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シビリアン・コントロールを取り戻そう

SNSで、感染症の専門家の方々が緊急事態宣言延長について考えを急に変えた(延長すべき→解除すべき)ことについて、驚きの声が拡がっている。

 

そもそも、現在世界各国で主流となっている社会的距離政策(いわゆるロックダウン)は、広大な地域の完全なシャットダウンとその地域の住民の全数検査を行う中国方式を除いては、その効果が少なくとも定量的には定かでは無い。

 

一方で、アメリカなどの隣接州(例えばノースダコタ州とサウスダコタ州)などでは、種々の社会的距離政策を採った州と採らない州で感染状況がほぼ変わらない、という結果も出ている。この州ごとの規制の差異と結果が相関しないことについて、広範な規制を敷いたカリフォルニア州とそうではなかったフロリダ州などを例としてAP通信が報じている。

また、フランスでは日本よりよほど厳しい社会的距離政策が昨年末より取られているが、逆に感染者数は増え続けている。

 

一方で、日本では、社会的距離政策としては非常に緩和的な政策(飲食店の営業時間短縮)が一部の都道府県で年初より緊急事態宣言に伴い実施されたが、陽性者数の推移は、宣言地域と被宣言地域でほぼ同じような傾向にある。

下記は全国の新規陽性者数だが、全国的に年末から年初にかけて増え、その後減少し、横ばい(いわゆる下げ止まり)になっている。

緊急事態宣言で飲食店営業に制限をかけた宣言地域と大多数の非宣言地域はみな同じようなグラフ。

ここから推測すれば、この動きは、飲食店営業での感染増大やその制限による減少が原因ではなく、単なる季節的要因(寒さや乾燥の進行による増大、その緩和による減少)など、全国で共通の要因による感染者数の増減があったと考えるのが普通だろう。

冒頭の専門家の意見変化には、私も少しというかだいぶ驚いたが、背景にはそのような事実を受け入れざるを得なくなってきたということがあるのかも知れない。

 

そもそも感染症専門医の方々は、感染症を治療する専門家であって、マスな単位での感染症拡大防止の専門家ではない。

また、マスな単位での専門家(疫学者)も、パンデミックレベルにおける感染拡大防止策などについては机上で組み立てられた理論があるだけで、現代科学のレベルでその有効性の検証や確認など誰もしたことはない。現代史においては、スペイン風邪のような経験が無いからだ。

 

その限度の知識として、専門家の意見は政策形成の参考程度に止めるべきところ、自治体の長も政府も野党もマスコミも、その意見を絶対視するような風潮があるが、これは形を変えたシビリアン・コントロールの逸脱に他ならない。

 

専門家の意見は勿論貴重。しかし、絶対ではないし、専門家は時に誤ることもある。経験の無い事象であれば尚更のこと。「各産業の中で一番大事なのは医療」という偏った意見が平然と唱えられる状況は明らかにおかしい。

 

国民に対し、責任を負うのは総理大臣や各自治体の首長。医療の専門家だけでなく、経済などの各専門分野の意見を広く聴取し、実態を統計数字(「一年経っての総括」参照)などからよく見極めた上で、最後は民意によって選ばれた政治のトップがその責任と眼力でもって「総合的に」適切な政策を執っていくべきだ。