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田村大臣、大丈夫ですか?今やるべきなのに疎かなのは高齢者への感染対策。

厚労委員会で、本日も尾身さんとたっぷり議論させていただいた(アーカイブはこちら)。疫学の始祖ジョン・スノウは、コレラの正体が病原菌とはわからなかった時代に、発生者の地図と現地調査で、患者発生の原因に不潔な井戸があったことを突き止め、感染を食い止めた。現在のコロナ対策も、ハッキリ言って手探り。事実に対して、事実を基礎にして対策を取るべきだ。

今ハッキリしている事実とは「日本人は罹患率が低い」上に、高齢者に大きくリスクが偏った病気であること。

それが以下のグラフだ(西浦氏作成データを厚労省より提供されたもの)。

青は無症候のままで終わる方、黄緑は軽症で終わる方、黄色が重症になり回復した方、赤は死亡された方。ご覧になれば一目瞭然、40代くらいまでは黄と赤はほとんど見えない。50代くらいから見え始め、ハッキリするのは70代・80代の方。

さて、緊急事態宣言などの社会的距離政策は医療システムを守るための戦い。それはドイツ・メルケル首相が昨年3月に国民向けに演説した中で明言され、今日また尾身氏も明言された。

そして、医療システムに負荷を与えるのは、重症者と重症化の結果である患者の死亡。その圧倒的多数が70代以上の高齢者の方なのだから、そこの年代に対する対策こそ最優先であるべき。

さらに、驚くことに丁寧にクラスター発生源を追って発表してくれている大阪府(他所でここまでやって発表している所はないので、情報公開さすがです)のデータによれば、クラスター発生源の42%が「高齢者・障がい者施設」、34%が「医療機関」。

つまり、ここを徹底的に守れば医療システムへの負荷が減り、ひいては緊急事態宣言などの社会的距離政策も不要になるはず。

以上の分析について、さすが医師(≒科学者)である尾身氏は、今日の質疑で「医療を守ることが中心的な課題という委員の考えは正しい」と素直に認められた。

その上で「医療システムを守る」ための手段として私が提言したのは、重症者と死亡者を減らすこと。そしてそのためには、確実な事実(前記各グラフ参照)としてある、高齢者への感染源として最も比率が高い高齢者施設と慢性期病院でのクラスター発生を防止すること。尾身氏も「そして、そのためには施設と病院従事者への毎日の抗原検査と入所者・入院者の定期的抗原検査が非常に有用だ。尾身氏も「委員おっしゃるように、重症化予防は非常に大事。特に高齢者。高齢者施設への院内感染は多い。そこで止める。そこが大切だというのは私も大賛成。国にお願いして高齢者施設への検査を今まで以上にもっと充実させようと。委員の考え方に150%賛成。その元を追うと飲食店への対策、両方の対策が必要だが、高齢者施設への感染対策に重点を置くというのは正しい。」とのこと。

概ね同意はされたが、飲食店のみ取り出すのはやはり疑問。以下は、厚労省が作成した、報道に基づく2人以上の集団感染源。尾身説によったとしても、医療施設・高齢者施設へのルートとなるのは飲食店だけでなく、企業等や学校関係などもありそう。飲食店(1/5)だけ絶ってもあまり高齢者施設・病院への感染は減りそうもない。

ではどうすれば良いかと言えば答えは簡単。

高齢者施設・病院への「入り口」をシャットアウトすれば良い。

施設・病院の従事者に毎日の抗原検査を行えば良いのだ。どこかで従事者が感染してきても、出勤時にそれがわかれば感染を施設で広げることはなくなる。とても確実な方法で、コロナ治療の第一線にいる大学病院で取られている方法だ。

PCR検査ではなくなぜ抗原検査かといえば、結果判明まで1日かかるPCR検査に比べて10分程度で結果がでる抗原検査の方がずっと実践的。1日かかればその間に感染を広げてしまうかもしれない。

早いだけでなく、ずっと安い。その上、最近は精度もあまりPCR検査と変わらない(厚労省資料)。だから、開業医の方々は、臨床で抗原検査を重宝されていて、PCR検査ではなくこちらを第一選択とされている方も多い。

