青山まさゆきの今を考える > 新着情報 > トゥキディデスの罠

トゥキディデスの罠

新年早々,世界が騒がしい。イランが遂に対米報復に踏み切った。今のところ米軍の被害の詳細は明らかになっていないが,紛争は益々拡大していくだろう(9日朝の時点では幸いにも米軍に人的被害は出なかったようだ)。

コップの中の嵐のように,ゴーン氏の脱出劇やIR疑獄が霞んでしまうかもしれない。

 

このところトランプ大統領の強権的手法がエスカレートしていた。購買力平価換算のGDPでは既にアメリカを抜いて世界一の経済大国とも言える中国。科学技術を含めアメリカと堂々と渡り合えるだけの実力をつけ,次の覇権国となることを虎視眈々と視野に入れているその中国に対し,トランプ大統領は世界を巻き込んだ貿易戦争を繰り広げていた。

それが小休止の構えを見せたところで,今度は圧力をかけ続けてきたイランに対し,国民的人気を誇っていたという精鋭部隊の司令官を殺害するという,驚くべき行動を取った。宗教国家として面子を重んじざるを得ず,また経済封鎖によって対米憎悪を募らせていたであろう国民の手前,イランの最高指導者がこれに対する報復を諮らざるを得ないであろうことは当然に予想できたところである。

中東の大国でありホルムズ海峡に隣接するイランとの間で米国が全面戦争に至れば,イラク戦争を遥かに超える人的被害や混乱が拡がる。世界経済に及ぼす悪影響も多大なものとなるであろう。民主党ペロシ下院議長が,「戦争をしている余裕はない」と警告したそうだが,まさにその通りである(NHK)。

また,「トゥキディデスの罠」によって米中戦争が起きることも心配されているところ,そのきっかけはどこに転がっているかはわからない。英独などの大国同士の対立が根本であった第一次世界大戦の始まりが,ヨーロッパの片隅,サラエボで起きたオーストリア皇太子暗殺事件であったように。アメリカの,空母,巡航ミサイル,そしてミサイル防衛網などで築き上げられてきた圧倒的優位がロシア,中国による超音速ミサイルの開発などにより揺らぎつつある今,軍事的不安定さは以前よりも増している。アメリカが力を落としつつある中,大統領選を前に,トランプ大統領の行動が益々不安定さを増してきたようにも写る。イランを支持するロシアと中国の動向によっては,世界大戦のような大事が絶対に起きないとは誰も保障できないであろう。

日本の政治はこのところ,与野党共に国内だけを向いているように見える。安倍首相はトランプ大統領への忖度に終始するのではなく,真の国益,日米両国国民の利益こそを慮った外交姿勢を取るべきであろう。