていないし,批判の声もあがっていない。これが報道機関の劣化といわずして何というべきなのであろうか。