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ワクチン・集団免疫に過剰な期待は無理。ゴールの再設定を。

ワクチンの臨床応用が目の前に迫ってきた。

一方で、このところ既感染者が再感染したという海外からの報道を幾つも見かけるようになった(BBCNewsweek中國)。

 

そもそも、RNAウイルスは変異がよくあるから、ワクチンが出来ても、この報告例と同じく、再感染までは防げないと考えるのが普通だろう。

分科会の尾身氏も、

「これから徐々にわかってくるということ。重症化予防効果のみならず、発症予防効果を有することもあり得る。しかし感染予防効果がない可能性もあり、現実を早い段階で、理想的なものは必ずしもないんだと、一般の国民の皆様に周知する必要があるのではと思います」

と話されているところを見ると、インフルエンザワクチンと同じく、重症化しない程度の効果しか期待していないようだ(yahoo)。

 

そうすると、今回のパンデミックのゴールも、再確認する必要がある。

いくらワクチンが広範に接種され(あるいは感染者が増え)、その国で一定の割合に達したからといって、免疫のない人を保護する(感染させない)までの長期的な効果は見込めない(*1)。つまり、よくある集団免疫のイメージ図のように、免疫獲得者が未感染者を取り囲み、壁のようにブロックする(*2)ことは望めないのだ。

また、歴史の長いインフルエンザワクチンにおいてさえその効果について議論が止まず、最新の疫学的研究でも一定の年代に限って重症化低減に有意差が認められる程度であることに鑑みれば、新型コロナウイルスワクチンの重症化予防効果についても、過度な期待はするべきでないだろう。

 

以上によればワクチンの社会的効果としては、医療機関が重症者でパンクする事態を避けることが期待できる程度、ということに止まる。

既感染者による集団免疫的効果も同じことだが、既感染による当該人物に対する重症化予防はより期待できるだろうし、もしかしたら再感染時における他者への感染力も低減するかもしれない。後者については単なる期待に過ぎないのだが。

 

結局、この新型コロナウイルスとの戦いには、ワクチンができようが、集団免疫のようなものが完成しようがすっきりとした終わりはない。

交差免疫、T細胞メモリー、弱毒化、治療技術の進歩、ワクチンや既感染者による集団免疫的要素の増大、これらが相まって、医療機関に負荷の大きなこの感染症の重症者が一人でも少なくなることを願いつつ、重症者用の医療施設を整えて、医療体制を維持していく以外のゴールはないのだ。

 

科学者でもある賢明なるメルケル首相が、「高齢者などのハイリスク者を守るため、医療システムを守ることに取り組まなけらばならない」と3月に既に語ったその時から既に5ヶ月が経過したが、その見通しの確かさに改めて感心せざるを得ない。我が国も、この戦いのゴールを改めて確認する必要があるだろう。

 

 

*1 仮に免疫獲得者が再感染した場合に他者への感染力に変わりがないと仮定した場合。

*2 なお、壁は単なる例えであり、実際には単に実行再生産数の係数が低くなるので伝播しにくくなる、というだけのことのようだ。