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異次元緩和の副作用は地球温暖化のように訪れる

 今日は衆議院本会議で予算案の採決が行われる予定。野党はこれに対して厚労大臣の不信任決議案などで対決の構図を作っている。深夜国会も予想されている。圧倒的多数を占める政権与党に対し,野党が仕掛けられる手段は限られているし,日本のマスコミは議論の中身というよりどれだけネタになるか,ということにしか興味がないようなので仕方のないところではある。

 しかし,いつの日か,予算の中身というかそこに凝縮された日本の行く末に関する真っ向からの議論が国会で行われるようになってもらいたい,と切に願うし,周りでもそう思う普通の方は増えて来ているようだ。将来,どこの党がそういった「普通の人」の感覚を汲み取っていき国会を変えて行くであろうか。

 

 さて,去年の通常国会や臨時国会では国の財政のあり方を検討する財務金融委員会でも,日銀の異次元緩和(≒アベノミクス)に対して批判的な質疑が行われることはほぼなかった。日銀の黒田総裁が参考人として呼ばれること自体少なかったし,来られても厳しい質問が飛ぶことはあまりなかった。質問の中には異次元緩和政策の表向きの説明をそのままなぞっただけのものもあった。

  しかし,今国会は少し様相が変わってきた。連日黒田総裁が財務金融委員会に登場し,異次元緩和の副作用について問いただされる機会が多くなった。国民民主党の緑川議員は,低金利政策により,銀行のサヤが限りなく縮小し,特に地方銀行の赤字基調が定着しつつある問題を取り上げられた。日銀の異次元緩和の裏の目的というか真の目的の一つは、国債依存度が高すぎる日本の財政を維持するために、金利を低く押さえつけることにある。いわゆる「金利抑圧政策」である。金利が上がれば、国家予算(歳出)における利払いが膨大となってしまうので、これを限りなく安く済ませるため低金利への誘導を続けざるを得ないのだ。その最たるものがマイナス金利政策だ。

 しかし、これにも副作用はある。銀行の収益というのは、基本的に顧客への貸出金利と預金者への支払金利(預金金利)の差額である。金融抑圧政策は当然民間金融機関の貸出金利も低く誘導してしまう副作用がある。貸出金利の低下により、利ザヤが縮小すれば、銀行は赤字基調にならざるを得ない。例えば、住宅ローン金利は、大手の都市銀行では5年固定で0.5%台という信じられないような低金利だ。数が稼げる大手都市銀行はなんとかなるかもしれないが、地方銀行では貸し出しコストの方が高くつくであろう。銀行の支店廃止や合理化のニュースが報じられ始めているが、その背景には本業、つまり利ザヤで儲ける銀行のビジネスモデルが崩壊しつつある現実が隠されている。そして、大手都市銀行とは異なり、昔ながらの一般顧客からの預金受け入れと地方企業への資金貸し出しに頼らざるを得ない地方の銀行では、連続した赤字を示すところが増えてきているのだ。

 

出典 金融庁HP

https://www.fsa.go.jp/news/30/For_Providing_Better_Financial_Services.pdf

 

 今までは、異次元緩和の副作用のうち、ドラスティックなもののみがクローズアップされ、議論されてきた。その最たるものは国債価格の暴落であろう。しかし、国債価格に関してみれば、日銀が円の増刷(つまり通貨発行)により、買い支えを続けることもある程度までは可能だ。異次元緩和(≒異次元緩和を第一の柱とするアベノミクス)を危惧する声に対し、「いつまで経っても国債の暴落は起きないじゃないか」とこれを狼少年扱いする方も多かった。

 ところが、異次元緩和の副作用は意外なところで顕在化し、日本経済を蝕みつつあるのだ。

 ある程度の年齢の方は記憶にあるだろうが、バブル末期の頃、長銀や拓銀が経営破たんし、地方金融機関で取り付け騒ぎのようなことまで起きた。今回の異次元緩和の副作用は、静かに、しかし確実に進行している。

 もう一つの心配は、異常な通貨発行量の増大により、円安が進むことによってコストプッシュインフレが進み、日本人全般が相対的に貧しくなっていくことだ。円安はよく言われるようにザンビアのようなハイパーインフレーションとして一気に進むとは限らない。第二次大戦後のイギリスのように長期間かけてじわじわと進み、長い間じっくりと国民を窮乏に追い込んでいくことのほうがありうるのだ。現在円安が小休止しているのは、基軸通貨国であるアメリカの量的緩和(QE)が停止にとどまり、縮小にまで至っていないから。しかし景気の動向やトランプ大統領の退任などでいつ再開するとも限らないし、10年20年という長いスパンでみれば、やめようのない日本の異次元緩和が続いていけば、その結果は必ず通貨価値に反映される。

 最近、今の異次元緩和とこれによる副作用は、CO2と地球温暖化に似ていることに気付いた。何事も一直線に進むことは少ない。しかし、ジグザグとした経路をたどりながらも、原因は結果を着実にもたらしていく。気が付いた時にはどうにもならなくなっていた、では遅い。不都合な真実から目を背けてはならない。

 

*地球温暖化の学説が正しいとは限らないが、少なくともCO2の増加は間近に迫っていた間氷期の終わりを当面回避させたようだ。