昨日の菅総理記者会見、フリーの神保記者が総理に対し、
「国民に協力を求めるばかりで、政府は何をやってきたのか。病床数は人口当たりで世界一、感染者数はアメリカの100分の1、それでなぜ医療がひっ迫、単に医療の体制が違うんじゃないか」
という疑問を全国民の前で初めて訴えた。私もそれをずっと訴えてきたが、メジャーマスコミは完無視。だが、かなりの国民が見ていたであろうあの場で神保氏がこれを質問されたことは衝撃だった。たしかに存在する少数派の声が世に出た瞬間だった。
そして、菅総理の答えが国民皆保険の見直しに言及したものであったことにつき、Twitterで頓珍漢な受け答えとの批判もあるようだ。
たしかにわかりにくい受け答えであったので、私なりの解説を加える。
これは、民間病院が協力してくれないなら、あるいは今の医療体制に問題あるなら国民皆保険とかのまさに根本にまで踏み込んで医療体制を検証して見直すよ、という菅総理のものすごい恫喝だったのではないか?
だとしたら誰も手をつけられなかったところに踏み込む、まさに菅総理の本領発揮というところだろう。
ここで総理が口走った「国民皆保険制度の検証」は、実は医師会にとって、とてつもないインパクトのある言葉。
開業医の方が、経験の差、腕の良し悪し、説明の丁寧さ、設備の有無など、医療機関同士の間での競争要因が結構あるにも関わらず、無競争で、今の厳しい競争社会から切り離された聖域のような状態で均一に高所得を得ている秘訣は、実は国民皆保険制度。
ゴッドハンドが診ても、グリーンボーイが診ても料金が同じなのは本来おかしな制度だが、腕の差による価格競争は確実に回避できるので医師会総体の利益には資する。たとえていえば、ミシュランの3つ星級レストランにとっては超格安価格になってしまうが、街角の飲食店にとってはおいしい価格設定となり、結局、数の多い街角の飲食店が潤う方が全体としては都合がよくなるということ。
そういった無競争システムが背景にあるため、需要の多いコロナ治療に料金を上げて医療機関が取り組む、というアニマルスピリッツも当然出てこない。公的病院以外には、患者のための奉仕精神に溢れた一部の医療者しか取り組まれていないのも、結局は経済原理が背景にある。
そして、医療資源が実はあるのに取り組む者(機関)が少ないがために医療破滅とまで言われる状況も当然生まれる。
そこを変えれば良いという究極の本音を菅総理はつい口走ってしまったのだろうが、ここは日本医師会が死守してきた本丸中の本丸。
日本医師会会長はこの質疑を聞いてどう思われたのだろうか。