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何人死者が出れば診療拒否を止めるのか

大相撲の勝武士さんが亡くなった。28歳の若さであった。20代の若者の死亡は国内初だという。

将来ある若者が亡くなられたのはまことに残念な限りであり、心からご冥福をお祈りする。

 そして、この残念な結果は、今の医療体制に大きな問題があることを示している。

 

 それは、「軽症患者の診療拒否」「救急患者の受け入れ拒否」が蔓延しているということ。

「PCR検査」のみを取り上げて大騒ぎしているマスコミや国会の陰に隠れているが、今の医療体制の最大の問題は、医療機関が新型コロナウイルスという疾患の取り扱いを事実上拒否していることなのだ。

 感染者病棟の医療者たちの献身の陰に隠れて、実は一般的な医療拒否が横行している。

 

 発熱や咳などが出始めた軽症者が、律儀に電話で診療の可否を市井の医院に訪ねても拒否される。

発熱や咳が悪化し、呼吸が困難になってきて救急搬送されても受け入れ先はない。運良く受け入れられても自宅に帰される。

 糖尿病の持病があったという勝武士さんの場合も、4月4日から38度台の発熱があり、師匠が保健所に電話をしたり、近隣の医院、病院を依頼、相談したが診てもらえず、8日になって血痰まで出て救急車を呼んだが夜まで受け入れ先が決まらなかったという。19日に状態が悪化し、ICUで治療を受けることになり、結局5月13日に死亡したとのことだ(日刊スポーツ)。

 上記経過でどこまで早期治療が功を奏したかはわからないが、血痰は肺血栓塞栓症の症状の一つ。コロナウイルス感染に血栓の合併症が伴うことがクローズアップされている今、血液検査の結果によっては抗血栓薬治療はできただろうし、CT所見などによって適切な対症療法を行えば、最悪の結果は回避できたかもしれない。

 

 初期にワイドショーが「PCR検査」の大合唱を繰り返したため、世論がおかしな方向に誘導され、本来問題とされるべき「軽症者に対する診療拒否」「救急患者に対する受け入れ拒否」という大問題がなおざりとされているというかマスクされてしまっている。それはマスコミ報道においても、国会論戦においても同じ。

 

 そもそもPCR検査は、新型コロナウイルス感染の確定診断のために必要な手段に過ぎず、症状から新型コロナウイルス感染が疑われる患者の治療には必須なものではない。一昔前まではインフルエンザの簡易キットによる迅速診断など一切行われていなかったが、みんな患者は高熱その他の症状で「疑い診断」で治療が進められた。新型コロナウイルスも同じこと。

 「PCR検査拒否」ではなく、「新型コロナウイルス感染疑い患者の診療拒否・受け入れ拒否」こそ大問題であることを、皆が理解すべき。そして、そこを改善することに政府・厚労省は全力を挙げるべきなのだ。