令和3年の敗戦

何故こんなに時間が経つのに医療体制を整えられないのか?という疑問をある方より頂戴した。
私もかねがね厚労大臣や厚労省と厚労委員会の質疑などを積み重ねる中で、「何故出来ないのか?」、そして。「何故やろうとしないのか?」が常々疑問だった。

欧米よりはるかに少ない陽性者数と重症者数と死者数。春にあっという間にコロナ用ICUを増床したドイツは、スペインやフランスの患者さえも受け入れている。日本よりは遥かに多い自国患者があるというのに。

その答えは、組織と人の在り方がダメダメだから。

厚労省には(というか中央官庁には)自分たちで地平を切り拓いて問題を解決しようという気持ちは皆無。

それが日本の命運を掛けたようなものであったとしても、だ。

他の誰か、ではなく自分が中心となり、新しいアイディアを出して、それを所管横断的に展開して実現しようとする気持ちもまるでない。

そして、仮にそういった稀有な開拓者精神を持つ官僚がいたとしてもそれはたぶん不可能。

二言目には必ず「所管が違うので別のものから」という言葉が返ってくる。彼らの組織にはまさに「縦割り」が染み付いて、ガラスのように固形化しているのだ。

この問題を切り開くには、官庁内の縦割りの所管を越える必要がある。また、仮にさらに陽性者数が増える第何波かに襲われれば、地方自治体の壁も越えなければならないだろう。

しかし、致命的なのは、彼らがそもそも壁を越える気持ちのない羊の群れであること。気持ちが無ければそれは到底無理。

猪瀬直樹の「『昭和16年夏の敗戦 総力戦研究所”模擬内閣”の日米戦必敗の予測』に描かれた日本の行政(政府組織)の問題が、80年経った今もそのまま存在している。

そして、欧米に比べれば数段容易とも思える新型コロナとの戦いに敗け戦さを続けているのだ。