入所者・入院者は外部と接触する機会が少ないので、毎日までは必要ないが、従事者は通勤や外食などどこかで日々新しい陽性者となることがあるはずなので、毎日しなければあまり意味がない。今日の陰性が、たとえば1週間後までキープされる保証はどこにもないからだ。

今、厚労省は「定期的検査」を呼びかける文書(「医療機関・高齢者施設等における無症状者に対する検査方法について(要請)」を発出し、感染多発地域での費用負担をしているが、「定期的」ではなく「毎日」でなくては上記のとおりあまり意味がない。そして、それがどこまで行われているか実態調査が是非必要。

尾身さんは、飲食店の対策についてどこまで行われているか「実態調査」が大事とかを他の議員の質問で言われていたが、それを行うならこちらを優先すべきだろう。

実態調査について、厚労省は、案の定「どこの自治体で行われているかはわかるが、高齢者施設でどの程度行われているかはわからない」と気の抜けた答弁。これでは重症者も増え、病床も逼迫するはず。

さすがに尾身さんは「高齢者施設、飲食店への対策は2者択一ではないが、委員おっしゃるとおり高齢者施設での検査は頻回にやった方が絶対にいい」と私の意見に同意してくれ、「検査キットの精度も良くなっていて、どう取り扱うか国の議論に参加して結論を出したい」とのこと。

ワクチンに対する大きな期待があることは否定しないが、今の接種スピードから見れば、アメリカ、イギリス、イスラエルのように全国民の半数に行き渡るのには1年以上かかるだろう。むしろ、地道な対策が早道だ。

高齢者への対策以外に、もう一つ、今の対策で足りないのは、私が行ったような統計的解析。今、厚労省は、陽性者の帰趨すら把握していない。西浦氏が作成を止めたあと、無症候で終わったのか、軽症でおわったのかだけでなく、重症者したのは何人かすら把握していない。日々の重症者が何人かしかわかっていないという驚くような実態。ジョン/スノウのように事実を元に分析すべきで、厚労省のコロナ対策本部に数十人の増員、感染研には300人の増員を勝ち取った今、ここを手厚くするのはあまりに当然。

これについても尾身氏は、「データの収集分析は感染対策の基本。率直な感想は、様々な理由でデータは現場にあるが、実際にあるデータが迅速に共有されていないという現実は1年言ってるが、もっと効率的な対策を打つためには私たちはどうしても乗り越えなくてはならない。政治、専門家、官僚、みんながやらないと。戦う一番の重要なところに問題がある。なんとかしてやらないとこの問題永遠に続く。是非みんなでやりたい。」と答えられ、まさに問題点を共有されているとの認識だった。

田村大臣も、「尾身先生おっしゃられたとおり、データは貴重なので検討して参りたい」とのこと。

残念だったのは、次の2つ。

田村厚労大臣に、施設・慢性期病院関係者への毎日の抗原検査を呼びかけたところ、「抗原検査は唾液検査ではなく鼻腔検査だからできない」「もし陽性だと2週間職員が休まなければならない」とビックリするような答弁をしたことがまず一つ。

抗原検査も唾液検査が承認済み。それに、陽性者が「2週間休まない」ことの方がよほどおおごと。必ず死人が出ます。そんな認識しかない方がトップではこの先も、多くの直接的犠牲と、飲食業者を中心とした経済的被害、そして若者の自殺や出生数の極端な低下が続く。

もう一つは、たぶん野党の方から「人権問題だ」とかのヤジが時々飛んでいたこと。「定期検査」は人権問題でなく、「毎日の定期検査」だとなぜ急に人権問題になるのか?

新型コロナ病棟の医療従事者へ「毎日の定期検査」を行っている急性期病院はあるが、なぜ高齢者施設では人権問題になるのか?

唾液を吐くだけで負担はなく、職業柄もやむを得ない高齢者施設・慢性期病院の従事者への検査がなぜ人権問題になるのか? プロ野球選手やお相撲さんはPCR検査をやっている。

政治家の人権意識なんて所詮そんなもの。

さて、次回は、田村厚労大臣のビックリな知見を改めてもらうところから続きをやります。